劇場公開日 2025年5月16日

「本作全体を、たった2文字の「描け」という科白で強烈に貫いた」かくかくしかじか えすけんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0本作全体を、たった2文字の「描け」という科白で強烈に貫いた

2025年6月21日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

癒される

カワイイ

漫画家になるという夢を持つ、ぐうたら高校生・明子。人気漫画家を目指していく彼女にはスパルタ絵画教師・日高先生との戦いと青春の記録があった。先生が望んだ二人の未来、明子がついた許されない嘘。ずっと描くことができなかった9年間の日々が明かされる── (公式サイトより)。

原作の大ファンなので、そもそも実写化には少し懐疑的だったが、予想以上に良かった。東村アキコ自身が映画化にあたってかなりの労力を割いたそうなので(エンドロールで何度も名前が出てきていた)、原作のこだわりが本作にも凝縮されていたように感じる。特に、主人公を中心とした独特の色彩の衣装は、ビビットで大柄で普通はなかなか思いもつかないような、おしゃれ上級者の組み合わせで、蜷川実花とは全然違うが、そこに匹敵するくらいのインパクトを持っていた。

実写化に懐疑的だったのは、先生はぶっきらぼうでロボみたいでコミカルな要素が基本的にないのだが、その役を器用でコミュニケーションに長け、コミカル要素満載の大泉洋が演じるのはさすがに無理がある、というのが理由からだ。ところがさすが稀代の売れっ子俳優、当人の個性を生かしながら、先生を見事に演じ切っていた。本作全体を、たった2文字の「描け」という科白で強烈に貫いたのは、大泉洋のなせる業であろう。

ちなみに、わたしは個人のスキャンダルと、作品は全く別物と思っている。太宰治も芥川龍之介もパブロ・ピカソもジャニス・ジョプリンもフレディ・マーキュリーも、人間としてマジでくそな部分があったのだろうが、そのことが作品が批判、否定される理由にはならない。もちろん、スキャンダルが理由で、観る気が失せた、読みたくなくなった等はしょうがないと思う。楽しみにしてたのに興ざめしてしまった、も理解できる。だが、観てない、読んでないのに憶測で作品を批判したり、否定するのはただの言いがかりだし、制作・配給サイドが、放映を取りやめたり、オンデマンドから削除したりするのは、愚の骨頂だとさえ思う。そんなことをしたら、美術館の作品や図書館の蔵書はどれだけ減ってしまうことか。そっちはそっち、適切なところで適切な人が裁いたり、検証すべきことであって、作品とは関係がない。

えすけん
PR U-NEXTなら
映画チケットがいつでも1,500円!

詳細は遷移先をご確認ください。