「夢みたいな事だよ、夢みたいな事をね、ちょっと。」平場の月 Mr.C.B.2さんの映画レビュー(感想・評価)
夢みたいな事だよ、夢みたいな事をね、ちょっと。
11月17日(月)
TOHOシネマズ上野で「平場の月」を。原作未読。
離婚した青砥(堺雅人)と亭主と死別した須藤(井川遥)。二人は朝霞へ戻って来る。印刷会社で働く青砥。検査に行った病院内の売店で須藤と再開する。
中学卒業以来?なら約33年振りに会ったのに「須藤?」「なんだ青砥か」
これで二人の関係性が判る。
病院の前で仕事上がりの須藤と一緒に飲む約束をする青砥。
焼き鳥屋「酔いしょ」で待ち合わせた時の須藤の手の挙げ方。あの時あそこまで高く手を挙げたのは須藤の「太さ」を表している。そしてラストの伏線にもなる薬師丸ひろ子の「メインテーマ」。
実質的な台詞は「薬師丸ひろ子」一言の焼き鳥屋の大将、塩見三省の存在感。
「ファーザー」のレビューにも書いたが、私の認知症の母も特養の施設に入っている。私は母からしばらく名前で呼ばれていない。死んだ事にはなっていないけど。
週に一度母親の面会に行くが、施設に持って行くものには1個ずつ名前を書く。青砥も母親の部屋で名前を書いていた。私の母親はまもなく98才になる。
私も数年前に大腸ポリープを切除して良性か悪性かの生検の結果を聞きに行った事があるが、青砥のように医師(前野朋哉)の口から「良性でした」と聞くまでは安心出来なかったものだ。しばらく噂を聞かなかった映画の友人が大腸癌で亡くなっていたと知った事もある。
70ジジイの私としては身につまされる事が映画の中に幾つも出てくる。
大宮(新幹線停車駅)でもなく、浦和(県庁所在地)でもなく朝霞という土地柄もあるか。埼玉県の南東部に位置する朝霞市。埼玉県民あるあるとして都心に出るなら銀座じやなくて池袋、二人で池袋・西武に行こうと言う台詞もあった。全国の方は判るのかな?私は埼玉県民ではないが、東京の北の外れの近くに住んでいるから判るけど。
飲み屋が何処も満員だった事から、その朝霞の須藤のアパートで家飲みをする二人。
亭主と死別した後、若い男に貢いで家まで売った過去を告白する須藤。二人の距離は近づいて行くのだが…。
須藤も検査を受ける。青砥は良性だったが、須藤は大腸癌を発症して手術を受け、抗癌剤治療を行う。人工肛門を着用した須藤は匂いを気にする。(人工肛門は本物そっくりな小道具だそうだ)
6ケ月検診で転移が確認された須藤は一人で生きて行くと青砥に別れを告げる。
「青砥とはもう一生会わない」
結局、二人が再開してから約1年あまりでお互い会わない事になってしまう。
「お前は約束を守る女か。お前の顔を立てて一年我慢してやる」
1年後の須藤の誕生日12月20日に一緒に熱海へ温泉旅行へ行く約束をして。
青砥は、熱海への旅行の1週間前に須藤が先月亡くなっていた事を知る。
須藤のアパートに行くと部屋を片付けている妹の道子(中村ゆり)と会う。
須藤は青砥に迷惑をかけない道を選んだのだ。そして死を青砥にも知らせるなと。須藤の妹が見せた闘病中の姉の写真の首には青砥が贈った月のネックレスがあった。
そして部屋の12月のカレンダーには20日に赤丸が付けられていた。
青砥の部屋のカレンダーと同じように。
会社の昇進祝いが「酔いしょ」で行なわれ青砥も参加する。青砥は須藤と二人で飲んでいた席で嗚咽を漏らす。その声が聞こえないように大将は流れている「メインテーマ」のボリュームをそっとあげるのだった。
いくら須藤と約束していても同じ朝霞に住んでいて1年間連絡を取らなかった青砥もどうなのだろう。栃木や種子島まで行ってしまった訳でもあるまい。ましてや相手は再発の可能性もある病なのだ。そこにちょっと合点が行かない。
それにしても脇役がみんな素晴らしい。
安藤玉恵の脇役としての安定感は最高だ。
また、関連動画をいくつか観た。
動画で焼き鳥屋「酔いしょ」の店内がセットだったと知ってビックリ。てっきり店だと思っていた。
堺雅人と井川遥が撮入する段階で中学生時代の撮影は全て終わっていたので、「この延長上を演じれば良いんだと、楽でした。」と堺雅人が語っていた。
中学時代の須藤を演じた一色香澄は「秒速5センチメートル」の白山乃愛と並んで今後に注目したい。(タイプは違うけど)
私の中学の同級生ブッチ、30歳位に会った時は「ねえ、ハチ」だった。
「結婚決まったんだ」
「おぅ、おめでとう」
あれから彼女は結婚したはずだ。その後会っていない。
40年振りに会ったらブッチは私の事をハチと呼ぶのだろうか。「なんだハチか」
参考動画
制作報告会見
完成披露試写会
特別鼎談:堺雅人、井川遥、(原作者)朝倉かすみ(30分)
オトナ女子座談会(SAKURAIさんオススメ)
Mr.C.B.2さん、コメントありがとうございます。・_・
売店レジでの再会時の会話。
ぶっきらぼうを装いながらも揺れる感情がうかがえる
この後の関係性も伺えるようなシーンでした。
数十年のブランクが一瞬のうちに詰まったかのような
やりとりだった気がします。
共感ありがとうございます。青砥は1年連絡を取ろうとしなかったわけではありません。でも電話には出ない、ラインは未読(ここだけは映画にもあり)、家に行っても出てこない。そのあたりは原作にはあります。だから映画はちょっとサラリと描きすぎてるキライはあるのです。
共感ありがとうございます!
自分も元カノと月一デートをしている身なので、観終わったとは「参考になったなぁ」なんて思っていましたが、大人の恋の考え方なんて決まった型がある訳でもなく、若者の恋とは大違いなので、「こりゃ、ちゃんと自分で考えて行動しないと後悔するゾ」と、考えを改めて残りの恋を楽しもうと思いました。
安藤玉恵と宇野祥平が主役バージョンのリアル版平場の月R18+バージョンが観たいと思いませんか?
ストマはすごくハードル高いですね。死を覚悟したときに、もう合わないと決めたハコの気持ちが分かる歳になってしまって、よかったと思う反面、やっぱり寂しいです。少しでも美しい、いい思い出だけを相手に残したいと思う気持ちは異性に対してだけではないこともあると思うんですよね。原作の月と松本隆と南佳孝のメインテーマを合わせたこの映画。ジワりますねぇ。
共感ありがとうございます。
人工肛門はかなり踏み込んだ描写でしたね。自分は同衾出来るか? 自信がありません。逆の立場でも絶対拒否・・他の方のレビューでは皆さん気にしてない様で恥ずかしくなります。
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