「俳優良い、面白い大作だけど」フロントライン tatataさんの映画レビュー(感想・評価)
俳優良い、面白い大作だけど
当時ダイヤモンド・プリンセス号に乗り込んだ災害派遣医療チームや医療関係者、乗務員には感謝しかないことを第一に言いたい。
しかし、DMAT(知っている人)は「善」、マスコミと世間(よく知らない人)は「悪」
という映画の構図には違和感を感じる。
ただでさえ、複雑な事象を扱うのに「善悪の二項対立」を描いたので、
子ども向けの映画になってしまった。
批判と非難を混在して脚本にしてしまう安っぽい映画だと思う。
安っぽい「善悪の二項対立」が気にならないほど、面白く描いてほしい。
脆弱な日本の医療体制や想定・準備不足の体制を批判、マスコミ批判した映画を見に行くと思えば、いい映画だと思う。
未知の事態や想定外の出来事に対応する題材として、
原爆や地下鉄サリン事件、震災、福島第一原発がある。
それらを題材とした映画やドラマと比べても緊張感が弱い。
緊張感の弱さから映画に入り込めない。
船内から助けを求めるメッセージを掲げる乗客を軽くあしらうシーンや
桜井ユキ演じるテレビ記者が小栗旬演じるDMATリーダーを船から降りたところで取材を求めるするシーンは、酷すぎて見てられない。
後半、小栗旬演じるDMATリーダーが桜井ユキ演じるテレビ記者を呼び止め取材に応じるようになった時の感情の動きがよく分からない。
予習なして見に行ったが、
吹越満演じる六合承太郎のモデルと思われる岩田健太郎さんを「悪」として演出したい意図を感じたが、そこまで一方的な「悪」とは思えなかった。
普段は、あまり気にするところじゃない、細かいところが気になって頭に入ってこない。
美村里江演じる糖尿病の持病を抱え幼い息子を持つ乗客や
滝藤賢一演じる乗客の隔離を受け入れた医師、
親と離れ子どもだけで隔離された西洋系の兄弟など
これらはただただ事象を紹介するだけになり、俳優さんが可哀そうだった。
それでも、初期に夫が感染し知らない土地での出来事に混乱する妻の外国人乗客の夫婦や
後半にコロナに感染した東洋系の乗務員には心がジーンとした。
こんな映画でも窪塚洋介や池松壮亮がいるだけで、
映画の雰囲気を良くしてくれるから名優だと思った。
あくまで、DMATや乗客乗員の目線で描いた映画にしてほしかった。
安っぽい脚本・演出、「大作風」なんていらない。
続編でいい映画にしてほしい。