「天才あれすくん。 レトはもっと出る映画を選んだ方が良い😅」トロン:アレス たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
天才あれすくん。 レトはもっと出る映画を選んだ方が良い😅
コンピューター内に広がる電子世界での冒険を描いたSFアクション『トロン』シリーズの第3作。
前作から10数年。かつてエンコム社の幹部であったエド・ディリンジャーの孫で「ディリンジャー社」のCEO、ジュリアン・ディリンジャーはグリッド内のプログラムやライトサイクルを実体化する技術を開発。軍事目的に利用しようと株主に売り込むのだが、これには29分間しか実体を保っていられないという欠点があった。
同じ頃、エンコム社の現CEOであるイヴ・キムは失踪した元CEO、ケヴィン・フリンの残したデータからデジタルの実体化に必要な「永続コード」を発見する。コードが彼女の手にある事を知ったジュリアンは、マスター・コントロール・プログラムの「アレス」とその副官「アテナ」をグリッドから呼び寄せ、その奪取を命じるのだった…。
ディリンジャー社のMCP、アレスを演じるのは『ファイト・クラブ』や「DCエクステンデッド・ユニバース(DCEU)」の、オスカー俳優ジャレッド・レト。本作の製作も務めている。
ディリンジャー社のCEO、ジュリアン・ディリンジャーを演じるのは『キック・アス』や『X-MEN』シリーズの、名優エヴァン・ピーターズ。
「世界ではじめてコンピュータグラフィックスを本格的に用いた映画」という肩書きのみを武器に、40年以上戦い続けてきた『トロン』シリーズ(1982-)にまさかの3作目が登場。
『1』(1982)から43年、2作目の『レガシー』(2010)から15年という悠長すぎるタイムスパン。忘れた頃に新作がやって来るのが『トロン』シリーズの特徴だが、どれだけ間が空いても新作が作られ続けているという事は、それだけ多くの熱烈なファンが存在しているという事なのだろう。でもこのシリーズのファンダムなんて見たことも聞いたことも無いんだけど…。一体誰が喜んでんだ?
この第3作目の企画は『トロン:レガシー』公開直後から持ち上がっていたらしいのだが、ディズニーはマーベルやルーカスフィルムの買収で色々と忙しく、結局後回しにされてしまったとのこと。それでまぁ15年も時間が経ってしまった訳だが、その休眠期間中にこの映画は完全に腐ってしまったようだ。
ちなみに、『レガシー』はジョセフ・コシンスキーの長編映画初監督作品。『トップガン マーヴェリック』(2022)と『F1®︎/エフワン』(2025)の大ヒットで今や押しも押されもせぬ人気監督となったコシンスキーだが、そのキャリアのはじまりは『トロン』シリーズにあったのである。
コシンスキーは本作に製作総指揮として携わっているが、代わりに監督を務めるのはノルウェー人のヨアヒム・ローニング。この人『パイレーツ・オブ・カリビアン 最後の海賊』(2017)でハリウッドデビューを果たして以来、ずっとディズニーで映画を撮っている、いわばディズニー専属の業者監督である。スタジオの注文通りに映画を作れるプロフェッショナル、という事で重宝されているのだろうが、そういう人が作る映画って大抵ツルッとしていて面白みがないのよね…🌀
以下、辛辣な事を述べるかも知れませんが、自分はこの映画、実は結構好きです。はっきり言って今世紀最大級のヘッポコ映画だと思いますが、このあまりのヘッポコぶりに愛着すら湧いて来てしまった。終盤なんてもうずっとニッコニコ♪
このダメダメっぷりは一見の価値あり!オススメっ!!
まずもって言いたいのは、キャスティングのバランスの悪さ。ジャレッド・レトは、まぁ彼の演技は毎度賛否両論を巻き起こすとはいえ、現代を代表するハリウッドスターの1人である事は間違いない。悪役を務めるエヴァン・ピーターズも『ダーマー』(2022)の怪演により今やサイコパス俳優の第一人者へとのし上がった。
主人公と悪役、それぞれにスターを配しておきながら、何故かヒロインが…。そりゃグレタ・リーも『パスト ライブス/再会』(2023)で世界的にガツンと評価された名優ではありますが、使いどころが違うだろぉ〜!彼女は足が地に付いたヒューマンドラマ系の作品だからその良さが発揮されたのであって、この様なSFアクションのヒロインに向いているタイプの役者ではない。良くも悪くも「普通の人」って感じなので、異常なルックスのジャレッド・レトと並んでもなんのケミストリーも生まれないどころか、チグハグすぎてなんかいたたまれない気持ちになってしまう。人には適材適所っつーもんがあるのよっ!
そして何より、ダサいっっ!これに尽きるぞこの映画はっ!!
キャラのルックス、アクション、ストーリー、映像、セリフのやり取り、全部ダセェ。よくぞここまでダサく出来たなと感心するほどダサい。アテナが螺旋スロープを駆け上がってくるシーンなんて、そのあまりの間抜けさに危うく吹き出しそうになってしまった。
これ撮影監督はフィンチャー映画を多く手掛けているジェフ・クローネンウェスなんですよね。レトの出世作のひとつである『ファイト・クラブ』(1999)も彼の仕事。そんな名キャメラマンが参加していてなんでこんな事に…?
更に言わせてもらえば、ショボい!昨今の大作映画にあるまじきショボショボなスケール感には、途中で金が無くなったのかと訝しんでしまったほど。
グリッド内にプログラムは無数に居るはずなのに実体化されるのはアレスとアテナだけだし、『トロン』シリーズではお馴染みのクレーンゲームみたいな兵器(レコグナイザー)はひとつだけしか出てこないし…。
本作の製作費は約1億8,000万ドル。これだけあれば『ゴジラ-1.0』(2023)を10本以上作れる訳ですが、それだけの予算をかけた様には全く見えないです。
お話ははっきり言って『ブレードランナー』(1982-)と『ターミネーター』(1984-)をごっちゃにした感じ。SF映画の2大巨頭をよくぞまぁここまで臆面もなく真似できるなと逆に感心してしまう。
提示される「自我を持ったAI」観は要するに『ブレラン』のレプリカントな訳だが、そういえばレトって『2049』(2017)でレプリカントの創造主を演じてましたね。キャスティング的に考えても、本作はパロディとして意図的に『ブレラン』に寄せているのだと思うのだが、それを歴史あるフランチャイズで堂々とやるってのはどうなのよ。ディズニーにプライドとか無いんかっ!?
ストーリーの骨子は『ターミネーター』から。…今時『ターミネーター』の丸パクりってそれはどうなのよ、という事は横に置いておくとして、なぜ『2』(1991)が感動的な物語になっていたのかといえば、それはシュワちゃんとジョン・コナーの絆をきっちりと描いていたから。では本作はどうかと言うと、お世辞にもアレスとイヴの間に友情が芽生えている様には見えない。だってこの2人、多分1時間くらいしか一緒に行動してないし。にも拘らず、最終的に2人がチューしちゃうんじゃないかとドキドキするくらい、なんか距離が近くなっている。いやいつの間に?
『ターミネーター2』を真似するのであれば、表面的な事だけでなくキャラクターの描き方までちゃんと真似して欲しいところである。
実体化には「29分」というタイムリミットがある、という設定は面白い…のだが、それを上手く活かしきれていなかった点は非常に勿体無い。特にアレスにとって3度目の実体化、つまりこの機会を逃せばデリートされてしまうというラストチャンスで、その殆どを車の運転シーンに費やしてしまうというのは完全にどうかしている。ここでもっとサスペンスフルなアクションを見せてくれればこっちとしても「アレス本当に間に合うの!?」と手に汗握る事が出来たのだが、緊張感に欠ける展開で拍子抜けも良いところだった。
勿体無いといえばアレスの性格もそう。80'sのシンセポップが好きという設定がただのアクセサリーにしかなっておらず、「だからどうした?」という以外の感想が出てこない。わざわざ古い音楽が好きだという設定にしたのであれば、それをキチンと物語に落とし込んで欲しい。『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014)を見習いなさいよ。
本作は3つの舞台、現実世界、デリンジャー社のグリッド、オリジナル『トロン』のグリッド、でストーリーが展開する。これもまた問題があると思う。というのも、コロコロ舞台が変わるせいでひとつひとつのパートの印象が弱くなってしまっているのだ。特にイヴがデリンジャー社のグリッドに閉じ込められてしまうところなんて、そこで何が起こったのか何も覚えていられないほど印象が薄い。
現実なら現実、グリッドならグリッドと、軸となる舞台を選んで物語を描き込んで欲しい。あれもやりたいこれもやりたいじゃ物語が散漫になるだけです。
さんざん貶してきたが、ライトサイクルの表現は素直にカッコ良い。『AKIRA』(1988)オマージュのスライドブレーキもばっちり決まってて言う事なし!
また、オリジナル版のグリッド内部を完全再現していた点もなかなか趣が深い。ダチョウ倶楽部がMCしてた頃の「天才てれびくん」を彷彿とさせる安っぽいCGだけでなく、あのやけに青暗い顔色までも忠実に再現。ジェフ・ブリッジスが想像以上に爺さんになっていてちょっとショックだったけど、ここのバカバカしさはとっても良かったと思います👍まぁただ、ここでの冒険はあくまでもオマケという感じでサラッと流されてしまう。このザ・トロンな世界こそ、もっと本腰を入れて描くべきだったと思うんだけどね。
ジャレッド・レトの映画に当たりなし!…はまぁ言い過ぎだとしても、近年の彼の出演作品はなかなかに凄まじい。『スーサイド・スクワッド』(2016)に『ブレードランナー 2049』、『モービウス』(2022)、そして本作。なんて立派なクソ映画請負人なんでしょう。レトさぁ、あんた一応オスカー貰ってんだから仕事は選びなさいよ!…まぁこの映画は自分でプロデュースしてるんですけど。
『レガシー』に登場したデジタル生命体を清々しいまでにスルーした本作。「それは次回作でやりますからっ!乞うご期待!!」みたいなポスクレシーンがくっ付いているが、この出来で次なんかある訳ねーだろっ!!
私もレプリカントを連想しました。
グレタ・リーの配役はポリコレですかね、肝心のライダーっぷりが様になっておらずなんだかカッコ悪い。ここは彼女じゃないだろう、と私も思いました。
今晩は^ ^ レビューにイイネ有難うございます♬ ライトサイクルや乗り物カッコ良でしたね‼︎個人的には3Dプリンターで出て来るシーンとライトサイクルシーンが萌えてました(^^)
辛辣ながらも作品への愛情がにじみ出た見事な批評だと感じました。『トロン』というシリーズへの長年の期待と、その期待を裏切られた失望を、ユーモアと皮肉を交えて表現している点が非常に魅力的な文章でした。単なる酷評ではなく、「ここまでダメだと逆に愛しい」という感情の転換が見事で、不思議な爽快感すら残ります。
オプオプさん、コメントありがとうございます♪
レビューにも書きましたが、私もこの映画好きですよ!皮肉でもなんでもなく。
ダメダメなのは否めませんが、愛嬌はめちゃくちゃある作品だと思います!






