劇場公開日 2025年6月13日

「子供より顔が小さい長澤まさみに恐怖する」ドールハウス モアイさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5 子供より顔が小さい長澤まさみに恐怖する

2025年8月24日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

悲しい

怖い

いつもの事ながら利用期限が迫ったU-NEXTのポイント消費のためというケチくさい理由で劇場へ足を運びましたが、今回は更に暑さと眠気と、うかっり見始めてどハマりした「ゲーム・オブ・スローンズ」(11年~19年)の続きが観たいという欲求に負けて結局休日は外出しなかったため、平日の行ける時間に上映されていたのが本作だけだったというかなり低いモチベーションでの鑑賞です。

それにしても公開から結構日が経つのにまだ上映が続いていたことと、平日の21:30からの上映なのに、公開してすぐ観に行った「メガロポリス」(25年)よりもお客さんが入っているのには驚きました。しかも若いアンちゃん2人が連れだって観にきているではありませんか…それも2組も…。若い男が連れだって観にくるような映画かよ?と一人で観にきているおっさんが言えた事ではないだろうと思われるかもしれませんが、おっさんには長澤まさみを見るという大義名分があるのです。

という事で長澤まさみっぽくない長澤まさみのポスターが印象的な本作。映画の序盤では縦縞、横縞、とにかくシマシマを着る長澤まさみ。何故シマシマの服を着るとこんなにママさん感が出るのか?分からなすぎて先ず怖い。次に小さな子供を抱き上げる長澤まさみの顔の小ささ!子供は頭が大きいものですが、それにしても子供相手に顔を並べて小顔を際立たせてくるのがもう怖い!そしてホラー映画ってそんなもんだろと言わんばかりにここぞというところで異様に力を込めて台詞を吐く長澤まさみ。いくらホラー映画とはいえいささか加減を間違えているような力感に思わず吹いてしまうのです。思えば長澤まさみはかつて「都市伝説の女」(12年・13年)とかいう罰ゲームの様なドラマに出ていたことを脈絡もなく思い出し嫌な汗が滲みます。

それはともかく、ご近所さんの子供を預かっているのにおやつを買いに出る長澤まさみ。いやはじめから今日はお子さん預かる日って決まってたんだろうからあらかじめ買っておけよと思いつつも、出かける前に刃物は子供の手の届かない所へ隠し、ガスの元栓を閉め、お風呂の水がはられていない事を確認する長澤まさみ。小さい子の面倒をみるのって色々気を使わなくちゃならなくて大変だなぁ~と感心しつつも鍵を掛けずに出かける姿に違和感を抱きます。そして鍵は掛けなかったもののあれだけ用心していたのに留守中にとんでもない事が起きてしまい、洗濯機を新型にさっさと買い換えなかった事を後悔する長澤まさみ。未だにタテ型を愛用している自分はドラム式なら全部新型という認識なので長澤まさみの後悔の理由がよく分からないのですが、ともかく以降、洗濯機がトラウマとなり洗濯物は手洗いする長澤まさみ。洗濯板くらい使えよとつい思ってしまいましたが、洗濯板で洗いものする長澤まさみは見たくない気もするのでこれが正解かと納得してしまうシーンです。

そんなある時まるで運命に引き寄せられるように礼ちゃん人形と出会い、家へ連れ帰る長澤まさみ。夫役の瀬戸君が帰ってくると当たり前の様にダイニングに座っている礼ちゃん人形のシーンが一番ゾッとしたのですが、とにかく礼ちゃん人形が私の想像していたものよりもずっとデカい!そのデカさに思わず吹いてしまい、それ以降怖さより可笑しさが先行してしまいました。(このデカさにもちゃんと恐ろしい理由がある訳ですが…)いやそれにしてもですよ、精神的にまいっている長澤まさみはともかく、明らかに“いわく付き”の礼ちゃん人形(のケース)を見ても気味悪がるそぶりも見せずに笑っている瀬戸君も結構不気味です。(映画の結末を知ってから思い返すとこの夫婦には何か“適正”の様な物があった気がするのがこの映画の妙かも知れません。)
まぁとにかく、そうして一緒に外出したり、写真撮りまくったり、わざわざ礼ちゃん人形分の食事も用意したりと実の子供のように可愛がる長澤まさみなのですが、ある出来事を切欠に礼ちゃん人形への興味を急速に失っていき、昔より滑舌の良い気がする義母役の風吹ジュンも含めて礼ちゃん人形の扱いが途端に雑になるその落差が余りに極端。乱暴にゴミ袋に入れて捨てる。問答無用でボコボコに殴る。モップで押しやる等々、何もそこまで…というその扱い様に何とも言えない可笑しさを感じてしまうのです。そもそも人形(特に日本人形やフランス人形)って特にいわく付きじゃなくても何となく丁寧に扱わないと祟られそうで怖い気がするのですが、そういう情緒がちょっと欠けてる気がしてイマイチ映画に入っていけませんでしたね…。
さらにお焚き上げをやっている寺の坊様が「自分の手には余るので専門家を頼ってください…」と言うのに対してあまりに真っ当なツッコミを入れる瀬戸君。礼ちゃん人形に対してそこに愛はあるんか?と問いたくなるような扱いをし『バチでも宝クジでも当ててみろってんだ!』という名言を吐く今野浩喜や本人の言うようにこれからという時に離脱する田中哲司のトホホ感。不遜な態度で明らかにこの後酷い目に遭う気配ムンムンで本当に期待を裏切らなかった安田顕。「さがす」(22年)で変態ポルノコレクターを演じていた人が本作では人形コレクターとして登場し、礼ちゃん人形を見たい(何なら引き取りたい)とかいう話だったのにいざ対面すると「持って帰って……」と、何のために出てきたんだコイツは…という調子で中盤から終盤の入り口あたりにかけて猛烈に濃くなるコメディ臭。鑑賞後に本作の監督のフィルモグラフィを見てみると、なるほど私は見た事ないのですが名前を知っている作品がこんなに!しかもコミカルなイメージの作品群で納得です。
ただの偏見以外の何物でもありませんが、コメディで名をあげた自分が何まともに恐怖映画撮ってるんだ?という監督の照れ隠しのようなコメディ要素からは、カットがかかるたびに役者が笑顔になって談笑している和やかな撮影現場の風景が透けて見えてきそうなのです。そしてあまりに清潔感のある映像。映画を観ていてイヤだなぁ、ここには居たくないなぁと思わせるような生理的な嫌悪感を催す映像ではないんですよね。何かとてもツルツルピカピカしていて清潔感があります。長澤まさみも泥だらけになりますが不思議と見ていて「やだ、バッチィ~」と顔をしかめてしまうような映像ではないので、あまり見ていて居心地の悪さの様な物は感じませんでした。買ったばかりの牛乳がヨーグルト化していたのは地味だけど確かに一番イヤだなぁ~と思いましたが、そのセコイ嫌がらせをしてくるところも自分としては可笑しさに繋がってしまったんですよね。

ただ本作の恐怖演出はオーソドックスながらとても良かったように感じます。不意に視線を横切る何か。Aだと思っていたものがAではなかった時のゾクッと感からのそれではコチラのBは一体何なのか?実は察しているけれどそれを認める事の怖さ。けれど確認しなくては…というドキドキ感はとてもよくできていたと思うのです。そして本作の清潔感のある映像を私はネガティブな要素として挙げましたがそれは人によっては別にネガティブな要素ではないでしょうし、他にも上品な作品雰囲気、特にダレる事のないテンポの良さに、オチも個人的には好きですので、散々言った割にはそれ程ダメだとか駄作だとかは思っていない何とも納まりの悪い感覚になる映画なのです。

漫画家の故・楳図かずお先生がかつて「ホラーとコメディは表裏一体なんです」みたいなことを言っていましたが、私の場合はホンのちょっとした切欠でこの映画にコメディを見出してしまいましたが、まぁそもそも冷やかし同然の心持で観に来た事が本作をホラー映画として捉えきれなかった事の大半の原因だと思いますので、やはり映画見るのにも体調管理と積極的に楽しむ姿勢って大切だなと反省させられる今回の鑑賞体験なのでした。

モアイ
モアイさんのコメント
2025年8月29日

うつぼざるさん、はじめまして。
こちらに返信しつれいします。

洗濯機の件、なるほどそれを知ると身近なところに潜む恐ろしさをきっかけに物語を展開させた脚本の、目のつけどころの良さに気付かされます。ありがとうございます!

モアイ
うつぼざるさんのコメント
2025年8月28日

初めまして。
縦型洗濯機の古いタイプは映画の中同様子供が入って閉じ込められて死ぬ事故が多発したために今の洗濯機は閉じ込められないように内側からも開けられる構造になっています。
日常の些細なことがきっかけで大きな災難に巻き込まれる主人公夫婦たちがテンポよくスリリングでおもしろかったですね。

うつぼざる
ゆきさんのコメント
2025年8月24日

実際、お友達が家に来た時はとても気を遣います。
アレルギー持ちっ子もいるし、それぞれのご家庭の方針もあるので、人工甘味料、ケミカルなお菓子禁止などで、今は各々水筒持参でおやつは出さないのが暗黙のルールです😶
怪我させないように、トラブルがない様に、と、かなり気を違いヘトヘトです😅

ゆき
ゆきさんのコメント
2025年8月24日

おはようございます。
モアイさんのレビューに笑いました🤭
ずっと"長澤まさみ"呼びがツボです🤣
つか、本作まだ上映していたんですね。
それにビックリでよっぽどホラーです😅
私はJホラー初心者なので見方がよく分からなくて、じゃいさんのレビューで補完出来たのですが。。
モアイさんも同じ事指摘されていて、消極的なご鑑賞だったのに、すごいなプロだな思いました🫡
私は星低めにしちゃいましたが、投稿後、皆さんのレビューを拝読していたら、ソコまで悪い作品でもないし、何だかんだずっと見ていられたしで不思議な作品でした。
モアイさんのレビュー拝読した今、やっぱりそんな悪くなかったよなと思い直しております😅
シマシマまさみも瀬戸君も小顔過ぎてカタギじゃない感満載でした🫡

ゆき