「真相の真相」#真相をお話しします 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
真相の真相
Mrs. GREEN APPLEの勢いが止まらない。
フィールドである音楽シーンだけではなく、映画界にも。
ドキュメンタリーとライブフィルムが週末興行ランキングで1位と3位にWイン。彼らの為かのように、日本アカデミー賞で特別の主題歌賞。
遂には、役者デビュー。
これで演技が下手だったり作品も微妙だったら文句の一つでも言える所だけど、なかなかのクセ者巧演と面白く見れた作品だから認めざるを得ないのである。
役者デビューしたのは、ボーカル/ギターの大森元貴。
登場シーンで彼演じる“鈴木”が若い女性を凝視している。ストーカー…?
飲食を買い込んで、とあるビルの警備室へ。若い警備員・桐山とは顔馴染みのようだ。
桐山は仕事そっちのけでカウントダウン中のYouTubeの事で頭がいっぱい。
遂にスタートしたそのYouTubeとは…
『#真相をお話しします』。視聴者参加型の生配信チャンネル。
エントリーし選ばれた“スピーカー”と呼ばれる話し手が話をする。有名人のゴシップや世間をざわつかせた事件…の誰も知らない“真相”を暴露。ウケればリアルタイムで投げ銭が投じられ、その額は数百万円にも。一攫千金も夢じゃない。
桐山もエントリー。借金苦でお金が欲しい。
頼む。選ばれてくれ…!
そんな桐山を見守るかのような鈴木…。
住宅街で起きた一見ご近所トラブルのような事件…の真相。パパ活する女子大生ばかりを狙った連続殺人事件…の真相。
いずれもなかなか衝撃とトリッキーな真相。(特に前者は桜井ユキが、後者は伊藤英明が怪演)
投げ銭で数百万円を獲得し、バズりにバズりまくる。
焦る桐山。頼む!
選ばれた!
話したのは、自身に実際に起きた友人間のトラブル。そのせいで失職し、人間不信にも…。
これまたバズり、桐山は念願の大金を手にする。
…でも、これだけだったら何か素っ気ない。ただ事件の真相を暴露してお金を獲得するだけ…?
にしては、SNS上の異様な盛り上がりは何だ…?
リアルタイム視聴者数が記録更新されれば、チャンネル管理人がある真相を暴露する事になっている。
チャンネル管理人はかつて一世風靡した人気者。10年以上前、YouTubeでとある島の子供たちの暮らしぶりを追ったリアルドキュメンタリー『ふるはうすデイズ』。その子供の一人で、本名は“サテツ”。
ところが突然、『ふるはうすデイズ』は終了した。何があったのか…? それを当事者から、真相をお話しします…。
リアタイ記録更新となり、最高潮にバズる中、真相を…。
しかしそれを話すのはチャンネル管理人ではなく、まさかの鈴木であった…!
鈴木の本名は“チョモランマ”、愛称“チョモ”。サテツと、愛称“ルー”の美少女ルージュ。
3人は長崎の離島で、大自然の中で生き生きと楽しく暮らしていた。親によりスマホなどは禁止されていた。
もう一人、凛子がいた。チョモと凛子はお互い好意を抱いていた。
スマホを持っていた凛子からある日、見せたいものがあると呼び出しされるが、ルーがそれを妨害。
その直後、凛子が死んだ。崖から転落した事故死のように思えるが…。
葬儀後、チョモとサテツは凛子のスマホから驚くべき事を知る。
自分たちの暮らしが監視カメラなどで隠し撮りされ、YouTubeで『ふるはうすデイズ』として配信されていた。
自分たちはいざ知らず。3人の親が子供たちを見世物にしてYouTubeで金を稼いでいたのだ。
さらに驚くべき真相。ルーはどうやら知っていた…? よく見ると、時々カメラ目線。凛子がチョモにこの事を話そうとした時も妨害。口封じの為に凛子を事故死に見せ掛けて殺した…? が、ルーにはその時アリバイが…。
『ふるはうすデイズ』終了の真相。キャストが真実を知った事と、一人の少女の死…。
3人はその後それぞれの人生を歩んだが、人生を見世物にされたチョモとサテツは忘れていなかった。チョモは凛子の事も…。
調べ上げ、ルーのアリバイを崩す。ルーが凛子を殺した犯人である事は間違いナシ。今はヨガ教室経営者となっているルー。彼女を拘束。開幕のチョモこと鈴木と女性がそれ。
ルーを殺すか、否か。それを決めさせる。お前たちに。
凛子を殺したルー、晒し者にされた自分たちの苦悩、凛子の無念、それをSNS上で楽しんだお前ら。
その復讐と裁きの場としてチョモとサテツが立ち上げたのが、『#真相をお話しします』。
真相をお話しします。これが、『#真相をお話しします』の真相です…。
先読みやツッコミ所はあれど、どんでん返しミステリーが4エピソード。一粒で4味楽しめる。
しかし本作は、ただのエンタメ・ミステリーではない。SNSやそれに浮かれる世の中への痛烈メッセージ。
子供時代の隠し撮りなんて『トゥルーマン・ショー』を彷彿。
凛子を殺したルーに復讐するが、我が子で金を稼いでいた親たちも同罪。(でも何で親たちには復讐しない…?)
なら、桐山らスピーカーは…?
スピーカーはアバターで素顔を隠されているが、それを解除。素顔や個人情報まで晒される。
たまたま選ばれただけだが、自分たちの愚行を糧に大金を得ようとする愚か者たち。晒し者にされる気持ちを知れ。
桐山が何だか噛ませ犬みたいで不憫。菊池風磨の佇まいが絶妙。
友人間トラブルで人間不信に陥ってた時、出会ったのがチョモこと鈴木。
桐山のハンドルネームは“警備王”で、『#真相をお話しします』のコメントに唯一“いいね”してくれたのが嬉しかった。
しかし、鈴木はいいカモを見つけただけ。こいつ、クズだなぁ、と。
桐山の投稿は悪質悪口…。素性が晒されないからと言って、こういう輩、SNS上にたくさんいるね。
こういう悪口投稿じゃないけど、自分も本サイトでレビューを投稿し、“共感した”を貰うと嬉しいので、ちょっと気持ちが分かるなぁ…。リアルな周りに映画についてどっぷり話せる人たちいないので…(>_<)
最初はちとぎこちなさを感じたけど、それも見ていく内に解消され、本性を表す。役者デビューと思えない大森元貴の巧演。
チョモは何故、こんな事を…?
余命一年の宣告。その前に、自分たちや過去の真相を伝えたかった。
SNSを使って多くの人を騙した。今まさに、人の命を奪おうとしている。決して許される事ではない。
チョモもサテツも加害者であり被害者。
それは我々も。プライベートやSNSでちょっとした事で誰かを傷付けたり、誰かから傷付けられたり。
最後は唐突で尻切れトンボ感もある。すっきり解決しない。
本作がただのエンタメだったら消化不良。
問題提起として、シビアに世に問う。
あなたなら、どうする?
こんにちは。
映画よりワクワクしたレビューでした!
("この"映画が観たくなりましたw)
私はSNS化石なので本サイトしかSNS上の交流の場を持ちませんが、近大さんと同じで"いいね"を貰うと嬉しいです。
そして映画の事話せるのもここだけです。
私の理解が及ばない所まで来ているSNSのすごさ、怖さを体験しました。
内容盛りだくさんでしたね。

