劇場公開日 2025年5月23日

「一風変わった映像体験を味わえます」サスカッチ・サンセット おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0一風変わった映像体験を味わえます

2025年5月26日
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鑑賞方法:映画館

楽しい

単純

斬新

衝撃的な予告にあっけにとられ、興味本位で公開3日目に鑑賞してきました。客入りは芳しくありませんでしたが、斬新な作品でそれなりに楽しむことができました。

ストーリーは、雄大な自然の中で暮らす4頭の毛むくじゃらの未確認生物(UMA)の一種であるサスカッチ(別名ビッグフット)が、食べて、交尾して、寝て、仲間を求めて旅をするという日々の中で、時には仲間と協力したり喧嘩したり、時には敵や自然の脅威にさらされたりする姿をドキュメンタリータッチで描くというもの。…とまとめてみたものの、はっきりいってストーリーらしいストーリーはありません。

そもそも自然の中で本能のおもむくままに生きる未確認生物サスカッチの生態を描くという奇妙な作品なのですが、これがなんとなくリアルです。食べられそうなものを見つけては口に運ぶ、本能的に交尾を求める、未知のものに何度も驚くなど、実在するならこんな感じなのかもと思わせる妙な説得力があります。また、ちょっとした好奇心や選択ミスが命取りになるというサバイバルの厳しさも感じられ、自然の中に潜む危険や脅威の一端を垣間見ることもできます。

一方で、サスカッチの外見がサルや人間に近いため、その動きがかえってシュールにも映るのですが、不思議と惹きつけられるものがあります。サスカッチたちは言語をもたないのでセリフは一切なく、もっぱら鳴き声と身振り手振りでコミュニケーションをとります。それでもサスカッチたちの言わんとしていることは伝わってきます。そのため、4頭それぞれの性格も感じられ、これが不思議な魅力につながっているのかもしれません。

そんな大自然の中で暮らすサスカッチたちの生涯を描くのかと思いきや、中盤あたりから人工物が登場します。初めての経験に大混乱を招くサスカッチの姿が、お下品ですが笑えてしまいます。そして、これが作品世界から現実世界への橋渡しとなり、サスカッチの実在を示唆するかのようなロマンを感じさせます。最後のオチも、サスカッチたちが見せるシュールな絵面がなんとも言えずおかしいです。

それにしても、本作が何を伝えたかったのかはよくわかりません。生き物の本能や動物目線から見た人間の所業を描きたかったのでしょうか。ただ、これだけはちゃめちゃなシーンを見せつけながらも、サスカッチたちにやや人間味が強く出ているように見えてしまうのは、ちょっともったいない気もします。あと、赤ちゃんがあまりにも作り物くさかったのにもテンションが下がります。今の技術をもってすれば、もう少しリアルに描けたのではないでしょうか。とはいえ、一風変わった映像体験を味わえたのは悪くないです。

主演はジェシー・アイゼンバーグ、共演はライリー・キーオ、他にネイサン・ゼルナー、クリストフ・ゼイジャック=デネク。ですが、誰一人わかりません。体を張ってサスカッチになりきっていることは伝わってきます。

おじゃる