「無限ループのジャンルはSF!(追記:小説版読了)」8番出口 ミミさんの映画レビュー(感想・評価)
無限ループのジャンルはSF!(追記:小説版読了)
考えながら観ると、とっても楽しめた!
唐突なSF!とか言われてますが、そもそも無限ループする空間って時空が歪んでいるので、ジャンル的にSFに属するな〜と思ってたんですよ!
ホラーも好きなので、ジャンプスケアも嫌じゃありませんでした。
ちょっと多かったけどねw
がっつりネタバレ有りで少し考察を
事実として
①子供は異変では無く実在する
②子供の母親は主人公の彼女でまだ妊娠中
③子供と主人公が出会った時、子供はパパに会った事がない
④子供はお守りとして海で拾った貝殻を持っていて、ループ空間で主人公に渡した
おそらくあのループ空間では時間と空間が歪んでおり、迷い込んだ過去の主人公と、迷い込んだ未来の子供が同時に存在できた。
そして、主人公が子供の母親を知った事、子供が父親を知らない事、子供が貝殻を渡した事で、過去と未来が変わり始めた。
⑤波にさらわれた時に、夢うつつながら彼女と子供と海に行き、パパと呼ばれ貝殻を見せてもらい抱きしめる
歪んだ時空から変わり始めた未来を見た主人公が、己より子供を助ける決意をし、主人公が「脱出できる」という未来が確定した。
出会った当初の子供は、パパに会ったことがない。
つまり、あの空間から主人公が出られなかった世界線の息子なのでしょう。
貝殻を見つけた時には、パパはおらず、ママに「お守りにしたら?」と言われただけの世界線
そして怪異に巻き込まれ、主人公にお守りとして貝殻を渡し勇気づけた。
子供が勇気づけ主人公を助けたから、主人公は父親になる決心がつき、子供を助け、自分も助かった。
「主人公が脱出できなかった世界線」から「主人公が脱出できた世界線」へ、子供がママとパパと海に行って貝殻を見つけて、パパに抱きしめられる世界線へと書き換わった。
親になるって、不安ばかりで恐ろしいですよね。
それでも、子供を命がけで助けてしまうのが親なんですよね。
だから、不安で迷って自分なんて親になれないと思っていた逃げ腰の主人公が、自分よりも子供を看板に押し上げて助ける覚悟を見せた時。
ああ、この主人公は「ちゃんと親になれる」人だ……と思って、グッときてほろりと泣いてしまいました。
8番出口が好きで、SF好きで、ジャンプスケアが嫌いじゃなければ、おすすめしたい映画です!
子供や伴侶がいると、より感情移入ができるかもしれませんね。
(追記:小説版読了、ついでにパンフ読了)
読んで、映画の「なんで?」がすべて解けました。
彼女との確執の原因は?
なぜおじさんは助からないのか?
津波はなんであんなにリアル?
そもそも津波などの異変が主人公を襲う理由って……
8番出口の看板の正体……?
小説版は映画を見た後で読む事をお勧めします。
以下、小説版とパンフのネタバレです。
まずパンフから。
中も外もデザインが素敵なのでぜひ手にとってほしい!
記事は監督やカメラマンさんや演者さん等のインタビューがたくさん載ってます。
その中で、特に気になったのがカメラマンさんの記事。
監督などと話し合った結果「8番出口を生き物として撮る」という意識をしたカメラワークをしていたそうで、8番出口は意思があり、主人公を見守る、あるいは見張る存在として撮っていたそうです。
なので、主人公の表情を映した後は、8番出口の表情を映すかのようなカメラワークになっていると。
とても面白い試みだし、そこを意識してもう一度観たいなと思いました。
パンフの中でも、海のシーンは「過去」「未来」どちらと捉えているか両論あるようで、話者により様々でしたが少なくとも主人公の過去か未来ではあるようです。
小説版についてネタバレ。
すべての「?」が解消されてとてもスッキリしました!
装丁も凝っていて、映画版のデザインを買ったらカバーが2重になっており、通常版と映画版が重ねて付けられていました。
中に地図があったり、所々文字が色づいて意味のある言葉になっていたりと遊び心満載!
かなりページ数も少ないし読みやすいので、興味が湧いたらぜひ読んでみてほしいです。
津波がリアルすぎる。悪意でもあるのかと物議になっていますが、小説版を読むと「あそこは絶対に津波がリアルでなければならない」理由がちゃんとありました。
主人公は彼女と男友達と学生時代にバンドを組んでいて、卒業して上京するときに彼女と同棲しはじめ、男友達は海岸沿いの実家を継いで地元に残りました。
男友達も彼女が好きなのを知っていたので余計に、最後まで同棲のことは言えなかった。
そして映画の数年前に故郷で津波の大災害が起き、主人公や彼女は上京で無事、自分たちの実家も海岸沿いでは無いので無事、けれど男友達は津波に店ごと流され行方不明となり生死不明のまま……
テレビでサイレンが鳴り響くなか店が津波に飲まれ流されていくニュース映像を、2人はただ見る事しかできなかった。
2人は己の無力さに絶望し、関係もギクシャクとしはじめ………最終的に別れてしまった。
これが映画開始の少し前です。
全ては青春のありきたりな対立で、卒業後の逃れられない生活の変化で、人にはどうしょうもないただの災害でしかなく、誰も主人公や彼女を責められる人などいない。
けれど、他でもない自分自身が、己を苛烈に責め苛む。
糾弾者が己であるからこそ、永遠に糾弾から逃れられない。
そこから何度も目を逸らし続けて、でも何も忘れられずに、坂を転がるように人生が狂い始めているのが今の主人公です。
だから、主人公は目を逸らし続けた津波と対峙しなければならなかったし、津波は災害のサイレンが鳴り響きあらゆる家財が流されている災害の濁流でなければならなかった。
主人公は過去の悲しみや恐怖や罪悪感や無力感から目をそらさず、津波から人の命を助けた事で、ようやく己の罪の意識が昇華され、現実から目をそらさず前を向くことができるようになった。
ここらへんも映画に盛り込んで欲しかったなと残念に思うものの、盛り込んでしまえば「8番出口の映画」としての面白さとは違う、災害映画のテイストになっていたと思うので、この映画は今のままで正解だろうと納得もしました。
8番出口の看板の正体
神のような存在、罪を自覚させる8番出口という贖罪の空間の主
小説版だと、どのような時も津波にのまれた時でさえ、変わらず頭上から煌々と照らし続け、見守り続ける者。という上位存在のように書かれています。
結局正体は不明ですが、少なくとも8番出口を監視している存在ではあるようです。
読了して、映画が楽しかった人にはぜひ読んでほしい小説でした!
いろんな謎が解けてスッキリ!!
男の子やおじさんや主人公の内心も全て読めます!
とっても面白いので気になった方は映画と合わせてぜひ!
