「これは、最新の映像技術を確認するためのシリーズなのだろう」トロン:アレス tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
これは、最新の映像技術を確認するためのシリーズなのだろう
デジタル世界の擬人化されたプログラムが、現実世界で実体化するという荒唐無稽な物語なのだが、1作目と2作目で、現実世界の人間がデジタル世界へと転送された実績があるだけに、今回は、その逆をやっているだけということで納得してしまった。
話としては、デジタルの実体化を永続させるためのコードの争奪戦が軸になっているのだが、その過程で、敵のAI兵士(アレス)が自我に目覚め、ヒロインに味方するという展開は、余りにもオーソドックス過ぎて、最新の映像技術とのギャップを感じてしまった。
29分間という実体化のタイムリミットにしても、ヒロインが、時間を稼ぐために機転を利かすといった場面がある訳ではなく、ただバイクや自分の足で、街中を走り回って逃げるだけで、その設定が十分に活かされているとは思えない。
その一方で、実体化されたデジタル世界のマシンが、現実世界で暴走する様子は面白く、特に、あのライトサイクルが、「金田のバイク」のような形状になって、光の壁を残しながら市街地を疾走する姿には、何とも言えない美しさと「ライブの迫力」を感じることができた。
1作目のデジタル世界やジェフ・ブリッジスを再登場させ、初代のライトサイクルが、速度を変えずに直角のコーナーを曲がる場面を再現するなど、古くからのファンへのサービスに抜かりがないところも嬉しくなる。
できるならば、2作目のラストで旅に出た2人が、写真だけでなく、実際に登場していれば、最高の3作目になったのだろうが、そこは、やむを得ない事情があったのだろう。
いずれにしても、過去作を観ているからこそ、作品の世界に入り込め、内容を楽しめる作品であることは間違いなく、逆に、初見の観客にとっては、「付いて行けない」ところが多いのではないだろうか?
20数年ぶりとか、10数年ぶりに作られる「トロン」は、ストーリーを楽しむというよりも、その時点での最新の映像技術を確認するためのシリーズなのだろう。
