「我々はずっと何を目撃しているのだろう」サスカッチ・サンセット 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)
我々はずっと何を目撃しているのだろう
ゼルナー兄弟は奇妙な映画を手がけることで知られる人たちだ。奇妙な監督が映し出す、奇妙な人たちの暮らし、人生、運命。しかしその目線は決して被写体を見下すことなく、じっくり愛情をもってスポットを当て続ける。登場人物がサスカッチのみという本作でもスタンスは変わらず。それどころか「セリフを全く用いない」というサイレント映画にも似た趣向によってそのスタイルがより強化されている。面白いもので咆哮や表情や身振り手振りで表現された生態は、序盤こそあまりに生々しいものの、一線を超えると非常にわかりやすい表現となって流れ込んでくるかのよう。彼らが我々と同じ猿人仲間の「ニア・イコール」な存在だからこそ、やや理解不能の味わいを残した「遠くて近い」関係性が共感と共振を呼び起こすのだろう。本作を楽しめるか、もしくは怒り出すかは観客次第。その反応をじっと伺っているのはスクリーンの向こうのサスカッチ自身なのかもしれない。
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