劇場公開日 2025年10月10日

「光の軌跡、再び。『トロン』最新作が描く“継承”と“迷走”」トロン:アレス snowさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5 光の軌跡、再び。『トロン』最新作が描く“継承”と“迷走”

2025年10月15日
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鑑賞方法:映画館

今の時期にまさか“トロン”の新作が見られるとは思いませんでした。
ただ、主人公がいきなり女性に変わっていて、最初は少し理解が追いつかず、「エンコン社が買収でもされたのか?」と正直思いました。

ストーリー的には『レガシー』のその後――サム・フリンが社長を務めていたものの、退任して現在に至る……という設定のようです。
しかし、その前提説明がほとんどないため、『レガシー』とのつながりがやや薄く感じられました。

今回は、ケヴィンが残した“永遠のCode”をめぐって、インディ・ジョーンズのような冒険劇が展開されます。
細かいストーリー考察は他の方々に任せるとして、ここでは映画全体の印象を中心に。

この作品はやはり、コンピュータグラフィックの迫力と映像世界を楽しむ映画だと思います。
ストーリー面の厚みはやや薄いものの、前2作と比べれば筋立てはしっかりしていた印象です。
ただ、ラブストーリーでもなければ、アメリカ映画らしい“家族の絆”の物語でもない。
「何を描きたかったのか」がやや見えにくい点は否めません。
デジタル世界の人間と現実世界の人間との対立構図でもなく、テーマが少しぼやけていた印象です。

また、死んだはずのケヴィンが突然登場する展開には驚きました。
しかも、他の建物が壊れているのにゲームセンターだけが無事という……あそこだけバリアでもあるのか?と思うほど不思議な描写もあります。
細かいツッコミどころは多いですが、全体としてはアクション映画として十分に楽しめました。

特に、最新のCGで再現された“ライトサイクル(トロンバイク)”のシーンは胸が熱くなりました。
一作目を知る世代にとっては、あの登場だけでも感動ものです。然も、当時のグラフィックでも再現されてそれはそれはそれは…

ラストでは、再びグリッド内での新たな火種を予感させる展開。
サムの行方や、今回悪役だったジュリアンのその後、さらにデリンジャー社との対立など――次回作への期待が高まる締めくくりでした。

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snow