劇場公開日 2025年8月29日

「なかなか良く出来た不条理スリラー」8番出口 LukeRacewalkerさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5 なかなか良く出来た不条理スリラー

2025年8月29日
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鑑賞方法:映画館

プレイしたことはないが、もともとは同様のコンセプトのゲームが原作。時間やシチュエーションがループして、閉じられた時空間から出られなくなる。
この手のアイデアは国内外を問わず、すでにいくつもの作品で描かれている。
ということで、さてどうやって料理しているかな?と思いつつ、「東京の地下鉄の出口」という設定に興味を唆られ公開初日に観る。

結論から言って、なかなかおもしろい。
ちなみに私の星3.5は「チケット代に充分値するおもしろさ」です。

二宮和也の演技力の高さは『ラーゲリより愛を込めて』でわかっていたけれど、この作品で改めて揺るぎない存在感を見せてくれた。

OPでSTORY Inc.のプロダクション・ロゴが出たので「おや?」と少々驚き、エンドロールでさらに川村元気が監督(かつ脚本を共同執筆)だったことを知った。新境地でヒットを打てたことを喜びたい。
川村元気は東宝の社員時代に新海誠『君の名は。』の大ヒットの立役者となり、その後独立してSTORYを設立してからも新海の続編とも言うべき『天気の子』『すずめの戸締まり』でも成功した。
しかしその後恋愛小説『四月になれば彼女は』を書き、2024年には映画化もしたが、残念ながら個人的には星1〜1.5程度しか評価できなかった。ストーリーもほとんど思い出せない。

世の中には「その人自身が天才クリエータータイプ」の人と、「天才クリエーターの能力を最大限に引き出すプロデューサータイプ」の人が居る。
また、それぞれの能力が、違う領域やジャンルで発揮されることが多い。

僭越ながら川村元気は、物語創りにおいては後者であって、特にラブストーリーをオリジナルに創造するよりも違うジャンルで良いクリエーターや良い素材を深く耕して豊穣な世界をリビルドすることに傑出していると思う。
この『8番出口』も、ゲームという異なるジャンルの素材から、映画の時間経過のコントロールやプロットへと変換し、その時空間に役者の二宮和也を置いて違和感のない演出を付けているわけで、これは見事だと言う他ない。
川村元気には、今後もぜひホラーや巧みなスリラーで彼らしい新境地を開拓して行って欲しい。

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LukeRacewalker
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