「〈😎:私、庵野秀明が修正しようというのだ!〉〈🧑🏽🦱:エゴだよ、それは!〉 何はともあれ!ガンダムファイト、レディー・ゴー!!」機動戦士Gundam GQuuuuuuX Beginning たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
〈😎:私、庵野秀明が修正しようというのだ!〉〈🧑🏽🦱:エゴだよ、それは!〉 何はともあれ!ガンダムファイト、レディー・ゴー!!
“地球連邦政府“と“ジオン公国“の戦争を描いたロボットアニメ『機動戦士ガンダム』(1979-1980)を全く異なる解釈で描き直した『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』(2025年1月現在、放送年月日未定)の冒頭数エピソードを再編集した劇場版。
宇宙世紀0079。開戦から8ヶ月が経過した頃、シャア少佐率いるザクの偵察部隊は、サイド7にて連邦軍の新型モビルスーツ「ガンダム」と宇宙空母「ペガサス」を鹵獲する。
ジオンはガンダムをシャア専用機に改造。ニュータイプ能力に感応するコントロールシステム「サイコミュ」を搭載した“赤いガンダム“に乗るシャアと、彼の僚機(マヴ)を務めるもう1人のニュータイプ、シャリア・ブル大尉は連邦の脅威となった。
時は流れ、宇宙世紀0085。鬱屈した日々を送るサイド6に住む女子高生アマテは、運び屋として生きる戦争難民ニャアンとの出会いにより、非合法なモビルスーツファイト「クランバトル」の存在を知る…。
脚本/デザインワークス/絵コンテは『新世紀エヴァンゲリオン』シリーズや『シン・ゴジラ』の、巨匠・庵野秀明。
サンライズ×カラーという奇跡のコラボがまさかの実現!
庵野秀明がガンダムに携わるのは、『逆襲のシャア』(1988)のメカデザイン、『機動武闘伝Gガンダム』(1994-1995)のOP絵コンテに続き3度目と言う事になるのだろうか?少なくとも、メインスタッフとして本格的に制作に携わるのは今回が初である。
『ゴジラ』『ウルトラマン』『仮面ライダー』、そして『ガンダム』。この後は『ヤマト』も決まっているようだし、彼が日本のオタクカルチャーを全制覇する日も近いのかも知れない。
本作の特徴は前半と後半で作風がガラッと変わるという事。はっきり言ってこれを1つの物語ですと言うのは無理がある気がする。
問題はこの前半部分な訳だが、そこは後に回すとしてまずは後半から。
本作の監督は、長年に渡り庵野秀明をサポートし続けている鶴巻和哉。『エヴァ新劇場版』シリーズ(2007-2021)や、あの傑作『フリクリ』(2000-2001)を手掛けた名監督である。庵野への密着ドキュメンタリーによく登場するが、無茶振りのせいでいつも顔が死んでいる。実は庵野ではなくこの人が凄いのでは?…とか言ってはいけない。
また、シリーズ構成/共同脚本を務めるのは榎戸洋司で、鶴巻監督とは『フリクリ』や『龍の歯医者』(2017)でタッグを組んだ間柄である。
このゴールデンマヴが手掛けているのだから、『ガンダム』だとか宇宙世紀だとかそんな事とは関係なく、『ジークアクス』は間違いなく見どころがある作品になるはず。正直この映画だけでは物語の全景は全くわからないのだが、鶴巻監督らしいケレン味のあるアクションや抜けの良い映像は健在で、否が応でもテレビシリーズへの期待は高まる。
世界観やキャラクターデザイン、音楽は実に現代的であり、一般的にイメージされるガンダムっぽさとはかなりかけ離れているが、鶴巻/榎戸コンビの作品である事を考えればこれにも納得出来る。これはこれでありだと思うのだが世間はどう思うのか気になるところである。
と、新たなガンダム像の構築を目指した後半は評価したいのですが、さて、前半はどうしたものか…。
『シン・ウルトラマン』(2022)、そして『シン・仮面ライダー』(2023)と、どんどんオタクの悪ノリが酷くなっていた庵野秀明だが、この『シン・ガンダム』でそれが天元突破。まさかの公式二次創作💦
そりゃ誰でも「もしもシャアがガンダムに乗っていたら」とか「ジオンが連邦に勝つにはどうすれば良かったのか」とか、一度は考えますよ。そりゃそうだけど、それを公式がやっちゃあダメでしょう。エゴだよ、それは!
問題なのは、ここのキャラクターデザインを安彦良和風にしてしまった事。冒頭部分なんてほぼ完コピじゃないですかこれ。
もしこのキャラデザが後半部分と同じ、イラストレーターの竹さんのタッチであれば違和感はなかった。「1stは1st、ジークアクスはジークアクス」と割り切って鑑賞する事が出来た筈なのだが、オリジナルまんまの絵柄でやられてしまうとその切り替えが出来ない。宇宙世紀には安彦顔の人と竹顔の人がいるの?『1st』からたった5年でスマホとWikipediaが世界に普及すんの?とか、もう要らん事が気になって全然集中出来なくなってしまった。
んでなんでシャリア・ブルだけイケおじ化してんだよ!お前昔はめっちゃインド人っぽいただのオジさんだったじゃん!絵柄が違いすぎて、その顔でシャアと並ばれると違和感あるんだよ!!「スパロボ」やってんじゃないんだよ!!
第一、このシリーズは主題歌が米津玄師、キャラデザが「ポケモン」の人という、これまでガンダムに触れてこなかった若い層を意識した作品な訳です。それなのに、いきなりこんな旧アニメの紛い物が始まっちゃったらなんも知らないキッズはぽかーんですよ。『1st』を観た事がある人ならかろうじて付いていけるが、ご新規さんは意味わからんかったことだろう。…まあそんな観客がどれだけいたのかは謎だが。
どうしても『1st』の改変をやりたいのであれば、それだけで独立した1本の映画なりアニメシリーズなりを作るべきだと思う。こんなん鶴巻さんからしたら「庵野大佐、どいてください!邪魔です!」と言わざるを得ないよね。
意味がわからなかったのは、懐古層を狙い撃ちしているにも拘らず、声優が一新されてしまっていた事。
マ・クベは塩沢兼人さんが亡くなってるから仕方ないとして(とはいえ、なぜ『THE ORIGIN』(2015-2018)の山崎たくみさんから変えたのかは謎だが)、池田秀一さんと小山茉美さんは健在なのだから、シャアとキシリアの声を変える必要なかったじゃん!池田さんなんて、この間ららぽーと福岡に出来た等身大νガンダム用のアニメ『機動戦士ガンダム ALC ENCOUNTER』(2024)ではシャアを再演してたじゃん!まさに今、空気清浄機「Airdog」のCMでシャアを演じてますやん!もう池田秀一=シャアなんだから、今更新しい声優を連れて来られたって受け入れられん。そんな大人、修正してやる!
もしかしたら、テレビシリーズで“別世界のシャア“とか言って池田さんが声を当てる本物が出てくるのかも知れないが、そうじゃなかったらこの声を受け入れるのは…。あえて言おう、無理であると!
BGMとかSEは『1st』と同じものを使うのに、声優にはこだわらない。庵野さんのこだわりポイントがまるでわからん!「サボテンが花をつけている…」の意味くらいわからん!
と、庵野秀明の暴走により、結局このアニメは新規向けなのか懐古向けなのかよくわからん事になってしまった。前半の展開は蛇足です、偉いガノタにはそれがわからんのですよ。
また、テレビシリーズのイントロダクションとして本作はよく出来ていると思うが、映画としての出来が良いかと言われるとNO。ぶつ切りのフィルムを繋ぎ合わせた不出来な作品で、ストーリーを十全に語れているとは言い難い。本作の内容だけではアマテはただの中二病俺TUEEEEキャラに過ぎず、彼女に好印象を抱くことは出来ない。もう少し彼女のキャラクターを深掘りするような描写、たとえば空手の稽古をバックれる・軍人に「俺は女だよ!」と殴りかかる・MPをガンダムで踏み潰そうとするetc、があれば別だったのだが。
別に再編集などという賢しい手段を取らなくても、普通に1〜4話を無編集で上映するとか、そういうので良かったのでは?この歪さ、ある意味では『ガンダム』の劇場版らしいとも言えるのだが、わざわざ映画館に足を運ぶ程のものでは無い。
とはいえ、前半部分の衝撃は良くも悪くも凄まじいので、ネタバレを喰らいたくない人は本放送を待たず、出来るだけ早く鑑賞するのが正解だろう。
頭部を破壊すれば勝利、というクランバトルのルールはまんま『Gガンダム』を踏襲している。もしかすると、『Gガン』の世界と繋がったりもするのだろうか?
そして、気になるのはこの世界線でのアムロとララァがどうなっているのかという事。アムロはともかく、ララァに関しては絶対にキーパーソンになってくると思うので、その辺りも非常に気になります。
謎が謎を呼ぶ『ジークアクス』。放送日未定なのがもどかしい。放送が始まるその日まで、君は生き延びる事ができるか?
何はともあれ、ジークアクスファイト・レディー・ゴー!