シンシン SING SINGのレビュー・感想・評価
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表現をしている時だけは自由になれる。
表現は人間にとって大切な要素なんだと考えさせられた。
これは柵の外の世界でも同じことが言えるのではとかんじた。何かしらの表現をしている時は自由を感じる。
獄中にいる彼らにとって、演劇という表現をしている時間は自由を感じられる時間である。
演劇シーンでは彼らはいきいきとしている。そんな彼らを描くことにより、演劇を離れたシーンでは獄中で自由のない中で生きているという事実が強く伝わってきた。
演劇が更生プログラムとなっている理由が実感できる
何かの役を演じるためには、自分自身を見つめ直す必要があるのかもしれない。
役者たちが、車座になって、演出家の指示で、自身の完璧だった瞬間について語り合ったり、長い間会えていない友人のことを思い出したりしている様子は、グループセラピーそのもので、「舞台演劇」が囚人の更生プログラムに採用されている理由は、こんなところにあるのだろうと納得することができた。
特に、その効果が顕著なのが、新しくプログラムに加わった元ギャングで、いかにも「悪党」然としていた彼が、ハムレットを演じようとする過程で「人としての心」を取り戻し、主人公との友情を深めていく様子には胸が熱くなる。
また、多くの出演者たちが、本人役を演じた実際の受刑者たちだったという事実が、エンドクレジットの「as himself」という表示で明らかになった時には驚かされた。
その一方で、演劇は、作り上げていく「プロセス」が大切だということは理解できるし、最後に、上演された時の実際の映像が流されたりもするのだが、ハチャメチャな内容の喜劇が面白そうだっただけに、出来上がった劇を、ちゃんと観てみたかったという物足りなさも感じてしまった。
それから、主人公は、無実の罪で収監されているという設定だったが、だからといって、冤罪を晴らすとか、脱獄するとかといったドラマチックな展開がある訳ではなく、そのことが大きな意味を持っていたとは思えない。
ここのところは、実際に罪を犯した主人公が、しっかりと更生し、最後は出所して、出迎えてくれた友人と共に人生をやり直していくという物語で十分だったように思えてならない。
期待しすぎずに観てほしい
「地味そうだ」という印象だけで避けてしまうのは勿体ない一本
第97回アカデミー賞にて3部門でノミネートされた本作。公開初日のTOHOシネマズシャンテ、初回9:50の回に4階のSCREEN1に向かうエレベーターは団体が一緒に乗り込んできて盛況を予想させますが、これは初日・初回にあるあるの「関係者ご一考」による様子伺いのための来場。実際の客入りはあまり芳しいとは言えず、地味な作品ではありますがちょっと残念な感じです。
シンシン刑務所に収監されているディバイン・G(コールマン・ドミンゴ)。RTA(Rehabilitation Through the Arts/芸術を通じたリハビリテーション)と呼ばれる更生プログラムに参加し、収監者仲間たちと共に舞台演劇に取り組んでいます。中心的なメンバーとして「出役(でやく)」だけに留まらず、劇作家として自ら戯曲も書き、また演出についても積極的に発言してグループにおけるエース的な存在です。そして、気心の知れた「相方」マイク・マイク(ショーン・サン・ホセ)とは常に行動を共にし、また独房も「お隣さん」であることから夜も就寝まで演劇や劇団について語り合う仲。新しい作品についての計画を仲間たちと相談する中、刑務所内で少々悪目立ちしていたディヴァイン・アイ(クラレンス・マクリン)を新メンバーとしてスカウトすることになりますが、その存在がディバイン・Gの考えるプランを微妙に狂わせていきます。それでも舞台の成功のため、感情的になって空回りするディヴァイン・アイに常に目を掛け、そして声をかけ続けるディバイン・G。そして、ようやくまとまりが見えてきた「これから」のタイミングで、ディバイン・Gに思いがけない試練、そして厳しい現実が待ち受けます。心が乱れ、また優位に立つための努力も報われない一方で、またしても自分をあっさり踏み越えるディヴァイン・アイ。そんな、自分がやってきたことを全否定されるような展開に、完全に我を失って遂には孤立してしまうのですが...
実話を基にした原案を脚色されたストーリーは、シンプル且つ古典的で解りやすく、それでいてしっかりとドラマチック。だからこそ役者たちの演技がダイレクトに胸に沁みるのですが、驚くべきは劇中劇を演じている役者の多くは「本人役」で出演をする元受刑者が多いこと。当然「本物感」バリバリだからこそ、彼らから発せられる実感のこもった深い台詞の数々を聞けば、なるほどこの更生プログラムの意義を深く理解することができます。
そして勿論、この作品に更なる深みを与える存在、主人公ジョン・“ディヴァイン・G”・ウィットフィールド役・コールマン・ドミンゴの真に迫った演技は素晴らしいの一言。ままならない人生に翻弄されつつも、仲間たちとの演劇へ真剣に取り組んで諦めない心を持ち続けるディヴァイン・G。すっかり老け込んだ様子のラストシーンには、悲哀を越えて清々しさすら感じ、彼の人生を想って涙腺が刺激されます。
今週もまた作品選択に迷う充実なラインナップですが、今作は「地味そうだ」という印象だけで避けてしまうのは勿体ない一本。お薦めです。
登場人物、全員良い人
地味に見えてセリフが胸に染みる作品。見事!
作品の予告編や試写の評判を観る限り地味な印象が強かった。
また、ショーシャンクの空にっぽいのかなと思ったが、いざ
作品を観て全く違う。むしろじわじわくる作品。痺れた。
コールマン・ドミンゴをはじめ出演者の演技も素晴らしかったが、
素晴らしかったのは脚本とセリフ。これが圧巻で胸に染みるし、
観終わった後、ジワッときた。アカデミー賞作品賞候補ノミネートも
納得できた。見事。
良かったような、、、
プロセスが大事
この作品を観るべきか観ないべきか、それは問題ではない。なぜなら観るべきだからだ。本作はきっと今じゃなくても人生のいずれどこかで必要になるだろう(※刑務所に入るという意味でなく)。
人生は不平等なクソ喜劇みたいだ!往々にして自分の思い通りには行かないし、時には自分以外の全員が自分より人生うまく行っているように見えることもあるだろう。「プロセスが大事」そんなこと言われなくたって頭ではわかるけど、心が追いつかないときが人間にはある。人にはたまに抑えきれなくなって壊れることがあるけど、仲間がいれば持ち直して、また歩き出せるかもしれない。そんな人助けに全力を燃やしては物語るディヴァイン・D役コールマン・ドミンゴの熱演・名演と、ディヴァイン・アルはじめ実際の元収監者たちが織りなす実に見事で自然なアンサンブルによる友情、絆…。今あるものを楽しみ、その時々を全力で生きることを身を以て教えてくれるような生き生きとした作品だ!
自分が一番完璧だった瞬間、あの場所へ…AS HIMSELF。その時々シーン毎に主人公が今"演技"をしているのか"本当"の姿なのか分からないリビールショット的つなぎ・編集の作りなど、演出や本作を包む空気がとても好みだった。顔の寄りが多くても演者の力で、決してダレない。とりわけ本作に限らずああいう皆が円状に座って本人役の人が赤裸々に語るドキュメンタリーチックにリアルなシーンは好きというかいつも見入ってしまうような有無を言わせぬ力強さがあるけど、本作でもやはりあのシーンが本当に良くて心に残った。マイク・マイクと壁を隔てて自分自身のことを語るシーンも印象的。劇中劇となる舞台は、『ビルとテッド』みたいな何でもありタイムトラベル大冒険!
共に何かを作り上げる仲間=生涯の友がいること。例えばNetflix必見の傑作ドキュメンタリー『13th』等で見られるように、黒人をメインに非白人の移民・少数民族を標的とした刑務所ビジネスを告発し、変革を起こすことは何より大事な命題だ。しかし、そこで実際に収監されている当人たちにとってはそれに対する批判や自分の置かれた境遇に対する嘆き・絶望だけでは刑務所の中での長い刑期を到底やっていけないだろう。『ショーシャンクの空に』じゃないけど希望も大事だし、すがりつく心の拠り所も必要だ。だから本作は今このときもそうした状況にある人々に一筋の光をもたらすという意味でも社会的メッセージと社会意義のある表現の力を感じさせてくれる。
劇中劇で主人公が演じる役柄が主人公自身に投影されたり、仲間との離別があったり、最初は衝突していた問題児と絆を育んだりと、要素としては既視感があるものの、そのいずれも大味になることなく真に迫っては嘘偽りないのは、やはり何より実話を基にしているからだろうか。
人は、変わる
たとえどんな縛りがあっても脳内は誰しも自由だし、妄想トリップはいつでも可能な訳だけど、でも楽しい事は誰かと共有したらもっと楽しいもんね。共有することで相乗効果で良いこともあるかもしれないし。
人の数だけ違う人生があるけど、誰しも自分の人生しか生きられない。
でも誰かの人生を演じることで、今いる場所から自分を解放して、他者の気持ちを理解したり、知らなかった自分を発見するのかもしれない。
それはきっと檻から出て新しい人生を創る何かにもなる。
この活動は、アートでありセラピーでもあるのだ。
Gの壮大な喪失は、色んな不運が重なった時期だったのもあるけど、良い人が必ず報われるという訳ではないという暗喩もある気がした。
あとこれ、ミュージカルだと思ってたけど、違ったわね。笑
歌って踊っての場面もあるけど、気持ちの表現を歌ったりする訳ではなかった。
人は変わる、を学べる、とても沁み入る秀逸なヒューマンドラマだったよ。
芸術の素晴らしさを再認識
演じることは、自分と他者を見つめること
ドキュメンタリータッチでリアリティもありつつ、個々の心情が伝わるストーリー。
周辺の物語や説明に触らず、彼らの演劇プログラムへの取り組みにフォーカスしたことが、この作品を「ただの刑務所内物語」にさせなかった。
日本では、教育現場で演劇が「インプロ」として取り組まれることはあっても、刑務所で更生のために用いられるには、ハードルが高そうだ。
被害者感情に配慮する世論や、担う側の関わる能力、時間不足が指摘されそうだけど、この作品によって、取り組みによる深い意味が伝わってきた。
「他者を演じる」ことで向き合わざるを得ない自分自身、言葉や感情の解釈、主役以外にも重要な役割があること、他者に認められる喜び、感情表現と抑制、他者と共に創り上げる一体感と達成感、大人であっても、こうした取り組みがいかに心の成長に繋がるのか。彼らの合意形成プロセスも、学びが多い。
冤罪は別問題としても、大人でも変わる可能性があること、再犯を防ぐ必要性からも、このプログラムを支持したいと心から思えた(プログラム経験者の再犯率は5%以下)。
そして何より、外に出た彼らが、こうして刑務所にいたこともオープンにしながら「発信したい」と思えたことそのものが、素晴らしい成果じゃないかなぁと思う。
トラウマ・インフォームド・プリズン
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