劇場公開日 2025年4月11日

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「限界点はみんなある。今度は俺が寄り添う番だ。」シンシン SING SING 羊さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0 限界点はみんなある。今度は俺が寄り添う番だ。

2025年4月12日
iPhoneアプリから投稿

泣ける

幸せ

涙が溢れては流し、溢れては流し…。ゔぅ…っとなる瞬間が幾度もありました。細かな心の描写が刹那的で感動的で。それを感じ取るのが好きな方におすすめ。

演劇に取り組むシーンは犯罪を犯した者だということを忘れてしまうほどに、純粋で無垢。好きなことに夢中になっている少年たちのようだ。皆の瞳がキラキラと輝いており、ひとりひとりがアクターとして、そこに存在していた。そんな姿を見ただけで、なんて美しいんだろうかとなんだか泣けてしまった。

優秀で完璧に見える人にだって、限界点というボーダーラインが存在していて、壊れてしまうこともある。そう見える人だって一人の人間だ。決して強くはないのだ。誇りやプライドでそんな自分を守っているのだ。「今までやってきたことってなんだったんだ」「プロセス?そんなもんクソだ!」誇りをズタズタにされ、大切な仲間も予期せぬ出来事で失い、自暴自棄になった。自分や周りの環境が嫌になった。しかし、そんな自分を救ってくれたのは、かつて自分が救った相手だった。人を思って行動した無償の愛は、必ず自分のもとに還ってくる、という可視化。自分に救われたとも言えるかもしれない。

その相手は、演劇に入りたての頃はトゲトゲしていて反抗的な態度で周りを困らせることもあった。演劇を馬鹿にすることもあった。けれど、そんな彼をまわりの仲間とともに否定せずに受け入れた。どんなふうに伝えれば乗り気になってくれるかをいつも考えて寄り添っていた。そんな二人のあいだには、いつしか強い友情と絆がうまれていた。彼の横にそっと座り、無言で寄り添う姿がとてもよかった。そしてラストシーンもたまらない展開だった。

塀がない、時間の拘束もない、どこまでも広い空の下。好きなところにいつでも行ける。まっすぐな道を車で駆け抜ける。「自由」を風で浴びる。相棒の愛車で。君という相棒と二人で。

羊
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