劇場公開日 2025年8月29日

「監督名で異変を感じて引き返せばよかった…」8番出口 おきらくさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5監督名で異変を感じて引き返せばよかった…

2025年8月30日
iPhoneアプリから投稿

ゲーム版は実況動画を観ただけだが、この映画の感想について最初に結論を言うと、映画を観るよりゲームをプレイした方が絶対に面白いと思う。
このゲームの醍醐味は「ホラー+間違い探し」だと思うが、映画だと「間違い探し」要素は楽しめない。

映画の前半は期待が持てる作りだった。

冒頭、満員電車の中でイヤホンをつけ、スマホの動画に没頭して周りの世界を遮断する主人公の姿は、まるでいつもの自分。
こういう人は今どき珍しくないように感じ、最初は話に興味を惹かれた。
イヤホンから流れる音に聞き入っていたら、突然電話の着信音が鳴り出してドキッとし、気まずい相手からの電話をやり過ごす場面も身に覚えがありすぎてニヤリとした。

彼女との電話での会話から、主人公の置かれている立場が観客にわかる作りは上手い。
彼女から重い話をされ、困惑しながら駅の構内を歩いているうちに、いつのまにかゲームでお馴染みのループ世界に迷い込むのも、導入として見事。
主人公は派遣で働いているため、毎回職場が変わるから、今回降りた駅の構造に詳しくないのも当然で、そこら辺も細かいながらも上手い設定に感じた。
まあ、歩きながらスマホで通話するのはマナー違反だから、立ち止まって話せばいいのにとは思ったけど。

映画が始まってしばらくは、一人称視点で描かれるのもゲームを踏襲していて感心。

ループ世界に主人公が迷い込んでからは、最初は何をしたらいいかわからず行き当たりばったりに突き進んでみたり、初めて異変を見つけて引き返そうとしたらスマホ見て立ち止まっているおじさんにドキッとしたり、ルールを把握してからは異変がないか毎回ポスターとおじさんを指差し確認したり、あと少しでゴールだったのに失敗してスタートに戻されて激しく悔しがったり。
ここら辺は、ゲームをプレイしていた人が実際に取りそうな行動と重なっていて、上手い作りに感じた。

映画が始まってしばらくは場面がワンカットで描かれるのも、ゲームでは当たり前だが、映画としては面白い試みに感じた。
ただ、ワンカットの長回しは中盤で突然終わり、そこからはカットの切り方が普通だったので、そこは少し残念。

このゲームは基本的に同じ作業の繰り返しなため、徐々にマンネリ化して単調に感じてくる。
故に長編映画には向かない題材に思えるが、そのためか映画版は中盤から映画オリジナルの要素が加わっていく。
このゲームはルールがシンプルでわかりやすいのが利点の一つだと思うのだが、映画オリジナル要素がこのルールを逸脱していて、ゲームの魅力を破壊しているように感じた。

中盤からは個人的にイライラすることが増えた。
音楽、演技、演出、脚本のどれもが肌に合わなくなっていった。

音楽が主張しすぎてイライラ。
「この場面ではこういう感情になりやがれ」と言わんばかりの音楽の使い方で、途中からウザく感じてきた。

役者の演技が過剰なのもイライラ。
たしかにスタート地点に戻された時に憤る気持ちは、プレイヤーなら誰しも共感するところではあると思うが、「目の前で恋人が殺されたの?」と思うほどの絶望演技はやりすぎ。
二宮和也の演技は『ラーゲリより愛を込めて』を思い出した。

途中で子供が出てくるが、子供が出てくるたびに思わせぶりな演技をしていてイライラ。
この子供が全く喋らないため、去年公開された『胸騒ぎ』(『スピーク・ノー・イーブル 異常な家族』)みたいに何か喋られない理由があるのかと思ったら、途中から特に理由もなく普通にペラペラ喋るようになり、「じゃあ今までなんで黙ってた?」と思ったが、喋るようになってからのこの子供の話し方がびっくりするほどのTHE子役演技で、それはそれでイライラした。

あと、子供の正体は発想が陳腐に感じた。

このゲームに慣れてきたプレイヤーは、異変を見つけたらすぐ引き返すようになるわけだが、この映画の登場人物たちは異変を見つけてもすぐに引き返さず、その場でモタモタしているため、そのせいで恐怖体験をすることになるのもイライラした。

後半は異変が主人公の人生とリンクしていくようになるが、パラレル的というか、超展開な感じになっていくのが個人的に好みではないためイライラした。

ラストの展開で「現実でも、異変を見つけたらすぐに引き返せ(=見て見ぬ振りをするな)」というメッセージを感じた。
「ゲームの内容をうまく使って、気の利いたことを言ってやったぜ」という、作り手のドヤ顔が目に浮かんだ。

最後は感動的だったが、物語の冒頭と全く同じシーンが再現されていたということは、別のループが始まったっということ?
だとしたら、煉獄が続くわけで、全然ハッピーエンドになっていないような気がする。

おきらく
PR U-NEXTなら
映画チケットがいつでも1,500円!

詳細は遷移先をご確認ください。