「限定的な場を描きながら、普遍的な問いを投げかける」フロントライン sow_miyaさんの映画レビュー(感想・評価)
限定的な場を描きながら、普遍的な問いを投げかける
「事実に基づく物語」と謳いながら、演出が過ぎるような印象を抱いてしまう映画もある中、今作は、紛れもなく「事実に基づいた」誠実なつくりがなされていたことが、エンドロールのクレジットからも読み取れるし、制作に関わったすべての方々に敬意を表したい。
まさしく「フロントライン」にいた当事者たちの体験した「事実」の迫力に圧倒された。
映画が、限定的な「未知のウィルスと闘ったあの時のダイヤモンドプリンセス号」を描きながらも観客に問いかけてくるのは、普遍的な価値観や人権意識や倫理観などの問題だった。
自分は「見えない部分を安易に断じないこと」「その場で最も優先すべきものを見誤らないこと」等の大切さを受け取った。
結果のどこを見て何を言うのか、結局は、言った人間の人間性にすべて跳ね返ってくる。
小栗旬が悔やむシーンがあるかないかの差は、この映画の肝の部分の一つだったと思う。
窪塚洋介が素晴らしい。役柄もいいのだが、彼自身がまとっているブレない感じが、凄まじく説得力をもって迫ってくる。
また、桜井ユキも、こんなに表情だけで雄弁に語れる役者だったのかと驚かされた。
小栗旬、松坂桃李、池松壮亮は言うまでもなく、間違いなし。
<ここからは、内容に少し触れた個人的な感想>
軽症の陽性者が、藤田医科大学病院へ移送されるシーンで、急性増悪の患者が出てくる。
サチュレーション81というセリフがあって、呼吸器障害での入院経験者としては、改めて新型コロナって怖い病気なんだなと感じた。
酸素10Lなんて声も聞こえてきて、聞いているだけで息苦しさを覚えたが、コロナ禍の経験から得られた感染症対策の知見は、社会全体で大切に共有していってほしいと思う。
健康な人には、「コロナは風邪」かもしれないが、自分も含むリスクの高い人にとっては「死に至る可能性のある病」なので。
共感ありがとうございます。サチュレーション81は凄いですよね。私は父も母も見送りましたが(コロナではない)死に際でも90を切る数字は見たことはありません。
映画チケットがいつでも1,500円!
詳細は遷移先をご確認ください。