「演劇が更生プログラムとなっている理由が実感できる」シンシン SING SING tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
演劇が更生プログラムとなっている理由が実感できる
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何かの役を演じるためには、自分自身を見つめ直す必要があるのかもしれない。
役者たちが、車座になって、演出家の指示で、自身の完璧だった瞬間について語り合ったり、長い間会えていない友人のことを思い出したりしている様子は、グループセラピーそのもので、「舞台演劇」が囚人の更生プログラムに採用されている理由は、こんなところにあるのだろうと納得することができた。
特に、その効果が顕著なのが、新しくプログラムに加わった元ギャングで、いかにも「悪党」然としていた彼が、ハムレットを演じようとする過程で「人としての心」を取り戻し、主人公との友情を深めていく様子には胸が熱くなる。
また、多くの出演者たちが、本人役を演じた実際の受刑者たちだったという事実が、エンドクレジットの「as himself」という表示で明らかになった時には驚かされた。
その一方で、演劇は、作り上げていく「プロセス」が大切だということは理解できるし、最後に、上演された時の実際の映像が流されたりもするのだが、ハチャメチャな内容の喜劇が面白そうだっただけに、出来上がった劇を、ちゃんと観てみたかったという物足りなさも感じてしまった。
それから、主人公は、無実の罪で収監されているという設定だったが、だからといって、冤罪を晴らすとか、脱獄するとかといったドラマチックな展開がある訳ではなく、そのことが大きな意味を持っていたとは思えない。
ここのところは、実際に罪を犯した主人公が、しっかりと更生し、最後は出所して、出迎えてくれた友人と共に人生をやり直していくという物語で十分だったように思えてならない。
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