サスカッチ・サンセットのレビュー・感想・評価
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我々はずっと何を目撃しているのだろう
ゼルナー兄弟は奇妙な映画を手がけることで知られる人たちだ。奇妙な監督が映し出す、奇妙な人たちの暮らし、人生、運命。しかしその目線は決して被写体を見下すことなく、じっくり愛情をもってスポットを当て続ける。登場人物がサスカッチのみという本作でもスタンスは変わらず。それどころか「セリフを全く用いない」というサイレント映画にも似た趣向によってそのスタイルがより強化されている。面白いもので咆哮や表情や身振り手振りで表現された生態は、序盤こそあまりに生々しいものの、一線を超えると非常にわかりやすい表現となって流れ込んでくるかのよう。彼らが我々と同じ猿人仲間の「ニア・イコール」な存在だからこそ、やや理解不能の味わいを残した「遠くて近い」関係性が共感と共振を呼び起こすのだろう。本作を楽しめるか、もしくは怒り出すかは観客次第。その反応をじっと伺っているのはスクリーンの向こうのサスカッチ自身なのかもしれない。
Parallel Stupidity
Sasquatch Sunset is a quirky comedy of errors that feels like a short film concept stretched to feature length. The irreverent, gross-out humor is reminiscent of Jack Black's Year One, but the film’s lack of dialogue elevates it to something approaching higher art, akin to the ape sequence in 2001: A Space Odyssey.
The biggest laugh came when I realized Jesse Eisenberg played one of the sasquatches, adding an unexpected layer of humor to the film. Produced by Ari Aster, Sasquatch Sunset succeeds with its "less is more" approach
セリフなしでも興味が維持できる映画です
元々観るつもりは無かったのですが、買い物ついでに初めて寄ったシネコンで会員証を作り、一番上映時間の近かった本作を鑑賞。
私もサスカッチの意味を知らないまま鑑賞しましたが、やはり、その方が楽しめました。
意味を知らない方は、調べたりせずに鑑賞するのがお勧めです。
言葉を持たない類人猿の物語で、セリフは、うー、おー、ほっほ、といったうめき声のみ。解説のナレーションも無し。でも、最後まで興味深く観ることができました。観てよかったと思える良作です。
公然と行われる排泄や性欲処理など、なんとも恥ずかしくいたたまれない描写もありましたが、それらを無い事にして生きている現代人も、実は日常的に隠れて行っている事であり、類人猿も現代人も変わりはしない、同じ生き物だと思い知らされ、やがて映画の中の類人猿たちに共感し始めました。
太古の昔、まだ言葉を持たない類人猿たちは・・・という雰囲気で映画は始まります。退屈そうな映画だなと思ったら、その後の展開にグイグイ引き込まれ、あっという間に物語は終盤を迎えます。
最後は、ああ、そうなのか・・・と謎の満足感に満たされましたので、個人的な評価は星5つです。
バカバカしい作品をシッカリ撮り切る事こそアメリカ映画の底力
ヒマラヤの雪男と並ぶ有名UMA(未確認生物)であり、アメリカ北部の森林に生息すると言われるビッグフット家族の四季を追った物語です。食う・寝る・やるだけの生活が台詞は一切なく唸り声だけで描かれます。でも、子供を可愛がり、死者を悼む彼らの精神世界が少しずつ伝わって来ます。とはいえ、やはりバカバカしい映画で、それが魅力でもあります。
傑作!とは思いませんが、「アメリカ映画界は凄いなぁ」と感じっ放しでした。こんな作品、日本ならば企画会議にすら上らないでしょう。でも、予算が付いて、名だたるプロデューサー・俳優が配され、情感溢れる音楽も響かせてこんなバカな映画をしっかり撮り上げているのです。こんな作品がある事が映画文化の豊かさの証なんです。
生きるって大変だ
サスカッチの生態を通して、生きることの厳しさを思い知らされた作品。
CGで良さそうなサスカッチだが、人間が演ずることで
動物らしさのリアリティがハンパなく出ていると思う。
サスカッチにとっては生きることに必死だが、
それが観ている人間にとってはコミカルに映ったりもする。
かたや自然界の厳しさも痛感するシーンも多々用意され、実にせつない気持ちにもなる
という、セリフが一切ないのに感情が激しく揺さぶられる秀逸さだ。
ラストシーンは実にシニカルに感じたが、うまいオチであるとも思う。
観客の中に、パパと息子(年少さんかな)がいたのだが、
息子にはツボに入るシーンが多々あったらしく、ケタケタ笑っていたのが印象的だった。
実に斬新な作品で一見の価値あり。
かなりのキワモノだけど、かなり好きだった。
着ぐるみの中が誰なんだか、さっぱり分かんない
何かを訴えているように思うがそれがわかりづらい
4匹のサスカッチ(ビッグフット)が自然の中で生活する1年を描いた物語。4匹の関係性がまったくわからないし、最初は顔の区別もつかなかった。だからこの世界観に慣れるのに少し時間がかかる。元々変な映画だろうと思っていたし、そこまで違和感はないが変な映画だ。
食料と他の仲間?を探して移動を繰り返す4匹。言葉がわからないからどんなコミュニケーションを取っているのか仕草でしか判断ができない。人間に近い生物だけど、行動原理がやはり獣なのが面白い。日々の生活は平穏そうに見えるが、獣である以上自然の中で生きるとは危険と隣り合わせだということがわかる。そんな生きることの素晴らしさを訴えた映画とは思えないけど。
いくつかのトラブルや事件が起こったとしても、彼らの生活を淡々と見せられている感覚に変わりはない。どんな映画なんだろう?と考えていても結論は出てこない。ただ、広がる平原や森の中で木々の隙間から差し込む光、そして流れる音楽。これらの要素でこんな世界を美しいと感じてしまうのだから、自分はチョロいなと思う。
舗装された道路やテント、ラジカセなどが登場することで、人間が生きている(もしくはかつて生きていた)世界だということはわかる。でも、本作にはそれがどんな状況なのかを示す親切さはなかった。「猿の惑星」のラストシーンのようなわかりやすさではない。でも、何かを訴えているように思えて仕方ない。いや、深読みをさせるための謎をちりばめただけかもしれない。そんな深読みをしようと思ってしまう時点でやはり自分はチョロいなと感じる。
ビックフットを観ていれば
人生の意味なんて考えちゃったときに観てほしい
野生動物と変わらない暮らしぶりのサスカッチたち。
発展とか、進歩とか、何も考えていないように見えるその暮らしぶり。
食べて、排泄して、寝て、子孫を残す。
ただそれだけ。
ただ生きているだけ。
けれど、その姿かたちや仕草がどうしても人間を連想させます。
そして生きているだけのようなサスカッチ達がなんの益もない行動、つまり”遊び”に時間を費やし、それぞれに個性溢れる特定のものに拘り、そして悲しげな表情で何かとのコミュニケーションを試み続け、仲間の身に起きた出来事には真摯に心を痛める。
食べられる物の見分け方や体調管理などの方法を見ると、人間の根源的な本質がなんとなく見えてくるように思えます。
原初自然を想起させる森や草原の美しい風景の中を彷徨うサスカッチ達が何だか幸せそうに感じられますが、それなのにとても悲しげな表情に見えるギャップが観客の心に不安を掻き立てます。
予告編を観て、変な映画なんだろうなぁと思ったら、案の定変な映画。
ところが鑑賞後にクヨクヨしていた気持ちがなんだか楽になった。
変で不思議な映画でした。
ナンダコレハ
一風変わった映像体験を味わえます
衝撃的な予告にあっけにとられ、興味本位で公開3日目に鑑賞してきました。客入りは芳しくありませんでしたが、斬新な作品でそれなりに楽しむことができました。
ストーリーは、雄大な自然の中で暮らす4頭の毛むくじゃらの未確認生物(UMA)の一種であるサスカッチ(別名ビッグフット)が、食べて、交尾して、寝て、仲間を求めて旅をするという日々の中で、時には仲間と協力したり喧嘩したり、時には敵や自然の脅威にさらされたりする姿をドキュメンタリータッチで描くというもの。…とまとめてみたものの、はっきりいってストーリーらしいストーリーはありません。
そもそも自然の中で本能のおもむくままに生きる未確認生物サスカッチの生態を描くという奇妙な作品なのですが、これがなんとなくリアルです。食べられそうなものを見つけては口に運ぶ、本能的に交尾を求める、未知のものに何度も驚くなど、実在するならこんな感じなのかもと思わせる妙な説得力があります。また、ちょっとした好奇心や選択ミスが命取りになるというサバイバルの厳しさも感じられ、自然の中に潜む危険や脅威の一端を垣間見ることもできます。
一方で、サスカッチの外見がサルや人間に近いため、その動きがかえってシュールにも映るのですが、不思議と惹きつけられるものがあります。サスカッチたちは言語をもたないのでセリフは一切なく、もっぱら鳴き声と身振り手振りでコミュニケーションをとります。それでもサスカッチたちの言わんとしていることは伝わってきます。そのため、4頭それぞれの性格も感じられ、これが不思議な魅力につながっているのかもしれません。
そんな大自然の中で暮らすサスカッチたちの生涯を描くのかと思いきや、中盤あたりから人工物が登場します。初めての経験に大混乱を招くサスカッチの姿が、お下品ですが笑えてしまいます。そして、これが作品世界から現実世界への橋渡しとなり、サスカッチの実在を示唆するかのようなロマンを感じさせます。最後のオチも、サスカッチたちが見せるシュールな絵面がなんとも言えずおかしいです。
それにしても、本作が何を伝えたかったのかはよくわかりません。生き物の本能や動物目線から見た人間の所業を描きたかったのでしょうか。ただ、これだけはちゃめちゃなシーンを見せつけながらも、サスカッチたちにやや人間味が強く出ているように見えてしまうのは、ちょっともったいない気もします。あと、赤ちゃんがあまりにも作り物くさかったのにもテンションが下がります。今の技術をもってすれば、もう少しリアルに描けたのではないでしょうか。とはいえ、一風変わった映像体験を味わえたのは悪くないです。
主演はジェシー・アイゼンバーグ、共演はライリー・キーオ、他にネイサン・ゼルナー、クリストフ・ゼイジャック=デネク。ですが、誰一人わかりません。体を張ってサスカッチになりきっていることは伝わってきます。
どこがグランギニョル劇?
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