「∞」8番出口 ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
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あのゲームをどうやって実写化するんだろうというところに注目していましたが、ニノを采配してきた時点でかなり力が入っているなと思い期待値が上がりました。
ほぼ満席だったので泣く泣く一番前の席で観ましたが、雑踏が聞こえなかったので結果オーライでした。
しっかり1本の映画になっていたなと思いました。
安っぽい作品に仕上げるのではなく、しっかりゲームを踏襲しつつも視点を変えたりしながら進めていきますし、メタファーを交えつつの展開もメリハリがあって、8番出口という題材からよくぞここまで仕上がったなぁと感心するばかりでした。
付き合っていた彼女が妊娠したことがきっかけで悩みが肥大化していき、気がついたら8番出口へと向かう駅行路に迷い込んでいた男の話であり、そこで起きる異変を見つけながらルールに沿って進めていくというゲームの要素をしっかりと落とし込んでいるのも好印象でした。
序盤に電車内で泣いてる赤ん坊を泣きやめさせられないお母さんに叱責するサラリーマンがおり、みんなも注意しないし、自分自身も注意できない事にモヤモヤしていたという展開がストーリーの1つの軸になっていくというのも興味深いところです。
異変が見つかったら引き返し、異変が見つからなかったら引き返さないというシンプルなルールの元進んでいくので、絵面はそこまで変わりませんが、ニノの体感型ゲーム実況をスクリーンで眺めているという感じで観るのがベストだなと切り替えられたのが功を奏しました。
ゲームをやっている時にも思いましたが、こう見るとステージ自体かなりコンパクトだなぁと思いました。
2回しか通路を曲がらないですし、ステージギミックはポスターの変化を含め微々たるものなので、ゲームをやるならまだしも映画となるとかなり難しかった思います。
ジャンプスケアに全部頼るのではなく、原作要素を交えた驚かせ方で工夫されていたのも好印象でした。
視点変化でおじさん視点や子供視点を入れてストーリーに変化を加えており、特におじさんはおじさんで葛藤しながら進んでいたんだというキャラクターに寄り添える作りになっていたのも面白かったです。
映画なりの脚色でホラー要素が追加されていましたが、正直そこまで活きていたかというと微妙なラインだった気がします。
バカデカネズミの大量発生はモンスターパニック要素で異変どころの騒ぎではないですし、突然の大洪水からの違う空間への移動っていうのもぶっ飛んでてうまいこと飲み込めないのでなんとも言えない追加要素だったなと思いました。
あとそこまで8番出口で苦労している描写が描かれないので、そこまで悔しがらないでも…と思えるシーンがあったのは惜しいな〜と思いました。
オチでの心情の変化を異変とうまいこと繋げて最初の電車のシーンになるというのもエッジが効いてて個人的には親指を立てたくなるくらい良いオチだったなと思いました。
今作は間違いなくニノが引っ張っていたなってくらい1人演技の時間が多く、ニノじゃないとダメなくらい凄み全開でした。
喘息という密室空間だからこそ頻繁に起こってしまう症状に納得いくものにしてくれたのもニノのパワーがあったからだなと思いました。
河内さんの変わらない表情と動きが凄まじすぎましたし、そりゃカンヌでAIなんじゃない!?と思われるのも納得の静かに狂気じみた演技で最高でした。
中々実験的な作品でしたが、邦画を間違いなく盛り上げてくれる存在なので、ロングヒットに期待です。
鑑賞日 8/30
鑑賞時間 10:40〜12:30
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