「大変面白く観ました!」かくかくしかじか komagire23さんの映画レビュー(感想・評価)
大変面白く観ました!
(完全ネタバレですので必ず鑑賞後にお読み下さい!)
(レビューが溜まっているので短く)
結論から言うと、今作の映画『かくかくしかじか』を大変面白く観ました!
今作の根幹は、なぜ日高先生(大泉洋さん)が「描けー!」と言い続けていたのか?にあると思われます。
なぜ「描く」のか?
その謎の解答は、主人公・林明子(永野芽郁さん)が、金沢美術工芸大学の合格後に絵を描くことを辞めて、しかし大学卒業後のコールセンター就職後に、女性の上司に舌打ちされたりしてから漫画を描き始めた所にあると思われました。
なぜ主人公・林明子は漫画を「描き」始めたのか?
それは、林明子が、コールセンターで生き地獄の一端に触れたからだと思われます。
なぜガンになってからも日高先生は絵を「描き」続けたのか?
それは、日高先生が、「描く」ことで生き地獄から抜け出せると実感していて、ガンになった所で先生の生き地獄は、「描く」ことを辞めれば、変わることがないと思っていたからだと思われるのです。
日高先生は、主人公・林明子に、「描く」ことで、生き地獄を生き抜く同志になってくれればと思っていたと伝わりました。
(日高先生が、主人公・林明子のいる金沢に酒を持って現れたのも、何も言わず宮﨑に帰ったのも、同志として求めしかしそれが叶わなかったのが理由だと思われるのです。)
今作の映画『かくかくしかじか』が深い作品として伝わるのは、根底に、日高先生を通して厳しい現実を見つめる眼差しが流れている所に理由があったと思われます。
そして、その厳しい現実への眼差しの、日高先生と主人公・林明子とのすれ違いの切なさは、観客の私達の現実の積み重なりに通じて、観客に感銘を与えていたと思われるのです。
この映画の事前周辺では、複雑矛盾に満ちた人間理解とは対極の、表層の薄っぺらい舌打ち的な言説が広がっていたと思われます。
そして、薄っぺらい舌打ち的な言説の背後に横たわるものも含めて、「描く」ことで(あるいは個々人が自分の根底から何かを成し得ようと動き続ける事で)生き地獄を乗り越えられると、潜在で魅せた今作は、観客含めてあらゆる人々を勇気づける優れた作品になっていたと思われます。
今作の映画『かくかくしかじか』は、一見軽快な作品に見えて、深さある複雑矛盾に満ちた人間の賛歌として、静かに輝いていると、個人的にも感銘を受けながら大変面白く観ることが出来ました。