「客船を舞台に医療従事者たちがウイルスに挑む聖戦」フロントライン kazzさんの映画レビュー(感想・評価)
客船を舞台に医療従事者たちがウイルスに挑む聖戦
事実に基づいているとはいえ、 基本的には未知のウイルスに立ち向かう人々をヒーローとして描いたエンターテインメントだ。演出の断りを最後に表示しているとおり。
実際、あのコロナ禍で治療に従事した医療関係者らには感謝しかない。自らの感染リスクも承知で尽力した崇高な人々。
だが、それと映画の評価は別物。あくまで劇映画として評価すべきなのだが、その点でみても充分に面白い映画だった。
綿密な取材によって明らかになった事実を社会派ヒーロー物語に再構築していて、そのアレンジがよくできていると思う。
医療従事者やこの物語で言えば客船のクルーたちが、そして彼らの家族が、当時どのような視線を浴びていたのかをこの映画は思い出させる。母親が看護師で病院勤めをしている子供が保育園に行けなくなったという話は、私のごく身近でも聞かれた。
病気を恐れるあまり、発病者とそれに近い人々まで差別する行為が社会現象化する現実は、我々人間がいかに成長しない生き物なのかを表していると思う。
この映画は、悪く言えば登場人物をステレオタイプに端的に集約していて安直な印象を受ける。
良く言えば単純明快に人物像が構築されていて感情移入しやすく、勧善懲悪物語に没入させてくれる。
テレビプロデューサー役の光石研がほぼ一人で悪役を引き受けていて、悪役とまではいかないが、お騒がせの感染症権威を吹越満が演じている。このお二人の演じぶりは我々観客を決して裏切らない。日本の映画・テレビドラマを支える貴重なお二人だ。
ここで描かれているほど、テレビ報道が面白おかしく煽り立てたという印象はないが、真面目に報道していたはずのテレビも実際の現場には入り込めていないから、現場の当事者から見るといい加減な憶測報道だと受け止められる部分もあったのかもしれない。ネット上の報道というか出所不明の情報も、作劇としてこのテレビ報道に集約したのだろう。
主演の小栗旬と松坂桃李のバディぶりが観ていて心地よくて、間違いなくこの映画のヒーローなのだが、最大の収穫は窪塚洋介だと思う。彼がこんなにいい役者だったとは。
DMATの統括責任者である小栗旬は、病院経営者・役人・マスコミの対応をしながら現場の状況を把握して指示を出さなければならない複雑な立場だ。
一方、客船に乗り込んで現場で直接指揮をとる窪塚洋介は、自分たちが立ち向かわなければならないのは感染者でありウイルスだという明確な姿勢を示すのだ。抑揚の少ない渋いトーンでしゃべる彼のセリフ回しが強い意志を表していて、時に上司である小栗旬の迷いを断ち切らせる示唆を与えて、実にカッコいい。
松坂桃李は直前にテレビドラマ「御神先生」で文科省の官僚を演じて高評価だったばかり。本作ではそれを踏襲したかのように厚労省の官僚を演じている(撮影はどっちが先だったのか知らないが)。冷静沈着で、破天荒なこともサラリとやってのけるクールな切れ者風でありながら、芯に熱いものを持っている感じがよく出ていた。
終盤で登場する滝藤賢一も重要な役を担っている。客船の乗客の隔離場所として提供された開業前の病院の医師で、受け入れてみると事前情報よりもはるかに悪い実態だったことで憤るのだが、乗客たちの夜間移送に同行して来たDMATの医師池松壮亮の苦労は、本人から聞かなくても推し量ることができる人物なのだ。
台風一過、二人が缶コーヒーを手に会話する場面に、プロフェッショナルの使命感と共感が滲み出ている。
子ども連れで客船に乗船していた母親役に、美村里江。ミムラって改名してたのね…。
共感ありがとうございます。
暫く、こちらのサイトから消えていましたが、
ようやく、映画.comIDへの引継ぎが完了して復活しました。
レビューの大切さを再認識できました。
良い勉強になりました。
今後ともよろしくお願いします。
では、時間は映画談義をしましょう。
失礼しました。
ミムラ改名で締めてたレビューを読んだ記憶かあるのですが、レビューが590もあるので確認出来ません。お騒がせして申し訳ありません。今後ともよろしくお願いします。
共感・コメントどうもです。
同じ作品に二度投稿出来ませんよね。鑑賞から2ケ月たっていたのとミムラ改名に触れた部分に既読感が有ったので。(最近、別作品で私のレビューが削除にあって再投稿したので、それも頭にあったかも)