「"幸せ"って言葉は過大評価されてる気がするんだよね」ケナは韓国が嫌いで sugar breadさんの映画レビュー(感想・評価)
"幸せ"って言葉は過大評価されてる気がするんだよね
数年前に観た「ひと夏のファンタジア」には魅了されたが、今回のチャン・ゴンジェ監督の最新作もとても気に入った。
この監督は語り口がとても優しく上手い。
貧困、男尊女卑などステレオタイプに陥りやすい設定を過度に強めることはしない。ケナの家族は貧しいが典型的な家父長制家庭ではない。父親は勤勉で娘想い、母はケナに新居費用は要求するが毒親ではないし、ケナの彼氏にしても確かに儒教的思想は持っていそうだが、悪意はなくケナへの視線は常に優しい。皆どこにでもいる等身大の人間として描かれている。この塩梅が上手い。
ニュージーランドでは様々な人たちとの出会いを様々なエピソードで紡いでいく。高揚感や死を織り交ぜながら、現在と過去を行き来させる。この辺りの構成もとても上手い。
ラスト近くハンバーガーショプでの負け組の友人との会話(夢想)が印象に残る。「本当の幸せって、寒くなくて食べれること」「僕は日当たりが良くて、眺めがいいことかな」。
シンデレラのように劇的に何かがあるわけでもないし、起承転結や予定調和があるわけでもない。人生はそんなもの。でもニュージーランド出発前に比べたら、ケナの表情は明らかに穏やかになっている。これだけは間違いない。
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