木の上の軍隊のレビュー・感想・評価
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ガジュマルとプレイボーイと兵士
極限状況&極限状態の中で、
水から茹でたカエル🐸の様に、
平常そうに見えて、徐々に狂っていく2人の兵士。
そんな常軌を逸した環境に置いたのが、戦争と命令…軍人と云う肩書きなら、
気が触れるギリギリのトコロで踏ん張らせたのも、戦争と命令…軍人と云う肩書き。
皮肉なモノです。
多分…主人公達は、ガジュマルの上で過ごす内、気付いていたんじゃないか?って思うんです。
既に負けたんじゃないか?
戦争はもう終わったんじゃないか?って。
でも、認めたくない…気付きたくない、知りたくないが先行して、
軍人として!を正当化に使い、、命令だから!と言い聞かせ、自ら現状に馴れていったんじゃ?と。
ただ、それを一体誰が責められますか?
狂えた方が…簡単で楽だったろうに。
夢に幻に、死んだ部下や友を視る…その希望と絶望の狭間で葛藤し続ける悲しみは、本人達にしか知り得ないのでしょうから。
帰りたい。帰ろう。
すぐそこにあった日常
舞台原作、樹上生活の2人の物語・・・と聞いて、これは相当濃密な会話劇、心理劇なのだろうと思いながら観に行った。
いざ始まってみると、ずっと樹上にいるわけではなく、ずっと話しっぱなしでもなく、ずっと2人の心象風景を描くでもなく。樹上生活が落ち着くまでの激しく緊張感ある展開を除けば、どちらかというと静かに淡々と進む彼らの「終わりの見えない新しい日常」を描く物語のように感じた。
生命の危機下における緊張感、恐怖、怒り、そして助け合い、思いやりの精神。
一転、なんとか生きる術を確立してからの、緩み、笑い、抑えていた欲望の発散。
折れそうになりそうな心の棒を辛うじてつなぎ止めていた糸が、村人からの返事の手紙で切れた後の安慶名(山田裕貴)の魂に突き動かされるような表情と演技に惹きつけられる。
途中から、彼らが肩に背負っているライフルをいつ、どのように捨てるのかが気になっていた。背負ったまま人前に出るのだろうか?どんな形で、この生活を辞めるのか?
安慶名は、海を前にして、森の中に全てを投げ捨てた。そして真っ直ぐ海に向かった。
上官の山下(堤真一)は、砂浜を走り、安慶名に駆け寄りながらそれらを徐々に投げ捨てて行った。
この細かな違いが、戦をやめ、失われた日常に帰る2人の素の心の変化を上手く表現していたと思う。舞台ではできない演出だ。
戦争の悲惨さを、凄惨な戦闘シーンで伝えない。今すぐそばで生きていた者が一瞬で死に、日常が日常でなくなっていくことへの怒りと悲しみを、半ば「自己隔離」とでも言うような特殊な空間をサバイブする2人を通じて描く。新しい戦争映画。
そして、主演2人の演技に拍手。
終戦間際の悲惨さがよく表現されている
極限状態は短くても長くて人を殺す。 自分で課したら自分で解除出来な...
2年掛けて、「お国の為に死ぬ」のではなく「家に帰る」を選んだ
帰る場所がある幸せ
地元では上映していなかったので、なんばで鑑賞。
大阪で平日のお昼間ということもあり、ご高齢のおじいちゃんおばあちゃんがたくさんおられ、こちらでは経験できない客層でびっくりしました!
都会っていいなあ。
そして、ジャンル・知名度的にも、映画好きな慣れた方たちばかりなのでしょう、すごく静かでした。
私の片方の隣はおじいちゃんだったのですが、身動き一つせず、呼吸音もなくあまりに静かだったので、心配になったほどでした。
でも映画が始まり、笑いのツボが私と同じで、同じところで何回も笑い、なんかほっこり安心しました笑
元々の脚本は舞台の脚本のため、ジョークが舞台よりでした。
そのジョークのおかげで、残酷な苦しい内容も、ふっと気持ちが緩められる瞬間があり、見続けられました。
役者さんたちも、ストーリー構成も、舞台よりでしたが、堤さんの演技が流石すぎて上手すぎて、素晴らしく映像で、自然とすっと入ってくる、違和感ないお芝居で上手すぎました!!
山田裕貴さんは、場の空気を軽くするプロですね!
なのに、真剣な真面目な演技は本当に真剣で、ボロボロ泣いてしまいました。
綺麗で純粋で飾らない演技で素晴らしかったです。
今の生活を壊したくない気持ちになる映画でした。
今は平和なんです。
ありがとうございます。
主人公の気合
これが戦争。
戦後80年
80年でこんなにも国は発展し、様相が変わるのかとも思った。
ちょうど沖縄本島に新しいテーマパークもオープンして、「観光客のみなさん!楽しんでいってね!」という感じを受けますが、80年前はこんなに穏やかで、いい意味で何もない場所だったんですね。
さて、映画について。
序盤の地上戦へ向かう場面は、やはりとても辛かったです。
大切な人が目の前でどんどん死ぬ。
そんなことが本当に起きていたのかと信じられないですが、人が爆弾や拳銃で殺される場面なんて想像できません。
木の上で、いつ殺されるかと思いながらの2年間。
殺されたくない、死にたくないと思いながらも、鬼畜米兵たちへの憎しみや怒りは一瞬、自分の命を賭してでも殺してやりたい。と思うものなのだろうなと思いました。
後半、意識が朦朧となり夢を見るシーンは毎回泣けてしまいました。この夢の中で死ねたら幸せだろうとか、一緒に死ねたら幸せだっただろうとすら思ってしまいます。
そして生き残った人たちは一生戦争の中で生きていくことになりますよね。
人を殺し、大切な人を殺された世界で生きることはどれほど辛いだろう。
でも生きたい、死にたくないと思うのは生き物の性でしょうか。
過去の戦争も、今の戦争も、未来の戦争も全て無くなればいいのにな。
ここにいたいよ。
戦争に対する考え方も構え方も違う二人。ガジュマルの木に守られながら、身を潜めながら心を少しずつ通わせていく。もし、何らかの形ですぐに終戦を知ったら、二人はあっさりとお別れをしていただろう。なんとも複雑だ。ながいながい二人だけの戦争が、絆を紡いだのだから。
家に帰ると元気な母と戦友がいた。…おかしい。
そのことに気づく場面がとても切なくて
グッ…、、と声を詰まらせてしまった。
“目を覚ましたくない…ずっとここにいたい……”
自分が彼だったら…と考えたとき、
誰しもが皆、同じことを思うだろう。
「帰ろう」
母も戦友も亡くしてしまった。綺麗だった海も地も、もう元には戻らない。絶望のなか、波の音しか聞こえないひとりぼっちの故郷で自分以外の声が聞こえる。
ひとりじゃない。絶望せずに、生き抜いて。
ニーバンガズィマール
井上ひさし先生の作品は、"おとったん"と作文の書き方の本位しか読んだ事がなく、本作の原作も未読。
そしてあの沖縄戦から生き延びて、終戦を知らず2年もの間、木の上で戦っていた2人の日本人がいた事も知りませんでした。
"おとったん"同様に主に堤さん山田君の2人芝居。
後半は特に舞台劇の様でした。
この辺りの演出は好みが分かれそうですが、舞台劇は好きなので、個人的にはしっかりと戦争の恐ろしさは伝わってきました。
「沖縄戦の縮図」と言われる凄惨な戦いが行われた沖縄本島北部の伊江島。
1945年4月アメリカ軍上陸。
島民も戦闘に駆り出された6日間の地上戦で、島民のほぼ半数の1500人、日本軍2000人が犠牲になった。
そして8月に広島・長崎に原爆が投下。
15日終戦ーーー
戦後の日本という時間軸に取り残された2人の孤独な戦い。
2年もの長い年月を経て
1947時3月 2人は木から降りる。
軍は国・国民を護る事が役目のはずなのに、日本軍は全てにおいて軍事を優先させ、民間人保護は考慮の外。
島民も一緒に戦えなんて、負けるに決まってる戦争で降伏は許されない。
日本軍に殺された様なものだ。
もし降伏できる状況だったら、国際法で保障された保護を受ける事が出来た島民は多かったはずで、こんなにも多くの犠牲者を出さずに済んだはずだ。
(戦争なので、ある程度の事はあったにせよ)
皮肉にも日本軍と一緒にいた島民が地獄を見た事になったと言っても言い過ぎではないと思う。
どっぷりと帝国軍人の山下と、沖縄の純粋な青年セイジュンとの対比が、まるで日本と沖縄の関係性をそのまま表現しているかの様で、終始怒りの感情が渦巻いた。
どこかとぼけたセイジュンと山下のやりとりは時に滑稽で、言葉を選ばずに言うと、笑えたりもする。
だけど逆にそれがこの状況の異常さを物語っていて身の毛がよだつ思いがした。
帰りましょう
帰りたい
長い間お疲れ様でした
よく戻ってくれました
お帰りなさい
余談。。
本作について調べていたら実在のモデルさんは、宮崎県出身の山口さん(当時28歳)と沖縄県うるま市出身の佐次田さん(当時36歳)のお2人であった事を知りました。
歳の差に驚きました。
(セイジュンの方が年上という事になりますよね。)
本作の山下とセイジュンの関係性とはかなり違ったのではないかと想像しました。
実際は山口さんは何発も銃弾を受け木から落下した事もあったり、破傷風になり佐次田さんが必死に看病したとの事。
本作の堤さん山田君のお2人も素晴らしかったですが、この歳の差で、立場の違いでの視点からの物語も見てみたくなりました。
戦争反対。
今年も8月を迎えます。
2度と元には戻らない
戦争という狂気を、木の上で終戦も知らず2年以上過ごした2人の日々を通じて、少し違った切り口で表現した作品。
お2人の演技は、本当に素晴らしい!
「恥ずかしながら」と、終戦から遅れて戻って来られた元日本兵の方のことを思い出しました。
戦争を始めた愚かな人のせいで、多くの人や街が一瞬にして様変わりした。
亡くなったかたもいる。
生きていたけれど、人を殺し今までの自分とは別の自分になってしまった人もいる。
家族や大事な人を失った人もいる。
何もかも2度と元には戻らない。
戦争は嫌だ!
最後の海のシーンの後、バン!と真っ暗になり
テロップが流れたところ…とても残念!
余韻も何もなくなってしまった。
『生』
第二次世界大戦下の沖縄県伊江島での実話をベースにした舞台の映画化。
木の上に取り残された上官と兵士を通して、『生』を繊細に描き出す。
戦争作品だが、エンタメ色を強めたことで起承転結がハッキリし、纏まりが良く見やすい作品となっている。
作品の大部分を占めるのは、上官と兵士の会話となるが、堤真一と山田裕貴の演技は素晴らしい。堤真一演じる上官は、戦時下の情報制限の中での日本第一の盲信的な思考。一方、山田裕貴演じる兵士は兵士、故郷、現在としての『生』で揺れ動いていく。
また、上官の持つ盲信的な思考は他人事ではないと感じる。見たいもの、聞きたいことを選択でき、閉鎖的なコミュニティになりやすい、現在のSNSを中心とした社会にも通じるところがある。自らが信じたものと違う情報は聞かず、自らの考えを押し付け他者を攻撃する。この作品の上官と兵士の関係と似ている。 彼らは戦争という極限の状況下での被害者だか、我々は…。
だだの戦争作品としてではなく、他者との関わり、思考の変化、柔軟性といったメッセージも心に留めておきたい。
「帝国軍人」という名の戦争の被害者
最初に評価を3にしたのは、令和のコンプラか、はたまた広い年代で観れるようにとの配慮からなのか、いわゆるリアルさというか「生臭さ」がなく、マイルドな仕様になっていることからの採点であって、決して内容が悪いわけでも、劇場でお金を払って見るほどでもないというわけではありません。
実際、私は映画館で見に行ってよかったと思いました。
8月は戦争映画を見にいくと決めてました。
そんな時に公開していた戦争映画がこちらで、予告編を見た程度の軽い知識で足を運びました。
私が観に行った映画館では、上映時間が一日一度だけだったので、そんなに人いないだろうなぁ…と思ってたのですが、ポップコーン抱えてスクリーンへ行くと6~70代ほどのシニアのお客さんですし詰め状態だったので、あんまり上げてなかった期待値がこの段階でぐっと上がりました、8月だからみんな思うところは同じなんだなぁと。
堤真一演じる宮崎出身の上官が、絵に描いたような凝り固まった日本の軍人であることが冒頭のほんの少しの映像だけで分かるんです。
お国のために命を捧げ、非国民など言語道断、恥をさらすなら死を選べ、決死の覚悟で米兵を殺せ、米兵は10人殺して1人前だ!!
そんな帝国軍人山下と、地元民でもある若い新兵が共に木の上で2年過ごすという内容。
ガジュマルの木の上に逃れるまで、味方も島の住民も、いきなり殺されるんですよ。
そしてどこか呑気な若い新兵セイジュンも、木の上に行くまでに米兵を一人射殺してしまうんです。
終戦に気づかないまま2年を過ごすってことで、映画を見るまではもっと平和な内容だと思ってたんですよ。だって、木の上に登って間もなく戦争は終わったって内容なんですから。
ところが、直前まで狙い撃ちにされ、数秒前にいた場所は爆撃され、おまけに殺しも経験して、取り返しのつかない状況下での敗戦による終戦。
終戦に気づかず米兵を終始警戒する2人なんだけど、終わってるのに終わらせられないという悲しさというかやるせなさを感じてしまいます。
米兵のアジトで缶に入ったパスタを夢中になって頬張る山下の場面は一番印象に残りました。
敵兵の缶詰を腹に入れるくらいなら飢え死にのほうがマシだ!!と一喝し、味方の缶詰だと嘘をつかれ米兵の缶詰を食べたことに気づいた時はショックに身体を震わせながら、騙したセイジュンを射殺しようとまでした山下がいざ敵兵のアジトへ行ってどうなったかと思いきや、パスタがっついてニンマリしてるんです。
ああ…お国のために戦う軍人さんも、戦争がなければ元々は普通のおじさんなんだよなと改めて思う場面。
戦争の犠牲者はこういうところにもいるんだよなぁと考えさせられました。
思い出のあった丘は、はじめて敵兵を殺した場所に塗り替えられ、海は艦隊で黒く覆われ、島のあちこちは爆撃で荒れ果て、以前はどういう風景だったかも思い出すことはできない。
セイジュンが涙ながらに「帰りたい」と叫ぶ場面。母親や友達と過ごし、海に行って釣りをする平凡だけど最高だった日常。銃を向ける山下もその言葉に戦争前の幼い時代の故郷の息子が重なり、帰るべき日常がよぎり戸惑う。
最後の最後、帝国軍人であった山下の「そろそろ帰ろう」という言葉で幕を閉じます。
帰るのは故郷であり、かけがえのないものであった日常の世界。
ほぼほぼ満席だった劇場内は最後までとても静かでした。
みんな、ただただ真剣に見てて、私もその一人でした。
2時間と少しの上映時間でしたが、本当にあっという間でした。
名作とか、劇場で観たほうがよいとか、そういうことではないのですが、見終わって思ったことは一つ。
私はこの日この映画を映画館で見に行って良かったです。
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