「デヴィッド・ゴードン・グリーン版『クリスマス・キャロル』」くるみ割り人形と4人のキッズ regencyさんの映画レビュー(感想・評価)
デヴィッド・ゴードン・グリーン版『クリスマス・キャロル』
『スモーキング・ハイ』、『グランド・ジョー』、新生『ハロウィン』三部作、『エクソシスト 信じる者』など、フィルモグラフィがコメディやホラー、スリラーを占めるデヴィッド・ゴードン・グリーン監督の2024年の作品は、なんとクリスマス映画。しかも定番のハートフルなホームドラマと来たもんだから、この人ホントに何でも撮るなあと感心。
シカゴで不動産業に就くやり手サラリーマン(ベン・スティラーが7年ぶりに主演)が、オハイオの農場で暮らす事故死した妹の息子4人(甥っ子)の里親を見つけるために同居する事になるも…というこの導入はいかにもクリスマス映画。タイトルにもある『くるみ割り人形』が文字通りの見せ場になるが、そこに至るまでの経緯もアッサリしているし、オチも定石通り。グリーン版『クリスマス・キャロル』と言い換えてもよさそうだが、それでもスティラーがスクルージみたく冷徹で強欲な性格でもなく、むしろ彼を振り回す4人の悪ガキぶりが目に余る。無論それには事情もあっての事だが、なんかスッキリとせず。ただユダヤ系のスティラーが、里親候補の家庭が楽しそうにクリスマスを語る際に居心地の悪そうな顔をするのがいちいち面白かった。なお子役の4人は演技経験がない実の兄弟で、グリーン監督の知人の子なのだとか。
内容自体はイマイチだったものの、かといってつまらない映画と斬り捨てられないのは、グリーン監督の長編デビュー作『ジョージ・ワシントン』を先に観ていたから。初代米大統領と同姓同名の少年に起こる出来事を牧歌的に描いたこのデビュー作が、本作とどことなくダブっていて興味深かった。ジャンル映画で名を馳せたグリーン監督だが、「デビュー作には監督の全てが詰まっている」とよく云われるように、彼の本質はホームドラマにあるのかもしれない。