「戦中戦後の軍事部隊に、人命優先方針の堅持を期待できるか?」雪風 YUKIKAZE てつさんの映画レビュー(感想・評価)
戦中戦後の軍事部隊に、人命優先方針の堅持を期待できるか?
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序盤は、駆逐艦雪風の先任伍長としての早瀬の慣例が強調され、新艦長の寺澤が自分のやり方を通そうとしながらも、徐々に早瀬の考えを理解し、早瀬亡き後は、その慣例により、連合艦隊玉砕後処理も引き受け、幸運艦のまま終戦を迎え、復員船としても活躍したが、自然災害によって運も尽きてしまった。江田島海軍兵学校の同期生の写真を手許から離して力尽きた感のあったところは、アニメーション『宇宙戦艦ヤマト』の終盤の沖田艦長絶命場面を連想し、次に雪風にも危機が訪れるのではないかと心配したが、それはなかった。
中井貴一氏が途中顔出ししたときには、それとわかり難い風貌に感じられたが、沖縄特攻作戦の問い直しに際しては存在感があった。大きく傾斜したといわれる大和自体の沈没場面の描写はなかった。機関銃迎撃場面の使い回し感が強かった。雪風他の艦長たちも、海軍司令官の作戦指示に対して、実際にあれだけ反対意見が言えたのか疑問に思った。
寺澤の家庭生活の描写は、ドラマ『波うららかに、めおと日和』と重なるところがあった。寺澤の死の場面は描かれず、恐らくその志を継いだとみられる娘が成人し、水害救助の仕事をしている姿には説明がほしかった。現在の江田島第1術科学校の遠景は入れてほしくなかった。今後の自衛隊にも、人命救助優先方針の堅持を願うということなら良いかもしれないけれど。
2025年9月7日夜放映の"NNN ドキュメント'25"「あらがう 特攻に異を唱えた指揮官」では、軍の会議で示された総特攻の方針に決死の覚悟で異を唱えた29歳の美濃部正少佐のことを解説していたので、そのような指揮官は実際にいたようである。
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