「人生はループだ」8番出口 mojunさんの映画レビュー(感想・評価)
人生はループだ
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ただのホラー映画ではないと思った。通路を歩き続けるループは、不気味でありながらもどこかで自分の日常と重なって見えた。
毎日は同じ繰り返しだ。電車に乗って、働いて、帰って寝る。そこに溺れてしまえば、気づかないうちに何も得られず、進むこともできなくなる。映画に出てきた「おじさん」は、その行き着いた先の姿だろう。延々とループをさまよい、もう人ではなくなってしまった。
主人公は最初、赤ん坊に怒鳴る男と母親を見てもスルーした。見て見ぬふり。けれど最後に同じ場面に戻ってきたとき、今度は赤ん坊の方へ向かおうとする。その変化は、ループを通じて彼が「異変」に気づく眼を持つようになったことを示している。傍観者から、関与する人間へ。
さらに重要なのは「子供」というモチーフだ。主人公は恋人から妊娠を告げられても喜ばない。父になること、新しいループに巻き込まれることへの戸惑いがある。でも通路に現れる子供は「異変」ではなく、確かな未来として存在している。その子が主人公の子だと示唆される時点で、このループは単なる不条理空間ではなく、彼がこれから向き合う人生の断片を先取りして見せているのだとわかる。
出口は解放ではない。出口の先にはまた別のループが待っている。子ども時代、青年期、親になる段階。繰り返しのようでいて、重なり合う別のループ。主人公はその入り口に立たされている。
『8番出口』が問いかけてくるのは単純だ。日常のループに沈んで「おじさん」のようになるのか。それとも異変に気づき、次の段階へと関わりを選ぶのか。出口は永遠に続くが、どう生きるかは自分次第だ。
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