「とんでもねぇイケてる醜男が大活躍」プレデター バッドランド まほさんの映画レビュー(感想・評価)
とんでもねぇイケてる醜男が大活躍
共働きの両親がどうして週末を楽しみにしていたのかもわかっちゃいないマジの子どもだった私も、家族そろって観る「日曜洋画劇場」の時間は特別でした。
令和の今日、あのリビングにタイムスリップしたみたいだよ。サンキュー、プレデター。
『プレデター』といえば淀川長春さんがニックネームを授けたアーノルド・シュワルツェネッガーこと「シュワちゃん」が筋肉モリモリのマッチョマンとして全盛期だった1987年に悪役として初登場。
底魚のアンコウに引っくり返したヒトデをくっつけたようなインパクト大のご尊顔(ごめん、アンコウ)がヒットして続編も出ちゃって、シリーズにもなっちゃって、その内「カブトムシとクワガタ、戦わせたらどっちが強いん?」みたいなノリでエイリアンとも戦わせられたりして、グッズもいろいろ登場してと、なんかもう仕事を選ばず頑張ってる駆け出しのアイドルって感じだ。
そんな彼らがとうとう2025年に最新作まで出ちゃうってすごい。愛されてるね。
さて今作。今まではそんなマスコット(?)ポジションだった私のプレちゃんが主役をやりますよということで劇場で観賞。
これはですね。主人公がアンコウというだけでノリは完全に『ヒネくれてないころのSTAR WARS』です。現代色にチューニングしつつ、これでもかと描かれる映画のセオリーが観ていてなかなか爽快でした。
まず、今回は主役ということでまるで感情移入が難しいプレデター「ヤウージャ族」とはなんぞや? を程よい尺で説明し、観る人の心を応援したいでしょ? と導いてくれるところがありがたかった。つくりはところどころ大雑把なんですが、ちゃんと視聴者を置き去りにしない心配りが嬉しく思います。
なおヤウージャ族は私の感じるところでいうと「力こそパワーの中学二年生の脳筋族」。
そんな脳筋族がなんでこんな高度な文化水準に到達できているのかはまるで謎ですが、ともあれ一人前の脳筋になるぞ~の儀式で、落ちこぼれのデクくんが遠路はるばるやってきたのがトンデモ惑星バッドランドなわけなのです。
このデク、プレデターなのに「一族最弱」と称され、頼りなかったり、情けなかったり、弱さがあるところがすごくイイ。
だってそれは映画を観る視聴者の多くが抱えている問題でもあるから。
けれど一族最弱とはいえ、そこは全てを狩る最強戦士プレデターですから、活躍すべきところは大立ち回りし、勇敢さを見せるので素直に格好いい。そして、やがては彼だけが持つ弱さこそが何よりの強さに変わっていく構図が上手くできているなぁと唸らされます。
ヒロインはエル・ファニングの演技が大変チャーミングな「下半身を無くしたアンドロイド」のティア。すごい、私のような節穴視聴者にもわかりやすい女性性にとらわれないどこか自由な新ヒロインが、自分の生きる道を見つけ異種族のデクと不思議な信頼を築いていくのは面白かったです。
そしてなんといっても楽しいのは後半の巨悪に追い込まれ一度窮地に陥ってからの巻き返す展開!
オリジナル版『プレデター』でも次々と殺されていく仲間に、前半はホラー映画の様相を見せていましたが、葉に付着した青い血に気づいたシュワちゃんの台詞で攻守が逆転。
「見ろ、血だ。血を流すということは――殺せる」
名台詞ですね。
あるポイントを起点に映画の展開が変わっていくのはシリーズ全体にあるスピリットのようにも思えます。
本作でも打ちのめされたデクが立ち上がり、前半で痛い目に遭っていたバッドランドの地の利(本当に地の利)を活かして奮起していく様子は拳を握って応援してしまいました。
アクションシーンにも工夫があり、なんだか懐かしさも感じるような楽しい一作。タイトルはあのころの「日曜洋画劇場」の煽り風にしてみました。とんでもなーい!
映画チケットがいつでも1,500円!
詳細は遷移先をご確認ください。
