劇場公開日 2025年6月13日

「無上霊宝 神道加持」ドールハウス かなり悪いオヤジさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5 無上霊宝 神道加持

2025年11月30日
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ドール系ホラーが来ている。『チャイルドプレイ』に『アナベル・シリーズ』、直近の『M3GAN』なんかも変化球ではあるけれど、このジャンルにおさめても差し支えないだろう。コメディ映画監督として実績のある矢口史靖がちゃんとした劇場版ホラーを撮ったのは、おそらく本作がはじめてだったのでは。「バカにされないよう、冒頭からガツンといった」と語っていたヤグっちゃん。愛娘の死体をドラム式洗濯機の中に見つけた長澤まさみの絶叫が、しばらくトラウマとして耳に残りそうな1本である。

いわゆる悪霊が子供の人形に乗り移って悪さを働くよくあるパターンのホラーなのだが、実は目をそむけたくなるゴアなシーンはほとんど登場しない。死んだマイちゃんの代わりに骨董市で見つけた人形礼(あや)ちゃんが、突然食卓の席に座っていたり、いつのまにか夫婦のベッドに潜り込んでいたりすることに気づいて、反射的にビビりまくる長澤まさみやその夫役瀬戸康史につられて、観ているこちらも思わず腰を上げてしまう受身型ホラーなのである。

チャッキーやM3GANが、ナイフ片手に大人たちに襲いかかるゴアなスプラッターではなく、一見何気ないオカルトハンターの失敗動画や赤ちゃんの首に巻き付いた髪の毛、子供の背中についた引っ掻き傷や腕の歯形跡で、礼ちゃんのヤバさを観客に連想させる間接演出がなかなかなのだ。もしかしたら、すべては子供の死を自己責任と感じている長澤まさみの錯乱が産んだ自作自演だったのでは、とも解釈できる“まいめい”もとい“曖昧”な演出がいかにも邦画っぽいのである。

肝心な場面で大怪我をして、致命的ともいえる判断ミスで夫婦を地獄に導くなんちゃってエクソシスト役田中哲司のダメっぷりも斬新だ。悪霊礼ちゃんが実質その手にかけて死に至らしめたのは、アホな清掃作業員役1名という控えめな数字が、実人口3.2億、経済成長率-12.3%、若者失業率40%以上という現実を隠ぺいするためゲタをはかせまくっているC国とは違って、非常に良心的。登場人物がガチで戦えば戦うほど、昨今それを観ているこちらがシラケてくることを、ヤグっちゃんはよくご存知なのである。

そもそもこの礼ちゃん、瀬戸康史と長澤まさみ夫婦の子供になりたかったわけで、別に二人を殺める気などはなっから無かったはずなのだ。身体が弱かったせいで実の母親には虐待され無理心中まで…そんな母親とは正反対の長澤ママはちょっと過保護過ぎたのが原因で、愛娘を事故死させてしまう。心の中で自分を攻めながら「次は人形のようにおとなしい子を」と深層心理ではそう願っていたのかもしれない。自己都合の虐待や過保護でやりたい放題の親たちに復讐するためには、礼ちゃんのように“呪い”を使って親を選ぶ以外に術はないのかもしれない。

かなり悪いオヤジ
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