「素直に何が面白いのか疑問」機動戦士Gundam GQuuuuuuX Beginning 規制済みさんの映画レビュー(感想・評価)
素直に何が面白いのか疑問
ガンダムに関してはある程度名前を知っている程度の理解度で友人に連れられて観に行きましたが、何が面白いのかほとんど理解不能でした。
前半はシャアが主体となるのですが
こちらは初代ガンダムをリメイクし、ジークアクスに繋がるまでのお話として作成したものです。
ですので「ジークアクス」の作品ではありません。
正直、初代ガンダムを知らなければ「再解釈をした面白さ」は不明ですのでこの点に関するレビューは割愛します。
(なお、シャアの戦闘におけるカリスマ性の描写には素晴らしいと感じる面はいくつかありました)
映画後半ではついにジークアクスが始まるのですが
こちらはこちらで気持ちの悪い演出と都合の良い展開が多く存在し困惑を誘います。
・体制を崩した主人公と謎の女の子が抱き合う形になってしまう→キラキラエフェクト
・初対面で急に影から至近距離で髪を嗅いでくるキモすぎる謎男に赤面する主人公
・そんな謎男を信用しきる主人公
・拳銃を持ったアングラの輩が集う小屋を勝手に漁り始める主人公→もちろん「おもしれーやつ」扱いを受け、被害や脅しに遭ったりはしない
・戦争未経験戦闘ド素人の主人公が兵器を使った人間相手の戦闘を初めて行ったにも関わらず、死の恐怖、命を奪う罪悪感などにも駆られない。その日の夜には忘れてケロッとしている
・その癖翌日「クランバトル」という賞金目当てのアングラバトルでカメラを破壊された際に「私死ぬ!?」と急に焦りだす
など書き上げたらキリがない程気持ち悪い演出に都合の良い展開とやりたい放題です。
また、主題歌の使い所や歌の挿しどころも雑です。
初めての戦闘が行われるタイミングで主題歌が流れるのは良いのですが、展開的に全く燃えません。
要約すると「ピンチな時にガンダム落っこちてた!乗ったら勝手に動いてやっつけてくれた!」です。
「もしもあの改札の前で止まらずに歩いていれば、君の顔も知らずのまま幸せに生きていただろうか」
とかアングラ女子との出会いに思いを馳せるような曲も流れ始めますが、これどう見たら感動するんですか?
主要人物たちと出会ってまだ当日か翌日です。出会いに思いを馳せるには早すぎます。
それにガンダムが勝手に動いてド派手に敵を蹴散らす展開でこの曲が流れるのも意味不明です。
何に感動すればいいんですか?
また、曲を流すタイミングは他にもあり
お使いに走ってるだけの場面や闇バイトのおじさんに叱られているシーンで主題歌や曲が流れたりします。
日常の中で曲流せばエモいとか思ってるんですかね?
恐らく前半の過去パートに時間を取られたために良い挿れどころが無かったのでしょう。
そして映画のラストは
お金のために参加したクランバトルでモブとのバトルに勝利して映画終了です。
ろくにトレーニングもしてないくせして戦闘中にカメラ壊されて死んじゃうかもとか
誰か助けてとか何か色々ほざいてますが、何やかんやあって仲間とガンダムが勝手に動いて倒してくれるので勝利です。
え?ストーリーは?山場は?
明確な目的や敵も現れないままに映画は終わってしまいます。
映画の途中、主人公は貧民を人道的に扱わない警察に対して正義を掲げたりもしますが
出会って2日の友人のためとはいえ、自分はお金のために非人道的な行為も許容されるアングラのクランバトルで相手の機体の頭に全力で斧振り下ろしてます。
別に相手に相応の恨みがある訳でもなく、事前に武器を破壊しての無力化等の作戦を考えるといった事もないので主人公は人の命を毛ほどにも考えてません。
「やらなきゃやられるんだから仕方ない」という人も居るかも知れませんが、そもそも道徳を語っておきながら人の命を弄ぶようなコンテンツに興じる事自体言語道断です。
行動理念が狂ってます。
なお「友人のためにクランバトルに参加」した点ですが、
友人は違法品売買の仲介をしており、売上金を紛失したために実費で補填しなければ闇バイトをクビになってしまうからだそうです。
今日中に金が返せないと命が危ない!とかではありません。
つまり主人公は「出会って2日の背景も分からない友人に闇バイトを続けさせるためなら人を殺しても良い」と考えていることになります。
もう一度言います。行動理念が狂ってます。
これも制作陣の「ほら、友達想いで義理人情に厚い"良い人"でしょ?」というキャラ付けのために都合の良く付けられた正義感である事が透けて見え反吐が出ます。
悪い事をしたという理由で友人を地平線の彼方まで殴り飛ばすアンパンマンの方が遥かに友達想いで義理人情に厚い良い人です。
一方初対面で他人の髪を嗅ぐ気持ちの悪い犯罪者予備軍の友人は、通常「お腹すいたー…」や「あ…お金、ないや。」といったどこゆく風のような言動と
街中にグラフィティを好き勝手に描くといった自由な性格をしているようですが、
ガンダムに乗る前後だけ「〜と、ガンダムが言っている。」などといかにもネット流行を狙っていそうな台詞回しと口癖を憑依させるため、まるでキャラクターが喋らされているように感じます。
この点も制作陣によるキャラの押し売りが抑えきれておらず気持ち悪さが加速します。
また、時折主人公は空に憧れを抱くような言動を見せてましたが、何も回収されません。
続きはTVアニメで!と言いたいのでしょうか。
現状では全く見る気になりませんでした。
エンドロールには
星街すいせい「もうどうなってもいいや」
と書かれていたので、このアーティストも諦めたのだと理解しました。
個人的には前半と後半は別の映画として出したほうが良いと感じます。
そうすることで、もう少し時間的余裕も生まれ山場や映画全体のストーリーの展開をする余白もできたのではないかと思います。