「実話ベースで勉強になる」シンシン SING SING おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
実話ベースで勉強になる
予告から感動の物語を期待して、公開初日に鑑賞してきました。最終上映回でしたが、観客は中高年中心にそれなりに入っていたようです。
ストーリーは、ニューヨークのシンシン刑務所に無実の罪で収監されたディヴァインGが、所内で収監者更生プログラムとして行われている「舞台演劇」に参加する中で出会った仲間たち、とりわけ遅れて仲間入りした気性の荒いディヴァイン・アイと交流していく姿を描くとういもの。
刑務所内でこのような更生プログラムが行われているとは知らず、しかも実話を題材にした作品ということで、とても勉強になりました。特に、参加者たちが過去を振り返るかのように語るシーンは、自身を見つめ直しながら自己開示をしていくようで、セラピーとしての役割があるのではないかと思います。あわせて、収監者たちを指導する立場の人の重要性を感じます。
全体的に登場人物の心情に寄り添いながら物語を進め、丁寧に描いているのは伝わってきます。それだけに、大きな感動で涙が止まらないかと思いきや、作品世界にイマイチ浸れず、期待していたほどの感動が得られなかったのは残念です。この手の作品は、登場人物にどれだけ感情移入できるかで、味わいが大きく変わってくるのですが、作品に浸れなかったことで、目の前の出来事を客観的にただ眺めるだけになってしまい、共感的に味わえず、感動につながりませんでした。
というのも、仕事帰りの鑑賞で、先に「プロフェッショナル」を観た後、調子にのって本作をハシゴ鑑賞し、完全に集中力が落ちていたからです。作品は何も悪くなく、全て自分が悪いです。しっかり覚醒している時に改めて鑑賞したいと思います。
主演はコールマン・ドミンゴで、細やかな心情の変化が伝わる演技がよかったです。脇を固めるのは、クラレンス・マクリン、ショーン・サン・ホセ、ポール・レイシーら。元収監者らが本人役として多数出演していることが、説得力を高めています。
