「ちゃんと怖いじゃんか」ドールハウス 民主主義の豚さんの映画レビュー(感想・評価)
ちゃんと怖いじゃんか
あらすじは割愛します。
ここでは、自分が「怖い!」と思ったシーンとその感想をまとめます。
まず今作で1番と言っても過言ではない洗濯機のシーン。かくれんぼ中に行方不明になった娘。警察に捜索願を出した直後、洗濯機の中から発見される――という現実的すぎる恐怖。長澤まさみの迫真の演技も相まって、前腕から肩、後ろ首から耳裏、そして側頭部から頭頂部にかけて総毛立った。
次に、帰宅したら娘人形が椅子に座っていたシーン。
忠彦にピントを合わせた視点で、食卓の子供椅子に座る人形。ピンボケながら人間のようにごく自然に見える映像が映る。あの人形の表情がこれからよからぬ事が起きるのではと想起させる。
ドールセラピーの描写も印象深い。
職業柄その効果は知っているが、佳恵の娘人形への扱い方はまるで患者を見ているようで観察者として入り込んでしまった。ここでも長澤まさみの演技力に完全に引き込まれました。
次女・真衣と娘人形・礼の区別がつかなくなる演出。
現実か幻覚か分からず、人形だと思ってめん棒でぶっ叩いたら実は娘だった――という夢オチは良かった。(←適切な表現ではないのですが・・)
そして人形の正体。即身仏的なオチを予想していたら、まさにその通り。なんなら亡くなった子供を人形職人の父親が加工するサイコっぷり。母親も含めて親の異常性が際立つ。ここはホラーみが増したように思う。
結末はさらに不気味。
佳恵は「お母さんと一緒にいたいはず。」と、人形を故郷の墓に入れようとする。ラストで発覚するが、その子供は母親から虐待を受けており、本当は墓になど入りたくなかった。歯をむき出し、目を見開く人形の顔は忘れられない。
幻覚のなかで、亡き長女・芽衣に手を引かれてどこか人形と2人どこかへ…。
祖母宅に行っていたはずの次女真衣がいつの間にか戻ってきて再び幸せに暮らせるハッピーエンドに・・なる訳もなく、次女が「パパママ違う!」という叫びも届かず、夫婦は人形をベビーカーに乗せて和やかにお出かけ――で幕。
個人的にホラー映画にハッピーエンドや感動パターンは不要派なので、本作は企画構成と役者の演技に満足度が高かった。そして何より、『ウォーターボーイズ』の矢口史靖監督作品であるということ。予告はもっとポップだったのに、ちゃんと怖いじゃんか。
