劇場公開日 2025年6月13日

「あのころ私は」フロントライン romiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5あのころ私は

2025年7月10日
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鑑賞方法:映画館

怖い

知的

驚く

とうとうコロナ禍がフィクションの題材として扱われる時期に来たか…としみじみ思いつつ鑑賞。
これまでももちろん、サンセット・サンライズのように少し皮肉的にコロナ禍のドタバタをちょこっと描くものはあったが、
本作のように真正面から、コロナによって健康や命を奪われる人もきちんと出てくるドキュメンタリー的なフィクションとして扱うものは、映画やドラマではこれまであまりなかったように思う。
やっとコロナ恐慌が過去になりつつあるのかなと感じた。

本作が題材とした豪華客船にまつわるニュースは、よく覚えている。毎日あれだけメディアで扱われていたのだから。
でも、全く理解も想像も及んでいなかったことを、この映画を観て思い知らされた。
ダイヤモンド・プリンセス号から感染を広げないために、どれほとの人々が尽力・奔走したのか。当時の私は多分なんとなく、数十人くらいを想像していたと思うけど、大ハズレだった。
客船のスタッフ、県庁や市役所の職員、政府関係者・官僚、必要物資の運送、隔離のための宿泊施設への移動、陽性者が搬送された医療機関のスタッフ、そしてそれら中核で奔走していた人たちの家族。何百人…いやもしかしたら何千、何万もの人たちが、大小さまざまとはいえ、何かしらの形で関わっていたんだろう。

そんなこと、全く理解できていなかった。
当時の私は、自宅保育中の幼児を育てていたこともあり、とにかく「コロナ怖い、こっち来ないで…」と祈り願いながらニュースを見ていた。
完全に「外側」にいた。
そんな私が、5年以上の歳月を経て、あのころ「内側」の最前線で必死に働いていた人達のことを、この映画によって、やっと思いを馳せることができた。
もうそれだけでも私にとっては痛いほど強い意義がある。

ダイヤモンド・プリンセスには外国人も乗っていたことは知っていたけれど、言葉の通じない状況で未知のウイルスに対応しなければならない大変さ(乗客も医療従事者も)には思いが及んでいなかった。
せめて乗客乗員全員日本人なら、もっとスムーズに意思疎通でき、コンパクトな感染対策もできただろうけど、言葉どころか文化背景も異なる乗客たちに、日本の公務員が対応をしなければならなかったこと。その困難は察するに余りある。

私はそうやって必死に守られた日常の上で平穏に安穏と過ごしていたのだと、知ることができ、省みることができて、本当によかったと思う。

新たなパンデミックも、きっといつか起こるだろう。
そのときまで、この映画から得た感情を、忘れずにいたいと思う。

romi
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