「傑作です!感動しました」陪審員2番 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0傑作です!感動しました

2025年6月8日
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鑑賞方法:VOD

陪審員2番

21世紀の「12人の怒れる男たち」です

ことによるとイーストウッド監督によるリメイクだったかも知れません
陪審員達の言動に似たようなものがあります
かといって密室劇ではありません
真っ正面から司法制度の根幹は民主主義にあり、民主主義の根幹は国民の心の中にあるということを結論にした映画です
国民の心が腐敗したとき、民主主義も司法制度も社会自体が崩壊し、正義はなされなくなるのだというイーストウッド監督からのメッセージです
1950年代の「12人の怒れる男たち」のアメリカ国民だったら
本作でも同じように評決は一致して無罪で映画は終わった
21世紀はどうだ?
本作のようになったとしても、まだマシなぐらいだ
アメリカが病んでしまったのは私達国民が劣化したからだとの悲しい反省です
それ故に新しい大統領がああいう人になるのはあたり前だ
私達国民が正義の実現に目覚めないかぎりまだまだこういう世の中は続くのだろう
自分たちの世代がそうしてしまったんだ
そういう諦めに似た悲観的なトーンです
それが揺れる天秤です

それでもラストのノックで現れた人物はまだ諦めるなとの現役世代へのエールと期待でした
正義は必ず成されなけばならない
この映画もそう終わらなければならないのだという意味に受け止めました
劇的な絵作りはない映画ですが、蝉の声が急に大きく残響を持って聞こえてきて映画は終わります
その蝉の声が私達の心のなかでいつまでも消えることなく残るならばアメリカに正義は戻るのだという演出だったと思います

今時、こんな青臭い事を主張する映画を撮るなんて浮き世離れしていると言われても仕方無いのかも知れません
イーストウッド監督だからできることなのかも知れません
何も派手なことは何一つ起こりません
美男美女もです、有名俳優もひとりだけチョイ役ででるだけ
それでも素晴らしい脚本と演出に、あっという間に引き込まれて集中して目を離せなくなってしまうことでしょう
クリントイーストウッド監督94歳ながら衰えは一切感じません
むしろ、はしばしのこんな小さな所まで神経を行き届かせているのかと驚嘆するばかりです
たとえば、序盤でパーティーに集まった近隣の住民に主人公がスピーチをするシーン
「なんていい旦那さんでしょう!」というオバサンは横の自分の旦那に冷たい目を向けて言っています
日本では配信のみだそうです
残念です
逆に日本だけで劇場公開でヒットしていたなら誇らしいことにだったのに
せめてU-NEXTさんが見放題配信してくださって感謝するしかありません
本作の言っていることは日本国民にも当てはまります
今年の日本は選挙の夏になりそうです

あき240
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