木の上の軍隊のレビュー・感想・評価
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あの丘は元に戻らないけど帰りたい
邦画あるある、台詞の聞きずらさは
加齢のせいか、字幕欲しい(苦笑)
戦争を描いた作品だけど
戦闘シーンはほぼありません。
それでいて戦争の無慈悲さは
しっかりと描かれていて、
でもセイジュン(山田裕貴)と
上官(堤真一)のやり取りには
笑いがおきたりと
ただただ重苦しいだけの戦争映画には
仕上がっていないので、
戦争映画が苦手な方にも
ぜひ観て欲しいと思う作品です。
淡々と話しは進むのですが
個人的にはセイジュンが蝮に噛まれた後に
見る夢?から現実に気づく瞬間がたまらないです😭
「帰りたい」と泣き叫ぶセイジュンを
抱きしめたくなります。
表題の生活に到るまでの戦争の凄まじさ、その生活の継続と終了時点での葛藤
初めに、山田裕貴氏演じる若い兵士と兵士でない住民の与那嶺が、和気藹々と話しながら飛行場建設作業を進めていき、堤真一氏演じる上官が、彼らだけでなく、その後の女性や高齢者対象の竹槍訓練でも厳しく指揮を執ろうとするが、アメリカ軍の猛襲を受け、精神論の無力さを突きつけられ、轟音の直後に女の子の命が失われ、退却していき、表題の生活が始まる。
当初は、みつかることを恐れて、夜間活動に限定されていた。やがて、日曜日に敵の空襲のないことがわかり、大胆な行動が始まっていく。しかし、上官が慌てて肩を脱臼したりもする。それでも権力関係は変わらず、上官の誇りを尊重するために、若い兵士は偽りを言って上官に敵の食糧を食べさせる。
戦闘状態が終わっても、部下の投降を許さない上官の姿勢は、悲劇の予感しかなかったが、決定的な場面でも、上官はむしろ自身の子どもへの向き合い方から躊躇いを抱き、悲劇は免れた。しかし、若い兵士は上官に警告していた毒ヘビに襲われることで絶体絶命の危機を迎えることになり、そこで不運な最期を遂げても不思議はなかった。安堵の夢は先に逝った親しんだ者たちの仲間入りと思われたが、その安堵も叶わず、意外にも上官の配慮で若い兵士は命を取り留める。しかし、上官が目を離した隙に、絶望した若い兵士は、一番の希望だった海辺に向かう。足跡が懐中に続いていたのをみたとき、今度こそ死出の旅立ちかと思ったが、これまた意外に、海岸と並行に歩みを続けて行き、上官が若い兵士を呼び戻して、生還することができた。
有名な横井庄一氏や小野田寛郎氏のように、独りで籠もって投降に踏み切るのとでは、条件がまた違うのであろうと感じた。また、外国で籠もるのと、故郷で籠もり、戻る場所がない、という喪失感を含むのとでも、意味合いが違ってくることがよくわかった。
「最後の官選知事」である島田叡氏に対する批判も目にするが、ドラマ仕立ての『島守の塔』では、ユーモア溢れる人柄が描かれ、ドキュメンタリー版でも、県民の運命を左右する選択に葛藤を抱えていた様子が描かれており、まさにその表題のように『生きろ』という訴えにおいて、本作と共通するテーマではないかと考えた。
見捨てられた兵士の惨さを感じた。生きる為の死の地獄を味わう!
7月が酷い猛暑の中 過ぎ去って・・・。
災害大予言も場所が全く異なったけど大津波があってそれはそれで驚いた。
マグニチュード8.7 カムチャッカ半島地震。でも北海道は震度1。津波は迫り来るという。正直 ひょっとしてロシア原潜爆破事故か誤作動魚雷発射で海底20KMを撃ったのかと 勘繰ったりもしたのだが。
そんな中、
実は 先日公開日に「木の上の軍隊」を観に行ってました。
実話ベースの沖縄の伊江島戦の話。
終戦近い1945年4月~米軍上陸そして終戦を経て1947年3月帰るまで。
・上官(宮崎出身:山下一雄 役):堤真一さん
・新兵(沖縄出身:安慶名セイジュン 役):山田裕貴さん
二人は過酷な戦場の中、ガジュマルの樹上で生きのびて生還する。
昼夜問わず敵兵が迫る地上戦。
飲む事も、食べる事も、眠る事も、休む事さえままならない戦況。
唯一彼等を救ったのはガジュマル。
敵に撃たれなかったとしても、飢えで明日死ぬかも・・・この思い。
助け合いが必要なのに この期に及んで上官、新兵。互いに相容れない状況が続く。
素朴に島に育った セイジュンの思い、 この島は昔と変わってしまった。もう戻れない。
滑走路を造れと指示されたり、出来たと思えば爆破しろと言われたり。
あの場所が元々がどんな場所で有ったかも もう思い出せないです・・・
この戦争に駆り出されて 犠牲となった兵士セイジュンの思い。
島の新兵の友人も、友人の妹も、おかあも、みんなこの戦争の犠牲に成ってしまって、このやり切れない思い。
こんな状況になっても、敵兵に狙われ続けて 死ぬことも出来ず
食べる事も出来ず、相容れない人(上官)と一緒に居なくてはならず。
何て残酷なんだと・・・つくづく思う。 惨い、何物でもない。
しかし相容れないとは言え上官。
死にそうな人を置いては行けず、助けなければならない。
「上官、日本の食べ物が有りました。これを食べて下さい。僕は敵兵の食べ物を食べますから」 本当は敵兵の缶詰を日本の入れ物に移して渡したものだった。
こんな思いをしてまで、相手を思いやらなければならない状況のセイジュンに凄く同情し私は涙した。
本当の沖縄の訛りでは無いと思うが、山田裕貴さんの一つ一つの演技が 沖縄出身で 地元の島で戦う新兵の有り様を実によく表現していたと感じました。
本当に良かったです。
終戦後 島も平常となって島民の誰かが 兵隊への為に置いた食べ物と手紙。
” 戦争はもう終わったんですよ。出て来て下さい、セイジュン ”
自分の帰る場所が有るって事。自分の名前を呼んでくれる人が居るって事。
どんなに それが 嬉しかった事か。
無情にも 騙されるなと言う上官の言葉も分からないでは無いが、
ここの 彼の素直な思いは本当に涙して感じました。
戦争に負けても帰る場所が有って良かった。本当にそう思いますね。
もうすぐ、8月15日終戦記念日
この映画を感じて 今年は少し違う思いで
手を合わせられそうです。
ご興味ある方は
是非、ご家族揃って
劇場へどうぞ!!
どうやって暮らしてたのかがわかって良かった。
・木の上に隠れて、上官がアメリカ兵の食事を普通に食べた辺りからアメリカ兵が廃棄したものを嬉々として吟味して充実しているように観えた辺りが元気があってよかった。スパゲティを缶に入れて外へ置いていく感じ、凄いなぁと思った。
・どこからも弾が飛んできてあっさり死んでいく仲間たちの姿が可愛そうだった。
・与那嶺の家族が爆撃で亡くなって絶望して身動きが取れなくなっていたのに、木の下で亡くなっていて驚いた。
・ソテツを食べると死ぬけど、あく?を抜いてから団子にして食べられるんだとかが興味深かった。セミが美味しいという話をしていたので食べるのかと思ったら食べなかった。
・随所で方言も多くて時折なんて言っているのかわからなくて少し困惑してしまった。ラストで上官があげおーだったか叫んで主人公に近づいて行った。宮崎の方言で、死ぬな―って言ってるのかと思ったら、主人公の苗字を叫んでいたことにエンドロールで気づいた。どこかで言っていたのかを聞き逃していた。
・序盤の上官の軍人感が凄くて、特にアメリカ兵の食事が体に入ることがおぞましいというようなことを言っていて、明治か大正生まれらしいセリフだなぁと思った。4毒の食事だけど、毒でも死ぬよりはと思った。とはいえ、戦後に日本は欧米食で病気が増えていってるわけだから、複雑な気持ちになった。
・木の上でどうやって生活していたんだろうと思っていたけど、そういう事だったのかというのが分かって良かった。
・自分の島が戦場になって母親も気がおかしくなって悲惨な主人公が近くにある海がただ観たいっていうのが切なかった。
島の人々の「敵」
元が舞台劇らしい作りの映画。
戦闘シーンを除いて場面ごとの登場人物が少なく、少々作り物っぽい印象的なエピソードで手短に訴えたい事を入れ込んでくる。
また、終戦を知らず二年もの間木の上で潜伏していた二人の日本兵という、若干滑稽にも見える特殊な逸話も、舞台劇にはうってつけのよう。
伊江島だけではない沖縄戦で浮き彫りになるのが、現地の人に対する日本軍の暴虐非道ぶり。この映画も例外ではない。
「沖縄戦」は日本の敗戦が必至となったため、本土決戦を1日でも遅らせるための「本土防衛のための捨て石」作戦であり、帝国陸海軍は「玉砕精神」で戦争指導と作戦遂行をし、この方針を軍のみならず一般住民にまで貫徹した。
セイジュンの母は、「家と土地を(日本軍に)取られ、父も戻らず気が触れた」。
島で現地徴用された新兵も住民も労働に駆り出され奴隷のような扱い。
軍の防空壕に入れるのは兵隊だけで住民は締め出し、住民を守らないが投降は禁じる。未遂でも促すだけでも容赦なし、破れば殺す。追い込まれた民間人の集団自決が多発する阿鼻叫喚。
ささいなことで暴言を吐かれ殴られ蹴られ、本土から来た帝國軍人は島の人々を蔑んでおり、差別意識むき出しだ。山下が言う、「戦うのは、家族や大事な人々、国民をを守るため」その理屈に説得力はあるが、島の人々は「守るべき人々」の中に入っていないようだ。
島の人々にとって日本軍は、味方と言う名の敵に他ならない。
沖縄は、米軍と日本軍の、二つの敵に蹂躙されたのだ。
山下が米軍のゴミ捨て場で遭遇した住民の老人に、「昔よりよっぽど良い」と吐き捨てられるのは当然。大きな敵が一つ無くなったんだから。それにショックを受けていた山下が、現代の自分には不思議に見える。自分たちが住民にしてきたことを「正義」と信じて疑わなかったというのか。
沖縄戦で亡くなった人は20万人あまり、そのうち12万人が住民だったと言われる。
沖縄の人口が59万人ほどなので、1/4が犠牲になった。そして兵士より、民間人の犠牲者がはるかに多い。
日本軍の権化のような少尉・山下と、沖縄を体現したような現地徴用の新兵・安慶名セイジュン、セイジュンが山下を、少尉ではなく上官、と呼ぶのは、山下の階級が分からないからだろう。
基本的な新兵教育すらできていない日本軍の窮状がそれだけでも分かる。
血も涙もない冷酷な上官山下だが、人としてふたりきりになるとそうでもない。
頑固で骨の髄まで帝国軍人だが意外と気さくで自ら働き新兵だけをこき使ったりしない。
ふたりは、飢餓と恐怖に耐え、助け合い知恵を絞って生き延びる。
時には、兵隊やくざの有田上等兵と大宮のような可笑しいやりとりがあったりもするが、生き延びることへの山下の目的とセイジュンのそれとは明らかに違いがある。
帝国軍人として教育されてきた山下は当然のように人間性よりも皇国の精神を優先するので、たびたび衝突が起きる。
日本の敗戦を知り、出ていこうとするセイジュンに銃を突きつける山下は予想通りで、こんな場面は当時数多くあったに違いない。そして、上官に阻止され射殺された兵隊たちもおそらくいる。
せっかく戦争を生き延びたのにこんな命の奪われ方はやり切れない。
人間性も合理性も無視の狂気じみた軍国思想と、それを徹底させた教育のエグさが、恐ろしい。
この島は変わってしまった、子供の頃、友達の靴を見つけた思い出の丘は、自分が人を殺したおぞましい場所になってしまった。もう元には戻らない。
セイジュンの慟哭には、沖縄だけでなく、戦争を経験した人の多くが共感するのではないか。
破壊と殺戮が終わっても、戦争が人々にもたらした傷と変容は取り返しがつかない。
時が経っても取り戻せないものが確実にある。
戦争がもたらしたものを、振り返って改めて心に刻んでおくように、戦後80年経った今だからこそ、観るべき映画だと思います。
堤真一、山田裕貴のふたりがとても良い。
堤真一は骨の髄からの帝国軍人を身近なおじさんのように自然に演じており、戦争が終わった事実を、自分の中で消化して受け入れていくところも素晴らしい。沖に向かっていきそうなセイジュンに必死で追いついて、「そろそろ帰ろう」というちょっと微笑んだその表情が秀逸でした。
セイジュンの山田裕貴は、なんだかのんきな島の子だが生きる術に長けていて、素朴で皇国の教育に染まっていない分、感覚的に人として生き物として正しい判断をする新兵を好演。ふたりとも飢える状況とともに痩せていって、リアリティがありました。
とても良い配役だったと思います。
従来のステレオタイプな沖縄戦映画からの脱却
沖縄県の先行公開で鑑賞し、原作ありきではありますが、若い沖縄県の監督が沖縄戦の作品を撮るという中で注目していたのですが、局地的(伊江島)な舞台という所から沖縄戦争映画というよりは戦地を舞台にした人間ドラマという作品でした。
但し、根本的な反戦メッセージは残されており戦争(特に地上戦)において何が失われていくのかは強く表現していると思います。
個人的には終盤の安慶名と上官の山下のセリフの掛け合いが秀逸で、言い争うシーンに関してはどちらの言い分も理解でき、やり場のない怒りと悲しみを感じ取る事が出来ました。
最後の安慶名が兵士としての装備を外しながら海へ向かっているシーンは「木の上の軍隊」から沖縄の青年、安慶名に戻っていく流れとして素晴らしいシーンだったと思います。
沖縄の綺麗な景色や往来の日本軍が犯した罪などは描かず、終始島内での話にした事でステレオタイプな沖縄戦映画から脱却出来ており、戦争の負の面を描きながらも、焦点を当てない事により「生きる」というテーマを鮮明にしています。
最後に当作品撮影にあたり、ロケ地である伊江島から戦没者20名相当の遺骨が見つかったとの事ですので、ご冥福をお祈りすると共に安慶名が作品内で言った「もう元には戻らない」を噛みしめながら戦後はまだ終わっていない事を考えていけたらと思います。
血の丸の旗印
導入では状況の分かりづらさや言葉の聞き取りづらさで嫌な予感がしたが、以降は圧巻でした。
飛行場の建設や竹槍訓練の場面は正直退屈で、堤真一含めて台詞回しもイマイチ。
死亡フラグの露骨さもサスガに気になる。
しかし、米軍の上陸から先は緊張と弛緩の連続。
銃声や爆発音は耳に響くもので、死が隣にある状況が肌を刺すよう。
子供の死はあざとさを感じるし、遺体のエグさはもっと出すべきとは思うが、それでも十分にツラかった。
本編のほとんどは堤と山田の壮絶な二人芝居。
靴と蝉と与那嶺の話で笑わせてきたり、関係がくだけていく様子に和んだりと意外と固すぎないのもいい。
エロ本で交渉するくだりなんかも好き。
しかし状況を考えれば呑気にしている様子こそ異常であるし、勿論張り詰め怯える状態も異常に他ならない。
正常な場面などまったくないのだ。
友人のように笑い合ったと思えば急に上官と部下に戻ったりと、2人の情緒不安定さがよく表れていた。
飢餓状態での虚ろな目や力の入らぬ声は、実際に断食して撮影したのかと思うほど。
説明し過ぎないところは好感を持ったが、そのぶん缶詰め入れ替えの件だけ3度も擦ったのが目立つ。
(空き缶のアップ、山下の気付き、安慶名の日記)
演出、特にBGMの使い方にはわざとらしさも…
だが終盤に安慶名が見た幻覚の中で、BGMが止まるタイミングと子供の視線にはゾクリときた。
「帰りたい」と子供のように繰り返す安慶名に、山下が息子を重ねるシーンの子役も見事。
中身があまりに地味な上にやや冗長になってしまっている点は残念だが、これもひとつの戦争の形と実感できる。
伊江島出身のAnlyを起用したことを見ても、しっかり伝えようとする意思を感じました。
もうすでに戦後生まれが89%という国で、どうすれば戦争を伝えることができるのだろうか
2025.7.29 アップリンク京都
2025年の日本映画(128分、G)
原作は井上ひさし『木の上の軍隊』
終戦後も沖縄県伊江島にて留まった二人の軍人を描いた戦争映画
監督&脚本は平一紘
物語の舞台は、1945年の沖縄県伊江島
沖縄決戦を間近に控えた伊江島では、地元民と軍隊が共同で空路を作り、戦線基地の構築に励んでいた
そんな中、地元民の安慶名セイジュン(山田裕貴)と幼馴染の与那嶺幸一(津波竜斗)は、軽口を叩きながら作業をしていた
監督官を務める少尉の山下(堤真一)は、作業を怠る地元民を虐めながら、来たるべく地上戦に向けての指導を行なっていた
ある日のこと、空路予定地が爆撃に遭い、安慶名は辛くも塹壕に逃げ込んだ
そして、そこに与那嶺の母(大湾文子)と妹(玉城凛)がやってきてしまう
兵士は民間人を入れられないというものの、安慶名は自分が外に出ると言って二人を非難させた
だが、その直後に塹壕は爆撃に遭ってしまい、与那嶺の家族たちは亡くなってしまう
その後、なんとか与那嶺と合流した安慶名だったが、その事を突きつけざるを得なくなる
与那嶺は放心状態のまま戦地に置き去りにされ、家族と同じ場所に向かってしまったのである
物語は、辛くも敵襲から逃げ延びた安慶名と山下が、ガジュマルの木によじ登って難を逃れる様子が描かれていく
そこからが本編という感じで、山下と安慶名の噛み合わない掛け合いが続いていく
二人は終戦を知らないまま木の上で過ごすのだが、彼らはすでに地元民には認知されていた
米兵が残したもので空腹を満たし、時には普段食べないものも食する事を強いられる
当初は米兵のものなどという感じで突き放していた山下だったが、安慶名は衰弱を恐れて日本製の缶詰に入れ替えたりしていく
だが、徐々に山下の精神状態もおかしくなってしまい、奇行が増えていく
そして、ある日、彼らの食糧の隠し場所に一通の手紙が入っていたのである
映画は、山下と安慶名の会話劇となっていて、徐々に戦争状態から乖離していく様子が描かれていく
英語の読めない彼らはゴミの山で漁ったりもするのだが、そこには「Warning Restricted Area - Keep Out Authorized Personnel Only (警告 立入禁止区域 許可された人以外は立ち入り禁止)」と書かれていた
その場所は地元民のゴミ漁りの場にもなっていて、戦争の爪痕がしっかり残っている場所でもある
彼らがそこに到達するのは1年半後ぐらいだったが、彼らが木の上から降りた2年後でも変わらずに放置されていた
地元民の生活は見かけ上は元に戻ったが、もう引き返すことのできない現実というものが、そこかしこに残っていると言えるのだろう
この会話劇を楽しめるかどうかだが、重すぎる内容なのにそこまで感じさせない何かがあった
戦争が終わっている観客からすれば、彼らがどのようにして真実を知るのかを追いかけていくことになる
それは突然やってくるのだが、彼らも薄々感じていたのかもしれない
だが、予感を信じるに値するものがなければ動けず、それが悲劇を生み出しているとも言える
少しでも早く帰りたい安慶名は手紙で童心に返り、任務が唯一の拠り所である山下は、何かにつけて帰る事を拒んでいく
そして、ゴミ捨て場で会った老人(山西惇)から戦争が終わった事を聞き、そこに捨てられていた雑誌を見つけて悟ることになった
疑念渦巻く山下がどのような心の落とし所を見つけるのか、というのが本作のポイントであり、これまで信じ続けて、自分を鼓舞してきたものの瓦解というのは、意外にもあっさりしたものだったのである
いずれにせよ、リアリティが凄い作品で、二人しか出てこないのに飽きが来ない作品だった
睡眠不足で突入するとヤバそうだが、現地言葉で何を言っているのかわからないということもないので大丈夫だと思う
今年は戦後80年の節目の年であり、例年以上に戦争関連の映画も多い
さらにリバイバル上映なども重なるし、談話のためにしがみついている人もいたりする
いまだに戦後処理が終わらない国ではあるものの、戦争を経験していない国民の割合はすでに9割に達している
そう言った中で次世代にどうやって繋いでいくかが命題であるものの、昨今の情勢やモニターで見る他国の戦争、映画を通じて知るカッコよく描かれる戦争などの影響もあるので、ますます知らない人が増えるだろう
そんな中で泥臭い本作の訴求効果はいかほどかはわからないが、美化されがちな遠い島の話がこれほどまでに身近に思えるのは凄いことなんだと思った
戦争
2人の少尉と新兵が木の上で終戦後も生活を続けるというお話です。
わたしは戦争映画自体頻繁に見る方ではないため、他の戦争ものと比較しづらいですが、戦闘シーンなどは前半に多くあり、後半は終戦していることもあってほとんどなかったです。
だから、迫力のある戦闘シーンを期待して観に行くと物足りなさを感じるかもしれません。
タイトル通り、物語の半分以上は木の上で描かれます。
その為、映画を観る側の粘り強さも必要だなと思いました。
木の上ではご飯を探したり、食べたり、寝たり、、、。と生き延びているところのシーンです。
戦時中は敵軍に見つかるかもしれないというハラハラ感がありますが終戦後はハラハラ感もなかったので途中で飽きちゃう人もいるかもしれないなと思いました。
こういった戦争映画はレビューを書くことには、各々の知識や思想、経験が色濃く出ます。
だからわたしと今このレビューを読んでくださっている皆さんとでは受け取るものや感じるものが違う。
その為、あまりレビューには囚われずに観てほしいです。
堤真一の演技力が凄い映画
実話を元にした映画ということですが、後半に普通に住民が森の中を歩いているのを見ると、この2人は終戦後2年間全く住民と出会わなかったのか?と思ってしまいますが、そこはおいといて、堤真一の演技力の凄さを再認識出来る映画でした。
映画としては、設定上、木の上になるのと、特別何をするでもなく、生き抜くということがメインとなるため、仕方がないのですが、場面展開が少なく、若干間延びしてしまう感があります。
米軍が攻撃してくるまでを詳細に表現し、時間配分を変えることで、人間ドラマが充実するのと、後半の間延びが少し改善される気がしました。
演技がうまい
演技の質が高く、上官に対して言いたいことが言えない部下の心理を表情でうまく表している。
終盤にの上官が部下の日記を見つけて読むシーンを挟むことにより、これまで表情や状況などで匂わせていた事実を明確に描くような作りになっている。
自由の女神像をバットで打つシーンや戦争が終わったことを告げられるシーンなど、米兵のゴミ捨て場が主人公たちの価値観を大きく変化させるきっかけとして使う手法も優れていると思う。
本作のモデルになった人物はインタビューで「木の上で過ごした2年間は平時の10年よりも長く感じた亅と語ったそうだ。後半はやや悲壮感が薄く描かれているが、このインタビュー記事を読むと、終盤の「帰りたい」と連呼するシーンの重みが少し変わる気がする。
戦争ネタコントを延々と観させられているような
期待していたほど面白くなかったかな。
井上ひさしさんの脚本は、くだらない中に人間的な可笑しさと切なさがあると思うけれど、そういうものが物語として生きていなかったように思えました。
途中から、登場人物よりもお話しの中に戦争の緊張感が無くなって、弛緩した日常が繰り返されるだけ、みたいな感覚になってしまいます。
まるで堤真一さんと山田裕貴さんの戦争ネタコントを延々と観させられているような。
若い人から見たら、木の上で戦いを続けていた2年間が全く個人的で愚かな勘違いと無駄に思えてしまうのではないでしょうか。
結果論になるけど、何と戦ったんだ?
本当に多くの命をかけて何と戦ったんだ?
正直勝ち負けで判断するのはどうかと思うね。
でも今現在は敗戦があったからこそここまでの国に成長したんだ……でも。
先人たちは色んな理由と思いを込めて命をかけて戦ってくれたんだよね。
戦ったから何?1人で10人倒したから何?真珠湾に攻め込んだからこうなったのか?
根本的に戦争は何を生んだのか?
悲しみしか生まないよな。
今も世界中で戦争は起きているけど何も生まないし、世界中を敵に回して最後の1人になるまで殺し合いをするのかと思うよ。
安易に殺し合いで解決しようかと思えるほど馬鹿ばかりが世界を動かしているよね。
戦う相手を間違えているよな。
国でも宗教でも人でもなく自分たちの未熟さだよね。
本当にいつになったらこんな争い事がなくなるんだろ?
夢だ理想だ詭弁だ………やる気がないだけだろ?お前らの言い訳なんて聞きたくないしクソ以下のリーダーたちはいらないねん。
あったかい安らぎのある家庭に帰りたいねん。みんな誰もが。
戦後80年。何年?要らないわこんな表現。
ずっと永遠に平和でええねん。
それが我々現代人が先人に対するAnswerであり決意表明であってほしいです。
戦争を身近に感じさせる
これまで様々な戦争映画、ドラマを観てきたが、なぜだろう。これほどわがことのように感じたことはなかった。
俳優たちの熱演のせいか、カメラワーク
のせいか、遠く離れた沖縄の島が自分の故郷のように見えてきて、怖くなった。
島から出たことがない山田裕貴演じるセイジュンが特にいい。感情移入してしまい、遠方に派兵されたわけではなく、故郷の地でそのまま兵士となった人間の悲しみが伝わってきた。
セイジュンや与那嶺には目の前の米軍がいるだけで、世界大戦の中の日本軍がどう、なんて考えていない。
ただ故郷がまず味方の軍に奪われ、敵に奪われ、自分も人を殺して違う人間になってしまったから、もう「帰れない」という原初的な悲しみが非常に刺さってきた。
堤真一演じる上官のほうは兵士の経験が長く意地もあるから、戦い続けるのは自然だ。むしろセイジュンのほうがよく頑張ったと思う。終戦を知って初めて帰りたいと泣き喚いた姿に、上官がいるから無理してきたことがわかった。確かに彼は木の上の軍隊で戦ってきたことが。1人だったら投降していたのではないか。
こうしている今もガザやウクライナではひどい目に遭っている人がいる。同時に他人事と思えてしまう自分がいる。
両親が戦争を知っている年代の私たちはまだしも、祖父母ですら戦争を知らない若い人たちに見てほしい映画だと空いた客席を見ながら思った。
戦争の悲劇を忘れてはいけないが、賛否両論になる映画だと思う
堤さんと山田くんのTV番組での宣伝と、子供達を含めて沖縄本島の方々も観に行かれているし、沖縄戦から80年なので公開初日に観に行きました。
2週間前に沖縄に行って伊江島を見てきたので余計に感じたかもしれませんが、「島民」の方々の標準語が気になりました。
勿論うちなーぐちでなくても、イントネーションや、〜さぁ〜等、もう少し「沖縄」を感じさせて欲しかった。
なので、途中から何処の戦地だっけ?、2年間って事だけど「横井庄一さんは30年弱だったなぁ」って、余計な事を思ってしまった。
また、蛆虫が湧いたから「足を切断する」って思ったら大丈夫だった。不思議。
演技の方では、山田くんが「帰りたい」を連呼したシーンでは他の方々も涙していました。
あと、他の方もレビューしていましたが「プレイボーイ」の部分は必要だったのか?
結論。何に対しても「当たり障り無い」戦争映画でプラスアルファが欲しかった。
【今作は沖縄戦で孤独な戦いを続けた二人の兵士の姿を描いた井上ひさし原案の同名舞台の映画化であり、戦争の愚かさや生き抜く大切さを描いた作品。戦後80年を迎えた日本に反戦メッセージを伝える映画でもある、】
■1945年。
沖縄の伊江島で日米両軍による激しい攻防が続いていた。敗戦濃厚な中、本土から来た山下少尉(堤真一)と、伊江島生まれの新兵アゲナセイジュン(山田裕貴)は、大きく枝を広げるガジュマルの木の上に身を潜める事になる。
◆感想
・今作は、冒頭で実話と出る。戦争終結を知らずに生き抜いていた兵士と言えば横井庄一さんや、小野田寛郎さんの事を思い出すが(と言っても、年代的に後年知った。)沖縄でも期間は2年だが、同じような人たちが居た事に驚く。
・最初は、厳しさを見せていた山下少尉が、アゲナセイジュンが折角見つけて来た米軍の缶詰に手を付けなかったり、山下とセイジュンとの関係が上官と部下だったのが、時が経つにつれ、セイジュンが栄養失調になった山下に、わざわざ日本の缶詰の中に米軍の缶詰の中身を入れて食べさせたり、島の食べ物やハブについて教えていく過程の中で、関係性が変わって行くのが面白かったな。
・戦争が終わった事も知らずに、ガジュマルの木の上で生活をする中で、山下少尉も笑顔を見せるようになり米軍のゴミ捨て場でアメリカのエロ本を見つけて嬉しそうにしたり(男だったら、気持ちは良ーく分かるぞ!)、山下少尉が上手そうに残飯のスパゲッティを食べる姿も、何か可笑しかったな。
ここは、軍隊の階級の愚かさと、その柵が無くなれば只の人間同士っていう事が言いたかったのではないかなあ。
■今作では、名優堤真一を相手に、アゲナセイジュンを演じた山田裕貴の演技がとても良かったと思う。
米軍の爆弾で死んだ母や妹や戦死した戦友与那嶺(津波竜斗)の幻影に悩まされる彼が、最初は玉砕を唱える山下少尉に”生きましょう””帰りましょう”と訴えかける姿や、後半は自らの想い”生きたい!””帰りたい!”と口にする姿は沁みたな。
そして、アゲナセイジュンは、全ての武器を捨てて海に入って行くのだが、それを必死に追う山下少尉の姿は、最早階級を越えた親友を助ける姿だと思ったなあ。
<今作は、沖縄戦で孤独な戦いを続けた二人の兵士の姿を描いた故、井上ひさし原案の同名舞台の映画化であり、井上さんが終生抱いていた戦争の愚かさや生き抜く大切さを描いた作品である。>
「戦争映画」というより「生きる」を考える映画
太平洋戦争終結から80年。当時0歳の赤ちゃんが80歳の老人になるほどの年月。地球上から戦争が完全に無くなったわけではないが、日本では戦争を体験として語れる人は少なくなった。
私自身、直接身近な人から戦争の話を聞くことは出来なくなって久しい。どうして祖父からもっと聞いておかなかったのだろう、と思うと同時に、どう話していいのか祖父自身もわからなかったのかもしれない、とも思える。
「木の上の軍隊」は終戦を知らずに2年間、ガジュマルの枝に身を隠した2人の物語だ。元となった舞台版には無い、伊江島の戦闘シーンから始まり、次々と制圧され、仲間を失い、木の上に身を潜めることになる。
ここまでは記録ドラマのように感じるが、実際に伊江島のガジュマルの木の上で撮影された2人の潜伏パートからは、2人の個性がぶつかり合い、互いの価値観の違いがにじみ出た見応えあるドラマへと突入していく。
本土から来た上官役の堤真一、現地の新兵役の山田裕貴。最初は窮屈な木の上で息を潜めていた2人が生き残るために木の枝を増やし、敵の目を掻い潜って水や食料を探し、そうこうしているうちにだんだんガジュマルに馴染んでいく様も面白い。
この映画では「生きる」ことが最大の目的で最大のテーマだ。
生きる。戦争を諦めないために。生きる。死んでいった仲間たちのために。生きる。おめおめと戻れはしないのに。生きる。帰る家もないのに。生きる。何もかも変わってしまったのに。
生きる。何のために?
上官と新兵、年齢も、出身地も、考えてることも、今までの人生も全然違う。そんな2人のサバイバルを通して、生きることの難しさ、何でもない日常の尊さを観る側に投げかけてくる映画だった。
同時に、山田裕貴扮する新兵は「沖縄」そのものを表している。彼は言う、「失くした靴を見つけた丘は、今は米兵を殺した場所です。もう元には戻らないんです。」「僕の帰る場所はここしかないんです。」
いろいろな出来事があって、支配者も変わり、恐ろしい出来事も多く、今でも望まぬ変化に晒されながら、それでも沖縄の人にとって、沖縄はかけがえのない故郷で、家だ。
だから、「帰りたい」と思う。例え誰も待っていなくても。
映画の最後まで、新兵は名前を呼ばれない。映画の中で2人は個人ではなく、2名の日本兵として戦争の縮図、本土と沖縄の縮図として存在し続けた。
上官である山下少尉が心の底から敗戦を認め、生き残るために支え合ってきた彼を「安慶名」と呼んだ時、「もう帰ろう」と呼びかけた時、初めて2人の戦争は終わったのだと思う。
沖縄ロケ、沖縄のスタッフ、沖縄出身の俳優やアーティストが多く起用され、遠のく戦争の記憶を「他人ごとじゃないんだよ」と呼びかける良作だった。
真剣だからこそ思わず笑えてしまう部分もあり、誰でも見やすい映画に仕上がっていると思う。
個人的には多少見づらくなっても、編集でテンポにメリハリをつけた方がいいんじゃないかと思ったが、「誰でも見やすい」方がテーマにはあってるのか、とも思えてきた。
戦争=地獄
前半は米軍との戦い、後半はまさにサバイバル生活でした。原作は見読ですが、2年程このサバイバル生活を送っていたとは驚きです。
特に大したことは起きないし、けっこう長く感じましたが、戦争の悲惨さは伝わってきました。
米軍の爆撃で耳から血を流して死んでしまう女性は、とてもショッキングでした。
頑固上官の都合DAYS。
太平洋戦争末期の1945年の沖縄県伊江島、米軍襲撃でたった二人の軍隊となり木の上に潜伏する上官・山下と、地元沖縄の新兵・安慶名セイジュンの話。
終戦してることを知らず木の上に身を潜めた2人の2年、実話に着想で見せる。
米軍の攻撃、見つからない様にと木の上に身を潜める姿にはハラハラ、木の上の生活に少し慣れ米軍の動き緩まりで、少し噛み合わない2人のトーク、ふいに戻ってきた米軍から隠れれば小便かけられ笑える。
落下傘下にあった食料見つければ米軍食料だからと拒む上官の頑固さにも笑えるし上官都合のルールで送る日々、拾った洋エロ本からの流れのタバコの下りはさらに笑えた。
作品として笑えるシーンはあったものの実話作品、ホントは家に帰りたいが見栄と頑固さで帰りたいと言えない上官と、早く帰りたいと思うセイジュンと見せたが、まさかのハブの伏線。
途中からはほぼ2人の劇になってしまったけど2人のやり取りの面白さ、飢えからの知恵、戦争と追われる恐さ、面白かったって言い方は違うかもだけど面白かった。
最後の言葉に涙した
堤真一さんと山田裕貴さんのほぼ2人芝居なのに その場に居るような臨場感があって、全場面での山田さんと堤さんのセリフがリアルで 最後の堤さんの言葉に思わず涙しました
他にも沖縄の俳優やタレントも多く出演していて、与那嶺役の津波さんの前作とは役柄と風貌も違ってて、役の人柄が伝わって来ました
帰りの車の中で「戦争はやっぱり嫌だね」という夫の言葉に 「本当に」と実感した私でした
堤さんや平監督のお子さんに観てほしいと言う言葉通りで、内地にいる娘にも薦めました
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