フロントラインのレビュー・感想・評価
全456件中、1~20件目を表示
未来はわたしたちの「善意」で守れるかもしれない
2020年春。
あの日、連日ニュースで報道された「ダイヤモンド・プリンセス」の名。
見えないウイルス、未知の恐怖、混乱と情報の嵐──
その“内側”で命の最前線に立ち続けた人々がいたことを、私たちはどれだけ知っていただろうか。
映画『フロントライン』は、
日本で最初の集団感染が発生した豪華客船を舞台に、医療ボランティア組織「DMAT」の奮闘を、事実に基づきながらもオリジナル脚本で描いた、“記録”であり、“祈り”であり、“証言”のような映画です。
主演の小栗旬さんをはじめ、松坂桃李さん、池松壮亮さん、窪塚洋介さんと豪華キャストがそろい、特に久しぶりにスクリーンでしっかりと拝見した窪塚洋介さんの存在感には胸を打たれました。誰か一人が特別に立ちすぎているということもなく、それぞれの役者さんが、自分の“仕事”に誠実に取り組んでいる姿が伝わってきて、観ている私たちは物語そのものに集中できました。
正義や正解が見えない中、それでも前に進もうとする人たちの姿に、2時間という時間があっという間に感じられました。
2020年、豪華客船「ダイヤモンド・プリンセス」に突如持ち込まれた未知のウイルス。閉ざされた海の上で、混乱、恐怖、そして絶望が渦巻く中、最前線で立ち向かったのは、
我々と同じ、日常を持つ“普通の人々でした。
DMAT指揮官・結城(小栗旬)、厚労省の立松(松坂桃李)、現場に踏み込んだ医師の真田(池松壮亮)と仙道(窪塚洋介)、そして若き船内クルー羽鳥(森七菜)たち──
彼らに共通していたのは、
「目の前の命を救いたい」という静かで強い想いでした。どんなマニュアルにも書かれていない“人としてどうあるべきか”という問いに、それぞれの立場で、彼らは必死に答えを探し続けました。
あのパンデミックで、私たちは思い知りました。
食べること、眠ること、働くこと、学ぶこと、笑うこと──
当たり前の日常なんて、この世には存在しなかったということを。
それらすべてが、奇跡のように
誰かの働きや善意のうえに成り立っていたのだと。
医療者、食の現場、行政、報道──
あらゆる立場の“誰か”の懸命な行動が、誰かの命をつなぐ「盾」になっていたことに、改めて気づかされたのです。
はじめに立ち上がったのは、
たったひと握りの心ある人たち。
彼らの「利他の心」と「勇気ある行動」が、やがて周囲を動かし、私たちを救ってくれたのです。
希望とは、きっとヒーローなんかじゃない。希望とは、特別なスーツも、魔法もいらない。ただ「誰かのために」動くという、シンプルで力強い行動のこと。
それはいつだって、
一人ひとりの中にある「善意のかたち」をしている。
未曾有のパンデミックを体験した私たちにとって、
変わったのは、“人々の意識”であり
変わらなかったのは、“人としての本質”だと信じさせてくれる、静かで熱い作品です。
災害が多いこの国で、
日々、自分ではない“誰か”の命を最優先に考えて行動する人たちがいるということ。それはとても恵まれた事実であり、私たちが誇るべき日本の強さでもあります。
けれど、この作品はただ彼らを称えるためだけの映画ではありません。これは終わった過去の物語ではなく、日常の中の“続き”のひとコマ。
次に災害が起こったとき──
「あなたなら、どう行動する?」
そう、静かに、でも確かに問いかけてくるのです。
医者でなくても、官僚でなくても、
ただの“わたし”にも、できることがある。
たとえば、誰かを思いやる「小さな善意」
たとえば、学び、備えるという「意識」
それは、未来の私たちを守る「防護服」になるかもしれない。
「事実は小説より奇なり」──
この映画は、誰もが知っていて、誰もが体験した現実に基づいてつくられています。
だからこそ、誰の心にも静かに届く“本当の力”を持っています。
もしかしたら、
この映画を観ることこそが、
「善意の一歩」なのかもしれません。
どなたのココロにも届く
ぜひ、観ておきたい一本です🧐
私にこの真実を教えてくれてありがとう
この作品は、5年前、日本で初めて新型コロナウイルスの集団感染が発生した、豪華客船「ダイヤモンド・プリンセス号」のニュースを見た全ての人々が、当事者の視点で見ることができる作品だ。
過去様々な事件や歴史の『事実に基づいた作品』を見てきたけれど、自分が当事者となって見ることができる作品を見るのは生まれて初めてだった。それだけに感じるものがとても多く、衝撃が大きかった。
TVニュースに映る横浜港の豪華客船を見ていたあの日、その内部でこんなに複雑で困難なことが繰り広げられていたなんて、当時の私は全く知らなかった。知らないのをいいことに「なんでこんなに時間がかかっているんだろう」とすら思っていたように思う。そんな無知な自分が今は恥ずかしい。
私はどこかで、こういう誰もがやりたがらないことを、誰かがやらなければならない時、行動してくれる人がいることを軽く思ってしまっていたのかもしれない。
彼らのような名もなき人々によって、私たちの日常の平和はいつも守られていることを絶対忘れてはいけないと強く思った。
今後も、コロナや東日本大震災の津波、福島の原発事故のように、誰も経験したことのない危機が突然私たちを襲うかもしれない。そんなときに、疑い合ったり責め合ったりするのではなく、信じ合い、支え合える社会を築くためにも、この作品を通して“知らなかった自分”に気づき、心を動かされる人が一人でも多く増えてほしいと思った。
実話ベースの社会派映画、日本でももっと増えるといい
本作については当サイトの新作評論枠に寄稿したので、ここでは補足的な事柄をいくつか書いてみたい。
まず、「実話に基づく劇映画を、事象の発生からわずか5年余りで公開までこぎつけたことも、邦画界では異例の快挙」と書き、このタイプの映画がなかなか実現しない理由を「政治家や役人や大企業に忖度しがちな日本では往々にして、事故や事件が重大であればあるほど各方面への配慮や調整で長い年月を費やしたり、そもそも関係者の了解や必要な資金が得られず企画が頓挫したり」と説明した。これに付け加えると、医師、厚労省官僚、乗員といった主要な登場人物らの大部分を苦難に立ち向かうヒーローとして肯定的に描いたことも、関係者らから了解と支持を早期に得られた一因だろう。
これまで、実話ベースで社会派の邦画を比較的タイムリーに作るのは、製作・配給を手がけるスターサンズの独壇場というイメージがあった。松坂桃李がやはり官僚役だった「新聞記者」をはじめ、相模原障害者施設殺傷事件に着想を得た小説を映画化した「月」、ドキュメンタリーでも政治の問題に切り込んだ「パンケーキを毒見する」「妖怪の孫」などが挙げられる。一方、今作「フロントライン」、そしてNetflix配信ドラマ「THE DAYS」を手がけた増本淳プロデューサー(元フジテレビ所属、現在はフリー)のラインが確立してきたようで、こうした流れがさらに広がるといい。
また、評論では「ラスト・クルーズ」と「COVID-19 2つの大国の過ち」のドキュメンタリー2本についても触れた(これらはU-NEXTで配信中)。後者によると、武漢の当局が2019年12月の時点で未知のウイルスに感染した患者が大勢出ているのを把握しながら、めでたい国家的行事である1月6日~18日の人民代表大会が終わるまでこの事実を伏せ、20日になってようやく人同士の感染が確認されたと報告したという。もし中国の当局が早期に事実を公表し、各国に警戒と協力を真摯に求めていたら、ダイヤモンド・プリンセス号が香港で乗客を無防備なまま降ろすことはなかっただろうし、クルーズ中大勢の乗客たちが交流するイベントも自粛していたかもしれず、つまりは集団感染を防げた可能性があったのだ。
いろいろ理不尽なこと、腹立たしいこともあるが、前例のない災害、とてつもなく困難な異常事態に、不屈の精神と柔軟な対応力で最前線に立つ彼ら、彼女らのような存在がいることは大いなる希望であり、大勢の心の支えにもなるだろう。
今だからこそ知っておきたい「あの時に何が起こっていたのか?」。「常識との乖離の大きさ」に面白さがある!
本作は、2020年2月に日本で初めて新型コロナウイルスの集団感染が発生した豪華客船「ダイヤモンド・プリンセス」を舞台とした社会派実話映画です。
この事態が発生した後、まさに世界経済が大混乱に陥った新型コロナの脅威が増していきます。
連日大きなニュースになっていた日本の「あの時」を時系列を追いながら、医者、患者、マスコミ、行政など様々な視点を組み合わせて、実話に基づき分かりやすく提示しています。
誰もが未経験だった事態の中で生まれた大混乱から早くも5年が経過しました。
本作の最大の面白さは「常識との乖離の大きさ」にあるので当時のニュースをどこまで覚えているのかで満足度が異なるのかもしれません。
ただ、「あの時」を巻き戻して丁寧に描けているので、あまり当時を覚えていなくても問題ないでしょう。
次に何か大きな危機が起こった際に、私たちが冷静に考察・行動できる羅針盤のようなものが描かれているので今後にも役立ちそうな意欲作です。
コロナとは何だったのか
かなり真実に近い作品なのでは…
日本人として鑑賞する義務がある
コロナウイルスが未知のウイルスと言われていた時期に、恐怖と隣り合わせの中、クルーズ船内の閉鎖空間の中で最前線で医療活動をしたDMATの姿を描いた作品。
鑑賞前はDMAT vs コロナウイルスという構成が物語の中心だと思っていたが、実際はDMAT vs メディアという構成になっていた。
どんな時も現場で頑張っている人達の揚げ足を取り、都合の良いところだけ切り取って報道するメディア。その偏った情報のせいで世論から圧力を受ける現場。
その圧力とも戦っていたDMATの姿を、内面的な部分を重要視して描いた今作を、是非とも日本人全員に鑑賞して欲しい。
外から都合良く意見を言うのは誰にでも出来るし、責任が無いからこそ好き勝手な事を言える。しかし、現場では正論だけでは片付けられない事が次から次へと起こり、それを事細かく説明、説得していたら何も進まない。コロナというまだ対処法も分からず、マニュアルも無いな中で最善の選択をして来た彼らの行動を観て、いかに我々がメディア、マスコミの手のひらで踊らされていたが良く分かるようになっていた。
俳優達の演技も素晴らしかった。実力派揃いのキャスティングで、彼らの演技が現場の壮絶感をリアルに生々しく描ききれていたと思う。
演出としても一つの事案を長々と描き過ぎずに、テンポ良く展開していくシナリオはダレること無く、常に緊迫感を得られる内容になっていた。
選挙行こう!
愚かにして、偉大なのが「人間」。
コロナ関係のニュースを毎日報道していた時期が去って、コロナで苦しめられたことは急速に忘れつつある。今このタイミングで「ダイヤモンドプリンセス」号のドキュメンタリー的な映画を見せられても、面白いのだろうかという気持ちが少なからずあった。面白かった。「目から鱗が落ちる」とは、まさにこんなことをさしているのではないか。ただ事実を描くのではなく、物事の真実が伝わるエンタメ映画である。脚本がしっかりしており、ドラマ性も十分である。冷静に当時の事を考えられる今だからこそ見るべき映画である。
事件発生当時は大半の人が、「対応がまずい」「大勢の人を船に閉じ込めて感染を拡大している」といった報道をそのまま信じていました。未知のウイルスに対応が後手になり、多国籍の乗客への対応が難しく右往左往しているくらいのイメージを持ちました。不手際ばかりが印象付けられましたが、実際に対応された方々の奮闘を目の当たりにして、称賛と敬意しかありません。医療関係者、厚労省の官僚、クルーズ船のスタッフの使命感のようなものには心打たれます。それほど素晴らしい仕事をしたのに、当時はほとんど伝わっていなかったのは残念です。
それに対してマスコミの報道姿勢はかなり批判的に描かれています。マスコミは人々が今どんな情報を欲しているのかを敏感に察知して記事にします。対応がまずいという世論が大きければそれに沿った報道に傾くのでしょう。船内でウイルスを広げているのではないか、医療従事者は、所属の病院で感染源になっているのではないかという、我々の心配がそのままニュースになって偏見・差別につながります。誤った又は偏った報道であったのは確かですが、一方的に断罪するのではなく、報道の良心も描いていたのはとても良かったです。
この映画は「当時の一般的な見方」と「実際に起こっていたこと」のギャップを描いています。表面的に見えていることと、真実とは違うことは往々にしてあります。未知なるものへの恐怖心から不当に相手を非難することはあります。専門家は一面的な真実しか語りません。人間の愚かさと偉大さを両方感じられる作品でした。
今だから落ち着いて見られる
今思うとあのコロナ騒動は何だったのか…。そのようなことをしみじみと感じさせてくれる映画です。それは今コロナが5類になり,一応平穏と言える日常を取り戻したから思うことかもしれません。ただ,あのコロナ初期のころは,原因不明で感染=死というイメージがあっただけにあのダイヤモンドプリンセス号での騒ぎも仕方のないこととも思います。そんな中でまさにフロントライン(=最前線)にいた人たちの苦労を思うと頭が下がりますし,あの船の内外であのような命がけの対応があっていたかということに気付かされました。
その一方で大衆を扇動するマスコミという描き方も扇情的ではありますが,事実に近いものがあるかもしれません。世論を形成しているのはマスコミというのがよく分かる映画でもあります。
新型ウィルスとのファースト・コンタクト・・・それは様々な問題提起!
新型ウィルスとのファースト・コンタクト・・・限られた期間・条件の中でフロントラインがどのように乗り切ったか?
実際対応された方々はかなり大変なご苦労があったと思うが、客観性を重視しているのだろう・・・起こった事象と対応をかなり分かりやすくスマートに創られている。
そういう意味で実力あるキャストで構成されたのも頷ける。
本作は取材された事実に基づいているが、DMAT隊員、クルーズ船クルーや派遣された厚労省官僚が、悩み、足掻き、葛藤しながらも、フラグを必ず人道に沿った方向に倒していく姿勢が嬉しいし、希望が持てた。
情報が集まるフロントラインで「命」と向き合った方々は「自律&闊歩」の手段しか選べず、いかなる法、慣習、官職、権威なども無力にならざるを得ない。
劇中の上野に対する結城の回答・・・
「日本には・・・アメリカのCDCのような感染対応を専門とした組織がありません。災害時に完璧な感染防御をしようとすれば、治療開始までは数日かかるでしょう・・・その間に何人かの乗客は亡くなることになります。わたしは完ぺきではなくても、船内で怯える3700人にいち早く医療を提供したいと・・・そう思いました。限られた選択肢の中では最善の対応だったと思っています」
・・・「やれることは全部やる」を全うするとこの答えしかないし、危機管理・対応の根本とも言える。
逆に情報が手に入らないメディアを含む傍観者は、状況を想像することしかできなかった。
日常でも膨大な情報や「空気を読む」ような風潮はいつでもある。
個々のプリンシプルが如何に大事か?
自律&闊歩することで「オトナ」が何を後進に伝えるのか?
受け取り方はそれぞれだが、様々な問題提起を示唆する作品になっている。
意識しなくてもオトナになれば子どもの目に映る。
子どもはオトナが子どもを見る以上にオトナを見ている。
厚労省を含む行政機関、SNS、マスコミや誹謗中傷の件も含め、社会の良い警鐘になることを願いたい。
取材メモをしたため、企画・脚本・プロデュースしてくれた増本淳氏、出演者、スタッフに感謝します。
現場の医療従事者達に頭が下がります。
胸が震えました
金曜日のレイトショーで観てきました。
これはおもしろかった!
映画というより、ドキュメンタリーの色が濃いかもしれないけど、心を震わす作品です。
むろん、全てがそのまま事実ではないにしろ…
本編最後に注釈が出た通り、演出の為に多少の改変はあるにしろ…
得体の知れない未曾有の疫禍に、大勢の方々が悲痛な覚悟をもって本気で対応にあたったという事実に、感動とも異なる「胸の奥の震え」を感じました。
小栗旬も、もちろん良かったのですが・・・
松坂桃李の厚労省官僚と、窪塚洋介の船内対応を仕切る医師が、最高にかっこよかった!
あと、下船した客を受け入れる医大の医師。
複雑な感情を抱きつつも全力で対応する医師を、滝藤賢一が好演。
こちらもシビれました。
森七菜も、船客の心に寄り添うクルーを素敵に演じてました。
「本当に喋れるのか⁉︎」というくらい流暢な英語を披露してました。
いろいろ低く見られがちだけど、私には好きな女優のひとりです。
これ、多くの方に観てもらいたいな。
ドキュメンタリーとしても興味深く、素晴らしくおもしろいし、災禍に際して如何に民衆が無責任で浅はかな馬鹿騒ぎをするのかを、確認する良い機会になると思います。
ルール無き現場@pandemic
テーマは「怒り」か。衝撃作というより怪作。初の星5。
近年、ここまで骨太な映画を見たことがありません。
日本におけるコロナは事実上この船から始まったわけで、日常を取り戻したといってもいいこのタイミングで本作が投げかける問いは、非常に重要であると感じます。
製作陣の覚悟が見えるのが、何よりそのコンセプト。
船名である「ダイヤモンドプリンセス」に代表されるように、事実に基づいて、個人名など機微に触れる部分や象徴的に描いた社名(「中央テレビ」)等以外は基本実名で登場させるあたり、生半可な製作ではないことが実感できます。
その上でさらに凄いのが人々への踏み込み。
登場人物のセリフや映像描写を通し、メインからサブまで、権力の有無に関わらず、各々の立場と行動に次々と疑問を投げかけ、時に明確に否定します。
人権やコンプライアンスが声高に叫ばれる昨今、自己批判を含めここまでやれるのかと驚かされました。
いずれもその背景として、未知のウイルスに対してだけでなく、国の制度や各種団体のありように加え、世の中を支配する空気に対しての行き場のない「怒り」を感じさせるとともに、この事案に本気で向き合っているからこその描写として圧倒されました。
一部では「衝撃作」と評価されているようですが、個人的に「怪作」と言っても過言ではないと思います。
映画としてはDMAT側の観点で描いているため、見方によっては一面的に見えるかもしれません。
例えば船が横浜に入港するまでの経緯や一旦沖に出ることに関しても様々な闘いや葛藤があったことでしょう。
特に後者は作中「水が足りない」「給排水のため」で片付けられ、患者搬送の時間的制約としてのみ描かれていますが、船が何を排水するのかを考えれば、単純な水の入れ替え以上に、それ自体もいかに大変な話であったかがわかるはずです。
それでも、本事案を医療対応としての視点から見る事実として一見の価値ありで、ここからコロナに巻き込まれていった日々を想像しつつ「あの頃は大変だったね」ではなく、次に備える意味で何が必要なのかを考えさせられる映画でした。
あの日々に少しでも思いがある方は是非早期に鑑賞されることをお勧めします。
やれることは全てやった、そして人々は家に帰ることができた
1 豪華客船内で発生した新型コロナの集団感染に立ち向かった人々の実話を描く。
2 本作は、未曾有の出来事に信念と責任感を持って立ち向かい、無事切り抜けた事実を基に、優れた人間ドラマに仕上がっていた。映画では、災害発生時の救急医療の専門家集団(DMAT)のリーダー(小栗旬)と現場責任者(窪塚洋介)、そして厚労省の役人(松坂桃季)の三人を物語の中心においた。この三人の関係性は、課題が発生する度に、より緊密になり互いの信頼とリスペクトが増していった。この三人体制がしっかりしていたことで、密度の濃い集団劇となった。
3 エピソードでは、乗客の夫婦や兄弟の絆の強さを現す描写は胸を打たれた。また、エピソードではないが、今回、松坂が演じた厚労省の役人が小栗が要望することの足枷となる法律上の手続きを超法規的に柔軟に対応し続けたことを始めて知った。人としても優秀だと感心した。演出では、テンポが良かった。何より冒頭から一気に物語に没入させる入りの良さがあった。
3 俳優では、会議室で待機しながら焦躁と苦悩を一手に引き受けた小栗は見事に演じた。その小栗を理解し行動した窪塚と小栗に寄り添った松坂も立派だった。加えて、淡々と医療を施した池松壮亮や分をわきまえながら必死で頑張った森七菜、ぼやきながらも緊急対応した滝藤賢一は持ち味を発揮していた。
あのころ私は
とうとうコロナ禍がフィクションの題材として扱われる時期に来たか…としみじみ思いつつ鑑賞。
これまでももちろん、サンセット・サンライズのように少し皮肉的にコロナ禍のドタバタをちょこっと描くものはあったが、
本作のように真正面から、コロナによって健康や命を奪われる人もきちんと出てくるドキュメンタリー的なフィクションとして扱うものは、映画やドラマではこれまであまりなかったように思う。
やっとコロナ恐慌が過去になりつつあるのかなと感じた。
本作が題材とした豪華客船にまつわるニュースは、よく覚えている。毎日あれだけメディアで扱われていたのだから。
でも、全く理解も想像も及んでいなかったことを、この映画を観て思い知らされた。
ダイヤモンド・プリンセス号から感染を広げないために、どれほとの人々が尽力・奔走したのか。当時の私は多分なんとなく、数十人くらいを想像していたと思うけど、大ハズレだった。
客船のスタッフ、県庁や市役所の職員、政府関係者・官僚、必要物資の運送、隔離のための宿泊施設への移動、陽性者が搬送された医療機関のスタッフ、そしてそれら中核で奔走していた人たちの家族。何百人…いやもしかしたら何千、何万もの人たちが、大小さまざまとはいえ、何かしらの形で関わっていたんだろう。
そんなこと、全く理解できていなかった。
当時の私は、自宅保育中の幼児を育てていたこともあり、とにかく「コロナ怖い、こっち来ないで…」と祈り願いながらニュースを見ていた。
完全に「外側」にいた。
そんな私が、5年以上の歳月を経て、あのころ「内側」の最前線で必死に働いていた人達のことを、この映画によって、やっと思いを馳せることができた。
もうそれだけでも私にとっては痛いほど強い意義がある。
ダイヤモンド・プリンセスには外国人も乗っていたことは知っていたけれど、言葉の通じない状況で未知のウイルスに対応しなければならない大変さ(乗客も医療従事者も)には思いが及んでいなかった。
せめて乗客乗員全員日本人なら、もっとスムーズに意思疎通でき、コンパクトな感染対策もできただろうけど、言葉どころか文化背景も異なる乗客たちに、日本の公務員が対応をしなければならなかったこと。その困難は察するに余りある。
私はそうやって必死に守られた日常の上で平穏に安穏と過ごしていたのだと、知ることができ、省みることができて、本当によかったと思う。
新たなパンデミックも、きっといつか起こるだろう。
そのときまで、この映画から得た感情を、忘れずにいたいと思う。
医療従事者の方々に感謝
見れてよかった映画。見る前は少し舐めていた。感動系のお涙頂戴だろうと決めつけて見に行ったが、まぁそればかりではないというか。あの時にあの船の中で起こっていた事は単純に知らなかったので勉強になった。医療従事者の方たちには本当に感謝しかない。あとは、こんな人達が我々国民のために頑張ってくれていた感動系映画かと思ってたらその話は物語の中心にあるものの、それとはもう1つこの作品内で描かれていた事があった。というよりメッセージに関してはそっちが中心。そうです、メディアのあり方です!報道の仕方が間違ってると何も知らない我々は誤解して受け止めてしまう。感動系のいい話だけの映画ではなくて、ちゃんと社会への風刺がきいた、とてもメッセージ性の強い素晴らしい動画。このタイミングで見られてよかった。
全456件中、1~20件目を表示
映画チケットがいつでも1,500円!
詳細は遷移先をご確認ください。