「演じて自由になることと、本当の自由を得ることの間には何があると思いますか」シンシン SING SING Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
演じて自由になることと、本当の自由を得ることの間には何があると思いますか
2025.4.24 字幕 京都シネマ
2023年のアメリカ映画(107分、G)
実在する芸術によるリハビリプログラム(RTA)に参加した元受刑者たちの活動を描いた伝記映画
監督はクレッグ・クウェルダー
脚本はクリント・ベントレー&クレッグ・クウェルダー
原題の『Sing Sing』はニューヨークにあるシンシン刑務所のこと
物語の舞台は、ニューヨークにあるシンシン矯正施設
そこに収監されている受刑者のディヴァイン・Gことジョン・ホイットフィールド(コルマン・ドミンゴ)は、RTAと呼ばれる「芸術を使ったリハビリテーション」に従事し、受刑者たちと演劇を披露することを生き甲斐としていた
主に、隣の独房のマイク・マイク(ショーン・サン・ホセ)、演出家のブレント(ポール・レイシー)らとともにプログラムを運営していて、そこに参加希望の受刑者が参加する、という内容になっていた
シェイクスピアの「真夏の夜の夢」を成功させた彼らは、次の演目のために欠員を補充することになった
志願者を面接することになり、ディヴァインGは、ディヴァイン・アイ(クレマンス・マクリン)に興味を示す
彼は「リア王」を読んで演劇に興味を持ち、素養があると思われた
だが、彼は自分をコントロールされることを極端に嫌い、グループの中心となっているディヴァインGの方針を受け入れようとはしなかった
映画は、元受刑者を集めて、使われていない矯正施設などを利用して撮影に望んでいる
本人役として参加しているのが11人ほどいて、実際に行われた演劇をベースに組み立てている
テーマとしては、居場所の獲得というものだが、自由になることを諦めている者もいれば、足掻こうとしている者もいる
ディヴァインGは殺人容疑で収監されていて、これは不当逮捕だったことが証明されている
だが、25年という時間を奪われていて、その間に立ち上がったのがRTAだった
彼を含めた数人の男性グループが演劇の上演と支援を申し立て、そこにキャサリン・ヴィッキンズという人物が加わってRTAの創設が実現した
ディヴァインG自身が書いた戯曲などもたくさん上演され、それ以外にも4作の小説を書いている
ちなみに映画の冒頭にてサインを求める受刑者がいるのだが、この人がディヴァインG本人である
奇妙な演出だが、この映画におけるディヴァインGの演技は本業でなければ難しい部分もあったのかな、と思った
いずれにせよ、受刑者にも色々とあってというエクスキューズがあるものの、受刑者というだけで色眼鏡で見る人もいると思う
とは言え、アメリカの司法制度と人種差別などの背景を考えると、日本的な感覚で断罪するのも無茶だとは思う
また、矯正プログラムに参加しようという意欲がある時点で何かしらの心の変化があると思うし、そう言った中でプログラムに参加することで変わるものもあるだろう
映画は、このプログラムを通じて、自分自身を探求するとか、変化を促すなどの種にすれば良いと思うし、俳優がセリフを覚えるためのコツであるとか、舞台演出における俳優への促し方などを学ぶ場になっている
そう言った意味において、そこで描かれているのが受刑者だからというので断罪するのではなく、そこから学ぶことで自分の人生の何かしらの糧にしたり、起こり得る未来に向けての心構えを持つということが大事なのかな、と感じた
