「Jホラーのニューアイコン爆誕!Jホラーのまさかの救世主現る!」ドールハウス 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
Jホラーのニューアイコン爆誕!Jホラーのまさかの救世主現る!
ホラーと人形は最恐の組み合わせ。チャッキー、アナベル、最近だとミーガン…。
邦画でも日本人形が恐ろしや…。
海外の恐怖人形に負けじと、“新製品”の日本人形ホラー。
その監督が何と!矢口史靖。ご存知、コメディの達人。
矢口監督でホラー…? ああ、ホラー・コメディね。
…などと思ったら、
まさかまさかまさかの超ドストレートホラーでびっくり!
概要では娘を亡くしたのは事故とあり、交通事故と思ったら、これはトラウマ級の悲劇…。そりゃその後、使えなくなるわ…。
専業主婦の佳恵、看護士の夫・忠彦、幼い娘の芽依。名字は矢口作品お馴染みの“鈴木”。ご近所さんとも良好。幸せに暮らしていた。
芽依が友達を連れてきて、お家の中でかくれんぼ。
おやつが足りない事に気付いた佳恵は買いに行く。
危ない事はダメと言い付け、刃物などは高い所に仕舞い、バスタブも空なのを確認して。しっかりチェックした筈だった。一ヶ所だけ見落としていた…。
実際に同じような事故例も多くあるらしいが、まさかあんな所に入るとは…。子供は大人が思い付かない事を思い付く。それは子供の柔和な発想であり、時に危険にも…。
ちょっと時間が掛かって、急いで帰宅。
子供たちは皆、帰ったようだ。が、芽依が居ない。
一緒だったお友達やママ友に聞く。誰も知らない、見てない。ママを探しに行ったんじゃ…?
心配と動揺。忠彦も急いで帰ってくる。
警察に捜索願。後は連絡や進展を待つしか…。
慌てたってしょうがない。まずは落ち着こう。
気を紛らわそうと洗濯でもしようと、ドラム式洗濯機を開けたら…、
このシーンの佳恵の絶叫は忘れ得ない。
外では車や不審者に気を付けてとよく言うが、家の中にも危険があるという事を改めて思わせてくれた。
冒頭からインパクト充分。未知なる領域と思った矢口ホラーにいきなり掴まされ、引き込まれていく…。
一年経っても悲しみは癒えず。一生癒えないだろう。
グループセラピーに通う。薬も。
引っ越し。新しい家には洗濯機を置いていない…。
忠彦も義母も気遣い、心配していた。
そんなある日…
ひょっとしたら“あれ”が呼び寄せたのかもしれない。
骨董市に立ち寄る。
そこで何かに惹かれ、購入。
帰ってきた忠彦に“紹介”。
それは一体の日本人形だった…。
人形ホラーは人形のファーストインパクトや人形自体が肝。
その点、本作は大合格。
予告編でも流れていた、忠彦が椅子に座って視線を横にやると…!
ゾワッとさせると共に、何処かシュールなユーモアも混じる、絶妙な演出。
にしても、この人形…。
古今東西のホラー人形史上、屈指の不気味さ…。本作の人形造形師は何とも思わなかったのかしら…?
髪、目、顔や姿形、何から何まで、やたらとリアル…と言うより、生々しい。人間の子供そっくり。
まるで“生きている”かのよう…。
佳恵がこの人形を買った理由。
何処か、芽依に似ている…。
綺麗にし、服を着せ、髪を切り、人形としてではなく、娘のように扱う。
人形を連れて外出も。
無論、周囲からは好奇や白い目…。
ヘンに思われても仕方ない。
だけど、それで救われる事もあるし、本作で初めて知ったが“ドールセラピー”という療法もある。
それで改善出来るなら周りがとやかく言う事じゃない。
佳恵も精神面が回復。あれ以来笑顔が消えたが、また笑顔を見せるように。
亡き娘の代わりと言ってしまえばそれまでだが、当人にとっては…。
“アヤ”と名付け、愛情を注ぐ。
しかし、いつまでもそのままではいけない。固執執着し過ぎたら、別の病になる。
佳恵はそうなる前に、嬉しい事が。
新たな生命の誕生。
産まれてきたのはまた女の子で、“真依”と命名。
たっぷりの愛情を注ぐ。
以前のような光景に、忠彦も義母も安堵。
“生身”の幸せに再び溢れるが、いつしかないがしろに。
以来、怪異な出来事が続く。その時、そこに必ずいるのは、アヤ…!
誰だって思った筈。いくら待望の第二子が産まれたとは言え、それまで大事にしていた日本人形をそんな散在に扱っちゃダメ!
日本人形には“念”が籠るという。呪われるよ!
だって、アヤのあの何かを訴えるような眼差し…。
人形ホラー映画だから当然だが、こりゃ絶対何か起きる…。
そうストレートに思わせ、話や展開も定番と言ったら定番。
しかし、それを期待通りに見せる。
話の進め方、テンポ。ここら辺、陽印コメディを手掛けてきただけあって、お見事。
ホラーとしての見せ方も。先日、グロゴアグチャドロバケモノホラー『サブスタンス』に衝撃受けたばかりだが、これぞJホラー!
じわじわ煽る怖さ、不穏さ、不気味さ…。
びっくりどっきりではないこの恐怖快感が肌に合う。
ショッキング描写も。“ギョロ目”と“写真”! これには鳥肌立ったね。
ホラーの見せ方を心得、ツボを抑えたしっかりとした手腕。間違いなく、近年のJホラーではベスト・オブ・ベスト!
先にも述べたが、それを手掛けたのが、コメディ畑でホラー初の人とは…!
ホラーを何本も撮ってるプロのよう。疑って失礼だが、矢口さん、本当に本当にあなたが撮ったの…?
このレベルを見せつけられたら、中田秀夫も清水崇も悔しがるだろう。いや、悔しがらなければならない。Jホラーの救世主がまさかこんな所に…!
文字通りの新境地。矢口作品としても個人的にキャリアのベストに入る。
矢口監督ってコメディの監督としか思われていないが、実は巧みな演出、オリジナリティーある脚本や題材、作品のクオリティーや面白さも平均以上。どっかの学芸会バカコメディの監督とは次元が違う。
そうそう、オリジナル脚本なのもポイント高いね。
コメディの達人ではなく、才人。矢口監督の本気度を見た。
“新矢口”の本気度に応えられる主演女優も必須。
『WOOD JOB!』以来11年振りのタッグとなる長澤まさみ。
近年の長澤まさみの活躍も神掛かっている。驚くような実力、魅力、新たな一面。
ホラーのようなインパクトの『MOTHER/マザー』はあったが、長澤まさみも本格ホラーは意外にも初めて。初挑戦のジャンルでも、その実力を存分に発揮。
冒頭の絶叫。ここだけで堂々たる主演とニューホラークィーン出現を告げた。
芽依に対して、アヤに対して、真依に対して、それぞれに見せる母親の顔も微妙に違う演じ分け。芽依にはナチュラルに、アヤには過剰とギリギリの異常さを滲ませて。真依には物語の主軸にもなり、最も複雑。
全身全霊で愛す。
怪異が起こり、当初は真依を疑う。時には強い口調にも。
が、次第に…。アヤに恐ろしさを…。精神が不安定になっていく。忠彦や周囲からはDVの疑いも…。その焦燥感。
母親としての優しさ、難しさ、恐怖演技に複雑演技。その巧さは演技のお手本。
またまたもっともっと、長澤まさみに魅せられる。(個人的に最近になって『コンフィデンスマンJP』を見た事もあって尚更)
当初は優しいけど、典型的な無関心バカ夫。妻の言う事を信じず、それどころか疑う。しかし、忠彦も怪異に遭う。中盤辺りから見せ場も増え、忠彦が踏み込む恐怖の世界にもなっている。瀬戸康史の好助演。
終盤怪我しちゃって急にポンコツになっちゃったけど、呪禁師役の田中哲司も頼れる安定感。
魂が抜けたような安田顕、クズ役が何故か似合うキンコン今野はある意味お笑い担当か。やはりコメディの達人、ユーモアも隠し味にスパイス。
ユーモアと言ったら、あのYouTuber。下らないおバカ動画を2度も見せるのかと思ったら、2度目に呪禁師が違和感を指摘。全く気付かなかった…。思い込みって、怖いね。
“3人”の名子役も称賛もの。芽依役の本田都々花ちゃんは冒頭のみの登場ながら印象残し、真依役の池村碧彩ちゃんは役柄的にも出番多く、達者な演技。
そして勿論、アヤ…。
日本人形ってどうしてこうも恐ろしさを感じさせるのだろう。
匠の技が光る芸術品である事は勿論だが、本作でもそうだが、造形師の思いが込められる。
全てではないが、日本人形には悲しみが付き物。
それが恐怖との相性抜群。
不気味なんだけど、悲しみ滲ませ、惹かれずにはいられない。これは日本人形随一の魅力。
本作のアヤ、曰く付きなのは予想出来るが、予想を越えてきた。
日本人形は本物の髪を使う事もある。それがまた薄気味悪さの一つであり、それ故人形なのに髪が伸び、心霊現象などと間違われる事もある。
アヤも所謂“生き人形”だが、さらに…。
有名な人形造形師だった父、病弱の母。悲しい過去、誕生の経緯、呪いの理由…。
アヤを作るのに使われていたのは…。これにも鳥肌立った。
いやいや、ヤバ過ぎるでしょ…。
実際にそんな日本人形、無いよね…?
人形の呪いは『アナベル』風。
呪いの根源に迫るのは『リング』的。
古今東西のホラーのあるあるを織り込みつつ、オリジナリティーもある。
呪いの根源が日本的なもの。つくづくこういうのが好き。
何やら終盤の展開など賛否も見掛けられるが(実際Jホラー定番の非現実的展開)、亡き娘の愛を感じ、アヤを帰りたかった場所に返し、家族は再会してハッピーエンド。
…だけど、何だか違和感を感じた。やはり…!
呪禁師は間違っていた。母親の元に帰りたかったのではなく…。
ベビーモニターで撮られた真依とアヤの“会話”の中にも…。
ハッピーエンドに見せ掛けてのバッドエンド。ホラーにはよくあるが、それもしっかり踏襲。
技あり! 嬉しくなっちゃうくらい正統派で予想以上に面白かった矢口ホラー!
これはもう絶対続編案件でしょう。
勿論、全員続投で!
Jホラーの(まさかの)救世主、矢口監督。
Jホラーのニューアイコン、アヤ。
ゾクゾク怖いけど、ワクワクまた見たい!
長澤まさみ主演のホラーって事で学生客がやたら多く、私の斜め前と隣に座っていた中学生グループがキャーキャー言いながら見てたよ。
共感ありがとうございます!
私は何と言っても長澤まさみ様作品としてはコンフィデンスマンjpイチオシなので、ドラマ版も全録画、劇場版はすべて複数回鑑賞した上にDVDを持っています。演技上手なのは言わずもがなですが、まさか本格的ホラー作品でしかも矢口組の製作とは、そっちの方でもビックリでした。
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