「映像によって謎を追う展開には引き込まれるが、謎が謎のまま残されて、よく分からないことが多過ぎる」近畿地方のある場所について tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
映像によって謎を追う展開には引き込まれるが、謎が謎のまま残されて、よく分からないことが多過ぎる
失踪した編集者が残したビデオの映像やインターネットの動画を観ながら、彼が書こうとしていた記事の謎を追っていくという展開には引き込まれる。
特に、DVDやUSBに記録されたデジタル映像もさることながら、VHSテープに録画されたアナログ映像の画質の悪さやノイズには、「リング」を彷彿とさせるような不気味さと気持ち悪さがある。
ところが、終盤で、数々の謎が繋がってスッキリできるのかと思っていたら、よく分からないことが多過ぎて、まったくと言っていいほど「謎解き」のカタルシスを味わえないのは、どうしたことだろう?
どうやら、死んだ人に会いたいと願う人間のもとに現れて、その願いを叶えてくれる「岩」が、物語を読み解く鍵になっているのだが、その「岩」を崇める新興宗教の話と、女性が言いなりになるという柿を授けてくれた神様が現れる昔話とが、どのように結び付いているのかが理解できない。
新興宗教の話にも、昔話にも、まったく出てこなかった「生贄が必要」というルールが、ラストで明らかになるという展開には唐突感を覚えるし、木の陰から姿を現す白いモンスターも、一体何だったのだろうという疑問が残る。
赤い服の女の正体は、神隠しに遭った少女で、首が後ろに垂れ下がった男の正体は、アパートの中庭の木で首を吊った少年なのだろうが、この少年・少女と「岩」との関係性もよく分からない。
彼らは、「岩」の力で蘇った死者だという考え方もできるのだが、失踪した編集者と同じ様に目玉がないところを見ると、生贄の方だったとも考えられるし、彼らと、「見ると死ぬ映像」や、それによって呪われた大学生との関係がどうなっているのかも理解に苦しむ。
さらには、アパートで投身自殺したのは、おそらく、首を吊った少年の母親だったのだろうが、彼女や、ダムに身を投じた赤い服の少女の祖父が、どうして自ら命を絶ったのかが不明だし、赤い服の少女や首を吊った少年が、どうしてトンネルで主人公たちの行く手を阻もうとしたのかも分からない。
失踪した編集者は、自分が生贄にされることに気付いて逃げたのだろうが、彼の妻がどうしてあんなことになっているのかが理解できないし、彼らが夫婦揃って悲惨な最期を迎えなければならなかった理由も定かではない。
あるいは、近畿地方から全国に広まったという謎のお札については、「岩」を呼び出すためのもので、ユーチューバーが侵入した首吊り屋敷の住人にしても、失踪した金物屋の家族にしても、死者に会いたくてお札を貼っていたという解釈で合っているのだろうか?
こんな感じで、謎が謎のまま残され、モヤモヤとした気分が最後まで払拭できなかったせいか、思いがけない人物が黒幕だと分かるラストの展開にも付いて行くことができなかったし、それ以前に、彼女のおでこに傷ができた時点で、その正体が薄々予想できてしまったので、せっかくの「驚きの結末」を楽しむことができなかったのも、残念としか言いようがなかった。
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