「有名人の通過は異変」8番出口 弁明発射記録さんの映画レビュー(感想・評価)
有名人の通過は異変
原作のゲームは複数の実況にて把握済み。よって感想は原作ゲームのネタバレも含む。
ゲームのヒットを受けて急いで映画まで作ったよ!という分かりやすい姿勢はそれはそれでいい。
急いで作ったにしては、それなりにホラー映画になっていたと思う。
もうちょっと面白くできた気もするがグロを増やしても原作ゲームと違ってくるし、ドラマを増やしてもほぼストーリーのない原作ゲームからかけ離れるので、これくらいの「めっちゃグロくはないそこそこホラーでなんとなくドラマもある」くらいの落とし所になったのだろう。
原作にあった見つけずらい異変の「ポスターの肥大化」はなかった。あれは映像だと極端にやらないと分からないだろうからなくて良かった。双子も明らかなシャイニングパロディなのであれもなくてもいい。
しかし。「壁男」がないのはもったいないだろう。いつ壁男が走ってくるのかワクワクしていたのに。ないんかー。
まあ分かるは分かる。たぶんCGや全身タイツとかで試したみて面白い感じになったからカットになったのだと思う。
少年は未来で生まれる息子なのか?そうでないのか?という絶妙な加減。パパには会ったことがないと言うが、貝殻をお守りとして持っていた。そして後半にパパ、ママ、息子が海に来る回想だか妄想だかの場面があらわれる。ここで息子がママに貝殻を見せて「お守りにしなよ」とママに言われる。
この意味深な場面で「どういうこと?」と思わせつつ最後まで明確にしないのは、まあ落とし所として意図は分かるは分かる。謎な雰囲気を残したかったのだろう。
個人的にはもっと明確に「未来から来た息子でした」と示してくれても良かった。
おじさんが8番出口を探して歩きまわる場面は意外性があって良かった。誤った間違いの8番出口から出てしまったがゆえに永遠と地下を歩き続ける人ではない存在になってしまった、という感じの演出。ここは良かったと思う。原作ゲームにも嘘8番出口はあるが入っても最初に戻るだけだから。あのゲームならではの永遠とループする話しかけても無反応なおじさん。彼はなぜああなったのか、作り手が考えて示したアレンジは良かった。
目や耳がついたマウスは原作ゲームには出てこず、赤ん坊の泣き声がするコインロッカーも映画独自のものだがこれくらい足してホラーにしないとね、という意図は分かる。
ならば証明写真機もその横のゴミも何かに使って欲しかった。せっかく映画で足したのに使い切れてなくてもったいない。
津波が去ったあとに色々な家具らしきものであの通路が埋まるのだが、あれも主人公の家具だったりするのか。そういう伏線、ストーリー上のつながりみたいのは欲しかった気はする。
と色々書いて「もっとこうだったらより面白くなったのではないか」と口だけなら言えるのだが、結構それって「原作にない要素を付け足す」ことになるので。それはそれで「シンプルな分かりやすさ」が魅力の原作ゲームの魅力を損なう気もする。
ということでこのくらいのバランスの映画の落としどころになったのかなと思った。
音楽が中田ヤスタカだったのだが、あんまりヤスタカ感を感じれなかったので、エンディング曲はヤスタカ作曲のPIKIのコラボソングのやつで良かっただろ、と思った。映画の雰囲気にあってるし。でもおそらく作り手の判断で「いい曲だけど、エンディングで流すとちょっとコミカルな感じになっちゃう気もするんだよなあ。う~ん、コラボソングという落としどころで!」という流れになったんじゃないかと予想する。
ボレロの方が「繰り返すメロディ」が「繰り返される空間」に合ってるし壮大な感じも出る、という判断だったのだろう。でも正直ボレロの雄大さに映画は負けている。ただ、作り手の意図は伝わった。エンドロールでも文字の表示の仕方を工夫しており、なんとか映画らしいことをやろうとする姿勢は見えた。
序盤でニノが電車から降りる場面でヒカキンが乗客として乗ってきて、すごく堂々とヒカキンで「いきなり有名人が通り過ぎるの、立派な異変だろ」と感じた。ただ、こういう要素も入れないと映画にしたかいがないのも確か。
ニノが普通の人っぽい感じを出すのがうまくて、さすがだった。
序盤からニノ演じる主人公は頻繁に咳をしていて水飲んだり吸入器を使っており、どうやら喘息持ち設定らしく。これが緊迫感を生んでいるのは分かるが。
後半でリュックをおろしてその場に中身ぶちまけたまんま置いていき、また同じ場所を通る時はリュックは消えており、これも異変だろ、と感じてしまった。なんなら後半でほとんど呼吸の荒さが出てないのは主人公自身が異変じゃないのか、と思ってしまった。成長した、みたいな表現なのかもしれないが、前半でちょっと咳を強調しすぎた気はする。
ラストカットが再び冒頭と同じ電車内で、今度は降りずに横に移動したところで映画は終わる。あれで「たぶん赤ん坊抱えたママに怒る男の乗客に注意しにいったんじゃないか」と思わせて終わるんだが、そこはもっと明確に描写してよかったようにも思う。ただやっぱりそういう要素を入れると「原作にない余計な付け足し」になるんだよな。だからシンプルさが魅力のゲームの実写映画化はやっぱりなかなか難しいと思った。
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