劇場公開日 2025年5月16日

「恩師への愛と感謝を詰め込んだ素敵な作品」かくかくしかじか おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5恩師への愛と感謝を詰め込んだ素敵な作品

2025年5月19日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

楽しい

幸せ

人気漫画家・東村アキコさんの自伝的作品の実写映画化作品ということですが、原作未読どころか、東村さんの作品は何ひとつ知りません。予告の楽しげな雰囲気と出演俳優陣に惹かれて、公開2日目に鑑賞してきました。

ストーリーは、宮崎県に暮らす、漫画家を夢見るお気楽女子高生・林明子が、美大受験に備えて地元の絵画教室に通うことになり、そこで出会ったスパルタ指導の日高先生のおかげでなんとか大学合格を果たすが、根っからのサボりぐさが治らない明子は、友達と遊ぶ日々の中で漫画家の夢も絵への情熱もしだいに薄れていくが、そんな明子に対してもずっと声をかけ続ける日高先生と明子の日々を振り返るというもの。

原作者・東村アキコさんにとって、人生の大きな道標となった恩師・日高先生への愛と感謝を精いっぱい詰め込んだ素敵な作品です。原作未読ですが、製作に原作者も加わっているということで、きっと原作の魅力がしっかり生かされた作品になっていたのではないかと思います。

日高先生の人物造形はおよそ絵画教師とは思えないスパルタぶりで、まさに型破り。それでも教え子たちからこれほど慕われていたのは、作品のすばらしさでも指導のうまさでもなく、彼のひたむきな情熱が伝わっていたからでしょう。それは絵画に向けるのと同等の熱量で教え子に向けられ、死の間際まで衰えることはありません。

ストーリーは、アキコの自伝として語られるため、日高先生がアキコに特別に肩入れしているようにも見えます。しかし、葬儀後の後輩くんの言葉から、誰か一人を特別扱いすることなく、教え子の一人一人に全力で向き合ってきたことが窺えます。

人生の中で生涯の師と思える人に出会えたことは幸せです。鑑賞中、自分にとっての師と思える人の顔が何人か脳裏に浮かんできました。今でもたまにお会いするかたもいれば、その後すっかりご無沙汰になってしまったかたもいます。今の仕事に全力を尽くすことが最大の恩返しと思って過ごしてきましたが、本作を観てやはり直接会ってお礼を伝え、当時の思い出話をしたくなりました。

題名の「かくかくしかじか」も、自分には「かくしか」ないと思わせてくれた恩師の話を、さまざまなエピソードを通して振り返るという意味で、感謝と温かみを感じる素敵なタイトルだと感じます。

主演は永野芽郁さんで、お気楽でありながらも心から日高先生を慕う明子を好演しています。共演は大泉洋さんで、こちらも日高先生役がぴたりとハマり、観る者の心を捉えます。脇を固めるのは、見上愛さん、畑芽育さん、鈴木仁さん、神尾楓珠さん、津田健次郎さん、有田哲平さん、MEGUMIさん、大森南朋さんら豪華な顔ぶれ。主演の永野芽郁さんが世間をお騒がせ中なのは承知していますが、それとは切り離して作品を楽しんでほしいと思います。それが、原作者やキャストやスタッフの思いに報いることだと思います。

おじゃる
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