劇場公開日 2025年6月13日

「愚かにして、偉大なのが「人間」。」フロントライン ガバチョさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0愚かにして、偉大なのが「人間」。

2025年7月13日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

コロナ関係のニュースを毎日報道していた時期が去って、コロナで苦しめられたことは急速に忘れつつある。今このタイミングで「ダイヤモンドプリンセス」号のドキュメンタリー的な映画を見せられても、面白いのだろうかという気持ちが少なからずあった。面白かった。「目から鱗が落ちる」とは、まさにこんなことをさしているのではないか。ただ事実を描くのではなく、物事の真実が伝わるエンタメ映画である。脚本がしっかりしており、ドラマ性も十分である。冷静に当時の事を考えられる今だからこそ見るべき映画である。
事件発生当時は大半の人が、「対応がまずい」「大勢の人を船に閉じ込めて感染を拡大している」といった報道をそのまま信じていました。未知のウイルスに対応が後手になり、多国籍の乗客への対応が難しく右往左往しているくらいのイメージを持ちました。不手際ばかりが印象付けられましたが、実際に対応された方々の奮闘を目の当たりにして、称賛と敬意しかありません。医療関係者、厚労省の官僚、クルーズ船のスタッフの使命感のようなものには心打たれます。それほど素晴らしい仕事をしたのに、当時はほとんど伝わっていなかったのは残念です。
それに対してマスコミの報道姿勢はかなり批判的に描かれています。マスコミは人々が今どんな情報を欲しているのかを敏感に察知して記事にします。対応がまずいという世論が大きければそれに沿った報道に傾くのでしょう。船内でウイルスを広げているのではないか、医療従事者は、所属の病院で感染源になっているのではないかという、我々の心配がそのままニュースになって偏見・差別につながります。誤った又は偏った報道であったのは確かですが、一方的に断罪するのではなく、報道の良心も描いていたのはとても良かったです。
この映画は「当時の一般的な見方」と「実際に起こっていたこと」のギャップを描いています。表面的に見えていることと、真実とは違うことは往々にしてあります。未知なるものへの恐怖心から不当に相手を非難することはあります。専門家は一面的な真実しか語りません。人間の愚かさと偉大さを両方感じられる作品でした。

ガバチョ
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