「人形ホラーの決定版となり得るか」ドールハウス 猿田猿太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
人形ホラーの決定版となり得るか
「亡くなった子供の身代わりに」「何故か伸びる髪と爪」等々、昔からある人形ネタを、既出などと臆することなく紡ぐあたり、狙いは正に「人形ホラーの決定版」という野心的作品。
映画は2時間(マイナス広告時間)のコンパクトサイズ。だからこそ上映開始からテンポが良く、シーンに無駄なく、紙袋の覆面やルンバなどアイテムの伏線もテキパキと散りばめられて判りやすい。後半もそんな感じでちょっと駆け足に見えるけど、お陰で気を抜けずに食い入るように見てしまった。
個人的にこの映画を見る上で、予測というか、「人形の呪いのトリック」にアタリを付けて鑑賞していました。
別の作品のネタバレで恐縮ですが「奇妙な物語劇場版」で強く印象に残った話がありまして、「遭難して土葬した友人の遺体が、なんども蘇ってきて自分の隣で寝ている。これはおかしいと思いビデオカメラで撮影してみたら、夢遊病を患った自分自身が掘り起こして連れ戻していた」というオチ。
つまりは、人形の呪いに超常現象的なミラクルパワーなどなく、人為的なトリックでもって呪いが為されているのでは無いか。その予測はあらゆるシーンを見ていて「可能だ」と思いましたが、しかしクライマックス。(ここからこの映画のネタバレになりますが)人形が変わらないはずの顔を歪めているんですね。これでは解釈に困る。やっぱり超常現象でしょうか。それとも主人公達の幻想・幻覚? 私の好みではありますが、とことん人為的な方法で実現可能にも見えるようにして欲しかった。
何故かというと、もう超常的な霊的な事象が発生するとは思えないんですね。現代社会で、不思議な力で霊魂が人形に宿るなどとは、もう思えない。むしろそれよりも生きている人間の方が恐ろしい。前半、明るい表情を取り戻した母親が人形を座らせて娘のように扱う下り、むしろ人形より怖かった。
でもやっぱり人形独特の怖さも凄いですね。特に人形の無表情の顔。表情は変わらないはずなのにそのシーンに見合った顔つきに見える。確か岡田斗司夫氏が「火垂るの墓」の解説の中で「クレショフ効果」というんでしたか(AIで確認したのですが)。無表情でも食事や異性と並べることで、それぞれを欲しているように見える。「火垂るの墓」では節子がなくなった後に清太を無表情で表現していたシーンなんですが、人形の無表情にもその効果が現れるのかもしれません。
海外でもすでにチャイルド・プレイとか人形ホラーはありますが(そっちは見てない)もしかしたらリング同様に海外にコピーされうる作品になるかもしれません。そうすると人形はフランスのそれか、テディーベア、著作権が切れてさっそくホラーに使われたミッキーマウスか。
そうした日本ホラーを代表する作品、人形ホラーを代表する作品として、評価されていくことを願ってやみません。さあ、続編が出るかな?
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