劇場公開日 2025年4月11日

「チームに仲間ができる流れが素晴らしい」シンシン SING SING kenshuchuさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 チームに仲間ができる流れが素晴らしい

2025年4月17日
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鑑賞方法:映画館

刑務所で行われている演劇による更生プログラムを扱った映画と聞くと、不思議とフランス映画をイメージしてしまった。フランス映画をリメイクしたんじゃないかと疑ったくらい。でも、何より驚いたのが本当に元収監者たちが多数出演していたこと。この更生プログラムに参加していた人はほぼリアルな収監者じゃないか。そりゃ知らない俳優だらけだよな。
実際にあった出来事をベースにしているから、それほどドラマティックな事件が起こるわけではない。一からプログラムを作っていく姿を描くのではなく、何回か上映した状態の彼らと新たに参加した収監者を描く手法。でも、皆で何かを作り上げようとするだけでちょっと感動してしまう。一応のトラブルは待ち受けている。最初は壁を作って嫌な奴全開だったディヴァイン・アイが、プログラムの仲間になっていく過程もすごく好きな流れだ。途中から、ラストの感動はもう約束されたようなものだった。
ディヴァインGは無実の罪で収監されているから別の感情になるが、他の収監者たちは基本的に何かしらの罪を背負っている。そんな彼らにどこまで感情移入できるのかが大きなポイントに思える。だから彼らの罪名は基本的にわからないまま。変に知ってしまうとその罪の重さで観ている側に先入観が生まれることを懸念してのものだろう。正しい判断だと思う。
何かしらの罪を犯したとしても人間であることに変わりはない。シャバに戻った人間が訪問し、現在の気持ちを吐露するシーンはそれを象徴するいいシーンだった。つーか、アメリカの刑務所自由すぎないか!?人間的に生活できるよう配慮されている気がする。日本との違いを感じた(日本の刑務所は知らないが)。
出演していた人たちは基本的にいい人に思えたが、他の収監者たちの中には減刑を審査する人に対して平気で嘘をつく人も多いかもしれない。だからこその「今も演技しているのですか」という質問なのだろう。あの発言に対して自分ならどう答えるのか考えてしまった。アンガーマネジメントのいい事例なんじゃないか。自分の成熟さを問われる嫌な質問だ。単純に感動させるだけではない、奥深さを感じる映画だった。

kenshuchu
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