「相手は小松菜奈さんで間違いないですか?」8番出口 しんざんさんの映画レビュー(感想・評価)
相手は小松菜奈さんで間違いないですか?
日本ではトップクラスのヒットプロデューサーである川村元気氏と、これまた才能あふれる脚本家平瀬謙太朗氏が仕掛けた「ヒット」間違いなしの企画からの映画。初日から長蛇の列のがあったとの報告と受け、実際公開3日間で興収9.5億円を突破、2025年公開の実写映画で1位を獲得。
原作ゲームはやったことはなく、本作の「説明がしっかりされている」らしいノベライズも手にすることなく、「ヒット」しているということだけだと、全く興味のないタイプの作品だが、割とうるさ型の有名評論家、youtuberが絶賛している。
ゲームの世界観とそこに迷い込んだ男の人生の「選択と決意、父になる」の物語らしく、ノベライズもはっきり言語化しているらしい。
8番出口
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主人公二宮はオープニングで、スマホで戦争か災害のニュースをザザっとスワイプし、ちゃんと読んでるのか、ふりをしているのか、よくある車両入り口に陣取る。
直接経験したことはないが、サラリーマン退勤時のラッシュアワーの地下鉄に、乳児を抱いた母親が乗っており、赤子がギャンギャン泣く。それをうるさいから何とかしろと母親にキレまくるサラリーマン。あるかもしれない、あった話も聞くこのシチュエーション。残念?ながらこのシチュエーションにオレ自身はあまりリアルを感じない。
想定通り何か行動を起こせるはずもなく、というか、起こす必要がない二宮は電車を降り、その後別れた彼女から「電話」がかかる。二宮は、(過去のことは分からないが、)電話の画面に見える(超美人の)小松菜奈と別れており、明らかにうだつが上がらない二宮にどうしようかと相談するのである。そうして彼は「8番出口」の世界に迷い込む流れ。
8番出口の異変については、彼の小松菜奈からの相談をどう受け止めるか、の選択および決意と全く関係のない異変ばかり。ゲームのことは知らないで話を進めるが、そこに登場するオジサンの一幕は全く二宮の脱出劇には関係がない。とこの辺はゲームファンへのサービスなのだろうということで納得はしている。
だが、彼が脱出し、「病院へすぐ行く」と言って乗った電車は、物語最初と同じ電車、シチュエーションなのである。そこで彼は、オレたち観客の方を見据え、その騒ぎの方へ顔を向けて閉幕する。「騒ぎの方へ顔を向けて」なので、二宮がその騒ぎに対して「父親になるには良しとする行動」に出た、という解釈が強いようだが、果たしてそんな行動は存在するだろうか。
この映画は、初めから二宮の妄想で、不快とされる「赤子のギャン泣き」と「他人の止まない咳」を浴びせて、やかましい音響とともに、こちらの神経を触って観客を試す。赤子と喘息といった当人にはどうしようもないことを、観客のオレたちにはことごとく不快に感じさせる確信犯。これはなかなかに上手いと思った。
また本当に小松菜奈(のような女性)に子供ができたのなら、こんな話にはならないだろ、という突っ込みも作り手側には十分承知の上だと思う。
となると、そもそも子供ができたというのが、妄想。あるいは、相手は「小松菜奈」であるはずがない。
そして同じ電車(シチュエーション)に戻った、ということは、彼は映画のはじめから勝手に妄想し、結局答えを出せずにループしている。つまり騒ぎのほうを向いたが、そのまま電車を降りた、というほうが正しく観える。初めから何も起こっていないということ。(消えたカバン、収まった咳、「ボレロ」で挟む)
つまり、登場人物はすべて主人公の持っている顔、一面。電車でキレる男ですら、主人公の顔と思ってもいいかもしれない。
今回の「不快」の演出および演技が確信犯であること。クリアしたかに見えてそうではない、という解釈も可能である点。ヒットメイカーだけど、浅い、と言われてきた川村氏の一撃。それがこの違和感、異変探しのゲームと「合っている」と思わせた点がとても素晴らしい。観客を試す、といった実験もそれなりに成果があったようだ。
そして、「意を決した」とも「また逃げた」「そもそも現実に向き合っていない」ともとれる、二宮氏の風貌(と役作り)が素晴らしい。
だけど、オレ個人はすっごい長い90分だったので、この評価。
追記
このポスター、実は二宮氏の鼻先口先のほんの少しだけ8の字から出ているんだよね。ちょっとだけ、ループから抜けている、すこしだけ「前に出る」ということなんだろうけど。
全く同意見です。
作品の出来とか以前に評価し辛いと思いますけどね。
例えていうならフィギュアスケートの得点。得点を得られるほどの技が入ってない気がします。
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