劇場公開日 2025年7月11日

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「希望は生き続ける…ジェームズ・ガン節全開による希望の物語!誰も死なせないパンクロッカーな希望の象徴 vs ナショナリスト」スーパーマン とぽとぽさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 希望は生き続ける…ジェームズ・ガン節全開による希望の物語!誰も死なせないパンクロッカーな希望の象徴 vs ナショナリスト

2025年7月12日
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鑑賞方法:映画館

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「他国のことなんて放っておけ」
スーパーマン…スーパーマン…スーパーマン…ぼくらがその名を心の底から呼ぶとき、マークを見たり心の中で思い描いたりするとき、本来それは希望の象徴であり、平和への希求のはずだ。長年ポップカルチャーに浸透しすぎて忘れられがちなその意味を、今この暗い時代に然るべき重さをもって再提示する。当初本作のタイトルには「レガシー(遺産)」という言葉が付いており、後ろ向きな印象から取られたが、実際本作を観るとそこに込められた前向きな意味も受け取れる。
「黄色い太陽」
78年版に立ち返るようなカラフル&軽快ポップな作風で、頓挫したDCEU当初のザック・スナイダー節に重苦しくダークなシリアス路線の闇夜をひとっ飛びで切り裂く!例えば、胸のマークは「"S"ではない」と格好つけて言い訳する必要もない。だって、本作ではちゃんと赤いパンツも履いているんだから"S"上等!老若男女問わず誰もが親しみやすく、誰からも愛される"Man of Tomorrow"像を一新して打ち立てる。

国家のしがらみに囚われることなく、誰も死なせないスタンスこそ、ヒーロー映画飽和時代な現代における"パンク・ロック"(体制や主流派への反骨)だ!!
『バットマン vs スーパーマン』では、超人バトルの足元でその被害の甚大さから命を奪われていく無数の人々に目を向けようとしていた(というよりバットマンをスーパーマンと対立させるための口実として描いていた)が、本作ではそもそも徹頭徹尾"死者0"を目指すスタンスが打ち出されていて、その辺りの差別化も素晴らしい。作中でスーパーマンが、誰か一人のために救出に飛んで現れるシーンが何度も出てくる。それはもしかしたら生温い夢想家の発想なのかもしれないけど、夢くらい見たっていいじゃないか!夢で終わらないために。
スーパーヒーローがリアルに存在するとしたら、一般人たち・市井の人々の暮らしを壊し全てを奪っていく被害は間違いなく現実問題として議論されるべき点であるにも関わらず、MCUにおける『シビル・ウォー』然り、内輪揉め・仲間同士を対決させる理由に使われてきた感があるわけで、それを自身の代表作『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』では大量に死なせてきたジェームズ・ガンが(楽観的であったとしても)現実世界に反旗を翻すアンチテーゼとして希望を込めたことが何より特筆に値する。これぞ"パンク・ロック"と言わずして何と言えようか!そりゃパンク・ロック好きのロイス・レインも惚れるわけだ。

「"エイリアン"」
=外人、よそ者。今最も目が離せない役者のひとりニコラス・ホルトによるスキンヘッドと言えばウォーボーイだけど、彼が本作で演じたノリノリなレックス・ルーサー像は、本作を極端な見方をするならネオナチ的でもある?つまり、保守的な排斥運動やナショナリスト・民族主義につながる"妬み"。そして、色んな数字とアルファベットの組み合わせを叫びまくるけど、「2X」は金的攻撃・股間蹴り?それはスーパーマンだけじゃなくて全男性の弱点という意味で有効な技だよ…。2500パターンあるとかって言っていた内の、(「1A」から始まり)50番目に股間キック思いついたのかと思うと面白い。
作中で描かれるのは、明らかにロシアによるウクライナ侵攻。そして、アメリカ国旗(星条旗)が何度か映るのも、つまるところそういうことではないのだろうか。何よりの証左だと思う。世界には一方的な侵略など理不尽な暴力が未だに溢れているのをぼくらは知っているのに、何もできない(しない)でいる。そんな中で世界のリーダーであり、国家における超大国まさしく"スーパーマン"な存在であるアメリカが、ルールや慣習に縛られることなく人として本当に今すべきことは何なのかと問いかけているようだったし、それはぼくやあなた世界中の一人ひとりの胸にも突きつけられているジェームズ・ガンからの問いだ。

「Don't be a stranger.」
涙腺崩壊。ジェームズ・ガンといったら父息子の物語が得意だけど、それは本作でも感情面を担う屋台骨としてしっかりと生きている。予告でも使われている家の外の親子語りシーンからの、希望の旗を立てるシーンの流れで、どちらもまんま涙を流してしまった。もっと言えば上述したような本作の方向性に、作品の前半で気づいた時点で、普通のアクションシーンの最中にもウルッときていた。だから、彼に遺されたメッセージの真相は、今となってはどうでもいいことだ。親は子に目的を与えるのでなく、手段を与え、子がバカをやってもそばで見守るのが役目だから。地球のために人々の役に立ち、世界をより平和にする。そこには右も左も関係ない。
挫折に始まり、アイデンティティークライシスに陥る。スーパーマンという全ヒーローの中で一番有名なヒーローだからこそできる、今さらキャラクターを説明的に描写する必要がないからこその、意外性のあるオープニング。からの、毎度おなじみな盟友ネイサン・フィリオン(グリーン・ランタン!!)だけでなく、こちらも毎度おなじみな弟ガンにもチラッと役柄を与えることに成功している。もう彼の作品におけるタスクですね。"KAIJU"怪獣バトルすらも!あと、ジェームズ・ガンと言ったらサントラ・音楽面で、本作は『GotG』最強ミックスに比べると圧倒的に控えめではあるけど、ミスター・テリフィックの戦闘シーンでしっかりと出てくる(ex.『GotG Vol.2』♪Mr. Blue Sky)!レックス・ルーサーがスーパーマンに執念を燃やすさまは、ある種スーパーマンが周囲にも危害の及ぶ敵キャラを引き寄せているという主人公理論(ex.「ドラゴンボール」孫悟空・「名探偵コナン」コナン)が頭をよぎりもしたが、"ゴッド&モンスター"な世界なら関係ないのか?何よりスーパーマンが食い止めているし!新たなDCユニバースの未来は明るいかもしれない。

「"頭脳は腕力に勝る"」
そして、なにより心がある…人間は強い。自信がなく確信を持てなくても一歩踏み出して飛び込む勇気がある。それがぼくらの強さの源だ!その力をどう生かせるだろうか。
本作が持つパワー、この希望の物語に胸打たれた人が実際にどれだけそのメッセージを持ち帰り、実生活で差別・迫害しないで不当な暴力に立ち向かったりできるのだろうか?誰かが傷つき困っているときに、知らんぷりはやめよう。猿みたいに、自分の人生がままならないことへの当てつけ・ストレス発散感覚で、現代社会の病床スマホ依存・ネットSNS社会の匿名性を悪用した誹謗中傷に精を出している場合じゃない。他者を貶めるために、人の悪口ばっかり心無く書き込んでいるところじゃない。刻一刻と減っていくあなたの人生、それでいいんですか?既存IPを使った夏のブロックバスター娯楽作ド真ん中のハリウッド大作だからといって、これは"あ〜おもしろかったね!!"…だけで終わりにしてほしくないな。失われつつある希望を取り戻そう!

P.S. クリプトかわいすぎ!飼いたいけど、あのアタックは普通の人間なら肋骨とか折れてヤバいことになりそう。レックスのガールフレンドの描き方だけ少し気になってしまったので、彼女には報われてほしい。

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とぽとぽ
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