「離島に響く青春讃歌」アオショー! おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
離島に響く青春讃歌
■ 作品情報
監督は山口喬司。主演はMAZZELのRANと山川ひろみ。共演に小山慶一郎、飯島寛騎、小泉光咲、三浦獠太、福崎那由他、大川泰雅、堤下敦、田畑智子、徳重聡、渡辺いっけい、川上麻衣子、佐野史郎。脚本は山口喬司と小林弘利。
■ ストーリー
東京から過疎化が進む離島・折後島へ母と共に移住してきた引っ込み思案な高校生の飯田悉平は、島唯一の高校である折後島高校に転入する。しかし、転入早々、その高校が本土の高校との統廃合により閉校が決まっていることを知る。悉平は、温かい島の住民やクラスメイト、そして気になる存在である波島沫乃との出会いをきっかけに心を開き、高校生活最後の思い出として全校生徒での合唱を提案する。合唱を通じて生徒たちは絆を深めていくが、やがて仲間たちの心はバラバラになってしまう。さまざまな困難や葛藤を経て、彼らは合唱を通して成長していく。
■ 感想
美しい離島を舞台にした、心温まる青春合唱コメディで、高校生たちの清々しい姿が印象的です。離島という設定だけで、まるでそこに暮らす人々が皆、根っからの善人であるかのような絶対的な安心感を醸し出しています。合唱を通して高校生たちが互いに結びつき、青春を謳歌する姿は、観ているこちらの心まで洗われるようです。
中心となる若手俳優陣は、まだ馴染みのないかたが多く、その演技には、初々しさや少しの頼りなさ、むず痒さを感じることもあります。しかし、彼らが懸命に役に挑む姿には、確かな健闘が見て取れ、好感がもてます。脇を固めるベテラン俳優陣、佐野史郎さん、田畑智子さん、川上麻衣子さん、渡辺いっけいさん、徳重聡さんらが、出しゃばりすぎることなく、的確に若者たちを支えている点も、作品全体のバランスを保つ上で非常に効果的だと感じます。
全体的に軽いノリで物語が進むため、時に物足りなさを感じる面もありますが、ユーモラスなシーンも随所に挟み込み、ライトな作品として心地よくまとまっています。ただ、ところどころにツッコミたくなるような設定や描写も見られます。廃校予定を告げない編入や、合唱で単位を与えるといった校長の適当さ、あるいは夏休み明けなのに生徒たちが長袖ワイシャツにブレザーまで羽織っている季節感のずれ、他校との交流に引率教師がつかず、その交流場面にも教師不在など、細かな点に引っかかることは否めません。それでも、これらは一種の愛すべきお茶目さとして、笑って許せてしまう範囲内だと感じています。
しかし、本作で最も残念に思うのは、肝心な“合唱”を通じた成長のプロセス、その核となる部分の熱量が薄く感じられることです。悉平たちが本気で合唱に取り組み、対立や葛藤、挫折を乗り越え、ひと回り大きく成長したという描写が、どうにも希薄に映ります。感動のクライマックスに向けた感情の起伏や、登場人物たちの内面的な変化が、もう少し深く、情熱的に描かれていたら、きっとより心に響く作品になったのではないかと思います。爽やかで心地よい作品であることに変わりはありませんが、その一点において、少し物足りなさを覚えてしまいます。先に観た「シャッフル・フライデー」に引き続き、スクリーン貸切鑑賞で、人目を気にすることなく涙を流せるかと思ったのですが、そこまでには至りませんでした。
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