「8ターン目ぐらいの天井の照明が8の字になっていたのは笑った」8番出口 Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
8ターン目ぐらいの天井の照明が8の字になっていたのは笑った
2025.8.29 イオンシネマ京都桂川 8番スクリーン
2025年の日本映画(95分、G)
原作はKOTAKE CREATEのゲーム『8番出口』
あるルールに支配された空間に迷い込んだ男を描いたワンシチュエーションミステリー
監督は川村元気
脚本は平瀬健太朗&川村元気
物語の舞台は、都内某所の地下鉄車内
音楽を聴きながら雑踏に紛れる男(二宮和也)は、泣き叫ぶ赤ん坊(曽田怜央)をあやせない母親(中島多羅)にブチ切れるサラリーマン(大塚ヒロタ)を目撃する
我関せずと思い、次の駅で降りた男だったが、そこに元カノ(小松菜奈)から電話が掛かってきた
その内容は「妊娠していた」というもので、元カノは「どうしたら良いか」を男に尋ねる
男は考えがまとまらないまま、とある通路に出てしまい、そこで電話は切れてしまった
男の前には0番と書かれた方向案内板があり、そのままその角を曲がっていく
そして、そこには天井に「8番出口」と書かれた案内板と、左手に幾つかの広告、右手には幾つかの業務用のドアと火災報知器があった
すると、向こうから真っ直ぐに前を見つめて歩く男(河内大知)がやってきて、目も合わせぬまま去っていく
男はそのまま進んで次の角を曲がると、そこにはコインロッカーと布切れのゴミ、証明写真の撮影機が置かれていた
特に気に留めないまま次の角を曲がった男は、今度は「1番」と書かれた案内板のある、全く同じような場所に来てしまう
そして、その先を進むと、そこには全く同じ光景が展開し、さらに同じ男が向こうからやってきたのである
物語は、あるルールに支配された空間に迷い込むというもので、そこでは「異変があれば戻り、なければ進む」というルールがあった
そのルール板がある場所では何も起きないのだが、その先のブロックのみ「異変」がどこかにあるという感じになっていた
最初の三巡ほどをデモプレイのように展開し、男がルールを理解してから本編が進んでいく
このあたりはお約束の展開なのだが、冒頭で男の背景を描いてしまっているので、その後の展開、登場する少年(浅沼成)の正体などが瞬時にわかってしまう
それでも、歩く男が「元は迷う男だった」という展開があるので、この構成は面白かった
歩く男の前でだけ登場する歩く女子高生(花瀬琴音)は、迷う男と少年と同じ関係なのかはわからないが、設定的には関係あるのかな、と思った
歩く男のエピソードは「迷う男が抜け出せなかった時」を描いていて、それが何ターン目に起こるのかはわからない
少年(歩く男にとっては女子高生)を見捨てた瞬間に発動するのかな、と思うものの、そこは深く考える必要がないようにも思えた
映画が面白く感じる人は「能動的にシチュエーションにのめり込むタイプ」で、いわゆる「男よりも先に異変を探してやろう」と考えるプレイヤータイプだと思う
逆につまらないと感じるのは「実況を眺めているタイプ」であり、男のぐだぐだなプレイを観てイライラしてしまうのだろう
没入型にするか、傍観型にするかの匙加減は難しいところがあるが、「男の背景を描きすぎている」ので多くの人が傍観目線になってしまうと思う
なので、ゲームプレイ経験者とか、根っからの謎解き好きならハマるけれど、映画として鑑賞するというタイプだと向かないように思えた
いずれにせよ、どんなバランスにするかは難しい案件だと思うが、前半は「没入型」で8番寸前まで行ってふりだしに戻るという方が良かったと思う
とことん突き放したのちに、傍観型へとシフトするために「歩く男」のエピソードを入れ、さらに最後は没入型へと戻った方が楽しめたのだろう
最終的には「助かってほしい」という願望を植え付ける方面で映画は展開していて、面白く感じなかった人にとっては「早く出たい」と思わせてしまっている
それが狙いなのかはわからないが、前半で一瞬だけ「天井の照明の並びが変わった」という伏線の回収を利用して、ステージの切り替えを行なった方が良かったのかな、と思った
