「Sweet Land of Liberty」シンシン SING SING ジュン一さんの映画レビュー(感想・評価)
Sweet Land of Liberty
本作の主人公は「第2級殺人」と余罪で「シンシン刑務所」に収監されている
『ジョン・“ディヴァイン・G”・ウィットフィールド(コールマン・ドミンゴ)』。
彼は無実を訴えているのだが、それはさておき
まず驚くのは刑務所の場所。
敷地内には鉄道が通り、
ハドソン川は目の前。
警備レベルは「maximum」とされているものの、
世間はすぐ身近にあり、
郷愁を掻き立てられる環境は
囚人たちにとっては辛いものだろう
もっとも、それが刑罰の一部か?
映画ではその立地が繰り返し映される。
次いで所内の自由度の高さ。
制限はつくものの、居房内は多くの私物で埋まっている。
ただ、受刑者服の着用は定められているらしく、
冒頭に舞台の上で拍手喝采を受けた役者たちが
袖から戻って来た後で皆同じ服に着替えるシーンは、
改めてその場所の特異さを認識させる。
所内で行われている更生プログラムの一つが、
「RTA(Rehabilitation Through the Arts)」で、
演劇のプロが指導する「舞台演劇」は
立ち上がってから三十年近い歴史があり、
受刑者たちの意識改善や再犯率の低下に効果があるのだと言う。
エンドロールでは
顔のアップと役名が流され、
数名のプロを除けば
ほとんどが「himself」と示され
本プログラムを受けた元収監者たちが
出演しているのが理解できる流れとなっている。
公演の企画、脚本や演出、はては劇団員の募集や入団後の面倒まで
『ディヴァイン・G』が「RTA」に深くコミットしている理由は良く判らない。
自身の再審や刑期の短縮になにがしかの効果があるとの思いは、
無いといったら嘘になるだろう。
一方で、他の囚人の恩赦に尽力するなど、生来の人柄の良さはありそう。
劇団の中での反目、
団員の不慮の死、
幾つもの障害を乗り越え、
新たな演目を世に出すまでの過程が映画の主線。
とは言え、プロの演出家が演技論により
囚人たちに課す基本練習の場面では、
正直、眠くなってしまった。
並行し、主人公の(囚人としての)葛藤も描かれるが、
共にありきたりの内容で、
舞台設定の妙は生かせていない。
囚人間で結ばれる友情には感銘を受けはするものの。
登場人物同様、本編では
実際に行われた舞台の模様も写し出される。
ボカシが入るわけでもなく、
彼等は堂々と作品の中で顔をさらす。
このあたりの感覚も日本とは大いに異なり、
作品への感情移入が薄くなる一要因かもしれない。