劇場公開日 2025年8月15日

「日本で戦争映画を作ることの難しさ」雪風 YUKIKAZE 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5 日本で戦争映画を作ることの難しさ

2025年8月16日
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鑑賞方法:試写会

悲しい

劇中で描かれるミッドウェイ海戦、レイテ沖海戦、戦艦大和の沖縄水上特攻作戦を含む、16回以上の主要な作戦に参加し、僚艦の乗員たちを救助して無事帰還した駆逐艦「雪風」のことを、本作で初めて知った。

日本は第二次世界大戦の敗戦国であり、憲法で戦争を放棄し平和を希求すると宣言しているので、過去に起きた戦争を題材にした映画で戦争自体を肯定的に描いたり、戦闘シーンを勇壮に描いたりすることは道義上できない。戦闘の残酷さ、軍の意思決定のまずさ、空襲や上陸戦で死傷した国民の悲惨さなどの描写を通じて、反戦のメッセージを後世に伝えるという大義名分が必要になる。

そうした前提をふまえると、沈没したり操艦不能になった僚艦から海に飛び込んだ乗員たちを、雪風の艦長と乗員らが救助する姿をヒロイックに描くというのは、よく考えられた切り口だなと感心。海戦場を舞台にしつつ、戦闘は少ししか描かず、メインはあくまでも人命救助なので、“人道的な戦争映画”と呼べるかもしれない。

ただまあ、予算上の制約で仕方ないところもあるのだろうが、海戦のスケール感やダイナミックさ、臨場感といったものがどうにも弱く、CGのクオリティもうーん、まだこのレベルかと嘆息。世界が市場のハリウッド映画と比べても気の毒だが、ローランド・エメリッヒ監督の近作「ミッドウェイ」のスペクタクルな海戦シーンの記憶も残っているし、見劣りするのは否めない。

竹野内豊、玉木宏の演技過多にならない、抑えめの表情や台詞回しがいい。さまざまなタイプの作品に引っ張りだこの奥平大兼が、若い兵らしい楽天的な軽さを表現していて、映画を明るくするのに貢献している。

山田敏久監督は本作が長編デビュー作だろうか。1992年の「あふれる熱い涙」以来じつに30年以上も助監督として現場経験を積み、初監督作で戦後80年の節目に公開される戦争映画というなかなかの大役を担った。映画製作の舞台裏にも興味深い“ドラマ”がありそうだ。

高森郁哉
onisuke3sさんのコメント
2025年8月21日

ちゃんとミッドウェーも描かれてたのか…途中参加で見損ねた…

onisuke3s
ケイさんのコメント
2025年8月16日

雪風はゴジラ-1.0にも出てましたね

ケイ
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